今回の大学設置審の意見却下について,普段はっきりした政権批判等々あまりしない―非政治的態度を取ることを心がけている私にしてきぱっと批判的に論評したので人を驚かせた感がある(日記)。なお承前。
JBPress 大学設置認可権限は文科大臣にあり審議会にない 2012年11月5日 11時00分
「藤村官房長官は「教育行政に責任を負う文部科学大臣としての政策的な判断だと考えている」との認識を示した」
「今回の大臣判断は設置を答申していた審議会の判断を覆す判断になる。これについては「認可権限は大臣にある。審議会が持っているわけではない」とした」
この件については,人柱を要求するような審議会の諸指導を乗り越えて,なお大臣の一存に任されるとなると,真面目に指導を聞く意義が薄れもしよう。大臣をオトしてしまえばいいわけだ,しかも一年ごとに変わるような大臣の,オトしやすい人に順番が回った時にやっちゃうという裏ワザが使えたりしかねない。
おおやにき 大学の人事とスケジュール(2) 2012年11月5日
「設置審への諮問が学校教育法95条により大臣に義務付けられているところ、審議会の結論を無視して大臣が自由に意思決定できるのであればこのような義務付けの意義は没却されるであろうから、合理的な理由が提示できない限り大臣は審議会の結論を尊重する義務を負う(設置審の結論は、大臣の裁量権を一定程度拘束する)という考え方もできる」
財形新聞 大学設置審のありよう抜本見直しへ 田中文科相 2012年11月5日 11時00分
「田中文部科学大臣は「大学の教育の質の問題が就職の難しさにもつながっている」との認識を示した」
「大学の多さが大学運営にも大きく影響していることを指摘。「生徒がいない、経営が危ないとかいう事情から、海外から来てくださいというところもある。8年間で40億円もの借金をつくった大学もある」などと語り」
それはすでに存在し,かついろいろ袋小路にはまった大学さんのお話であって,今問題になっている新設希望三大学のことではないだろう。
寧ろ質の保証ができたから設置審議を通ったわけであって。
寧ろ,傍目にも危ない大学さんへの指導強化へ向けて動くべき場面ではあるまいか。
一般には,この田中文科相の行動は批判的に捉えられているかと思われ,
日刊スポーツ 真紀子大臣、思い付きで3大学不認可 2012年11月3日9時16分
「突然の不認可に3つの大学準備室では「大臣の思い付きに振り回されたくない」などと前触れなしの真紀子節に困惑していた」
大臣の思いつき,というのは各大学準備室の言葉と読めるが,記事タイトルはそのまま採用して,記事執筆者(ないし編集部)の見解を示すもののようである。
なお「突然の不認可」については,田中文科相は別の意見を持っている可能性がある。直近に一件,大学解散命令を出す方向で話が進んでいるわけだが「「安直に(新設を)認めると教育の現場が混乱するんです。こんなことが2度と起こらないようにしたい」」と真紀子節を唸ったそうで―
―結果的には,新設の,大学として運営したことがない学校の能力を疑問視したというわけだ。それは権威主義に近い(既存大学の学部増設は認可された由,以下の読売新聞の記事を参照)。
「審議会で「新設を認める」との答申が出ていた。高等教育局幹部から再三「答申通りでお願いします」と説得を受けた田中氏は「駄目なものは駄目」と首を縦には振らなかった。記録の残っている過去30年で、答申を覆して、大臣が不認可の決定を下したのは初めて。文科省職員は「3大学は巡り合わせが悪かった、としか説明しようがない」とため息をついた」
ダメな理由はダメだから,強いて言えばめぐりあわせが悪かった―これでは統治される方が不安でしょうがない。
読売新聞 大学新設不認可 文科相の独断が混乱を招いた(11月4日付・読売社説) 2012年11月4日01時34分
「理解に苦しむ判断である。危惧していたことが起きてしまった」
「しかも、田中文科相は、設置審が認可答申を出した、他大学の学部や大学院の新設については認可している。大学新設だけを不認可としたこととの整合性をきちんと説明できるのだろうか」
「文科相の独断と暴走がもたらす混乱は計り知れない」
「問題閣僚のスタンドプレーで現行ルールに沿った結論が覆されるようでは行政の継続性は失われ、教育現場が混乱するだけだ」
…ほとんど非難一色。
そりゃあそうだ,かなり厳格な審査をして,要求されたことをこなせば開学できるという見込みがあり,学生のほうも進学の見込みをもち,教員も採用の見込みを持ち…細かい話だが印刷会社さんなども動いていたところ「問題閣僚のスタンドプレー」でひっくり返るのでは。
…単純に関係個所の引用してみたら,「問題閣僚」ってすごい表現だなオイ。
さらっと記事を検索してみたところでは,
INSIGHT NOW! 純丘曜彰 大学化けした元短大への進学は慎重に 2012年11月4日 00:21
これが田中文科相の見解に近いだろう。大学は800校もあるのだ,と数を以てその過剰を訴え,小規模大学(彼の言うところの「掘っ立て小屋のような付け焼き刃の大学」)では真っ当な教育はできまい,水準をクリアし,維持し続けることはできまい,というのである:
「単学部単学科で学年100名、総学生数400名などという高校程度の規模では、現代の大学として求められる多様な一般教養や高度な専門科目などを教えるだけの教員数や施設・設備を維持できまい。それも、その定員すら満たすことができないのであれば、早晩に潰れる。作るやつらは、自分が退職金をもらうまでのことしか考えていないかもしれないが、入る学生は、そんな掘っ立て小屋のような付け焼き刃の大学に高いカネを注ぎ込み、貴重な若い四年間を費やすのでは、人生として取り返しがつかなくなる」
そして教員・教育の質だけでなく,財務も重要なのである,と続けるのである。勿論,事務部の優秀さも実は重要なのである…! そういうことを語る上掲記事2頁目は,わりと真っ当な,正論を書いているようである。「真理探究の高等教育研究機関」というところにあまり重きを置くのは多少どうかと思われる点がないでもないが(※)―
「いま、進学を考える若者や、その保護者のみなさん。大学のパンフレットなど、どこもどうせ都合のよい話しか書いていない。青年の前途、人生のスタートが懸かっているという意味で、大学は、金額以上にはるかに高い買い物だ。人の話を鵜呑みにせず、経営体質(左右偏向や借金頼みではないか)や教育陣容(今の肩書よりこれまでの経歴、名義貸し以上の教育実態があるか)など、よくよく自分で再チェックしよう」
このあたりなど,『うん,そうだねえ』と生暖かい笑みを浮かべたくなったことである。
なお,取りあえず秋田さんについては:
西日本新聞 公立大不認可で法的手段も検討 秋田市の副市長 2012年11月5日 12:39
「石井副市長はまた、就任が内定していた教員に対して、個別に意向や状況を確認するとしながらも「1人でも欠けると大学の設置は困難になる」と基本的に採用する方向であることも明らかにした」
教員としての階級的利害を鑑み,連帯の精神から私は秋田公立美術大を支持する方針とする。
※いやど文系・哲学系の私としてはまあ同意なのだが,相当数の大学さんは実業学校だったりして,きちんと職業のための基礎訓練をするのが任務だったりするはずでさ(典型的には教員養成大学)。
JBPress 大学設置認可権限は文科大臣にあり審議会にない 2012年11月5日 11時00分
「藤村官房長官は「教育行政に責任を負う文部科学大臣としての政策的な判断だと考えている」との認識を示した」
「今回の大臣判断は設置を答申していた審議会の判断を覆す判断になる。これについては「認可権限は大臣にある。審議会が持っているわけではない」とした」
この件については,人柱を要求するような審議会の諸指導を乗り越えて,なお大臣の一存に任されるとなると,真面目に指導を聞く意義が薄れもしよう。大臣をオトしてしまえばいいわけだ,しかも一年ごとに変わるような大臣の,オトしやすい人に順番が回った時にやっちゃうという裏ワザが使えたりしかねない。
おおやにき 大学の人事とスケジュール(2) 2012年11月5日
「設置審への諮問が学校教育法95条により大臣に義務付けられているところ、審議会の結論を無視して大臣が自由に意思決定できるのであればこのような義務付けの意義は没却されるであろうから、合理的な理由が提示できない限り大臣は審議会の結論を尊重する義務を負う(設置審の結論は、大臣の裁量権を一定程度拘束する)という考え方もできる」
財形新聞 大学設置審のありよう抜本見直しへ 田中文科相 2012年11月5日 11時00分
「田中文部科学大臣は「大学の教育の質の問題が就職の難しさにもつながっている」との認識を示した」
「大学の多さが大学運営にも大きく影響していることを指摘。「生徒がいない、経営が危ないとかいう事情から、海外から来てくださいというところもある。8年間で40億円もの借金をつくった大学もある」などと語り」
それはすでに存在し,かついろいろ袋小路にはまった大学さんのお話であって,今問題になっている新設希望三大学のことではないだろう。
寧ろ質の保証ができたから設置審議を通ったわけであって。
寧ろ,傍目にも危ない大学さんへの指導強化へ向けて動くべき場面ではあるまいか。
一般には,この田中文科相の行動は批判的に捉えられているかと思われ,
日刊スポーツ 真紀子大臣、思い付きで3大学不認可 2012年11月3日9時16分
「突然の不認可に3つの大学準備室では「大臣の思い付きに振り回されたくない」などと前触れなしの真紀子節に困惑していた」
大臣の思いつき,というのは各大学準備室の言葉と読めるが,記事タイトルはそのまま採用して,記事執筆者(ないし編集部)の見解を示すもののようである。
なお「突然の不認可」については,田中文科相は別の意見を持っている可能性がある。直近に一件,大学解散命令を出す方向で話が進んでいるわけだが「「安直に(新設を)認めると教育の現場が混乱するんです。こんなことが2度と起こらないようにしたい」」と真紀子節を唸ったそうで―
―結果的には,新設の,大学として運営したことがない学校の能力を疑問視したというわけだ。それは権威主義に近い(既存大学の学部増設は認可された由,以下の読売新聞の記事を参照)。
「審議会で「新設を認める」との答申が出ていた。高等教育局幹部から再三「答申通りでお願いします」と説得を受けた田中氏は「駄目なものは駄目」と首を縦には振らなかった。記録の残っている過去30年で、答申を覆して、大臣が不認可の決定を下したのは初めて。文科省職員は「3大学は巡り合わせが悪かった、としか説明しようがない」とため息をついた」
ダメな理由はダメだから,強いて言えばめぐりあわせが悪かった―これでは統治される方が不安でしょうがない。
読売新聞 大学新設不認可 文科相の独断が混乱を招いた(11月4日付・読売社説) 2012年11月4日01時34分
「理解に苦しむ判断である。危惧していたことが起きてしまった」
「しかも、田中文科相は、設置審が認可答申を出した、他大学の学部や大学院の新設については認可している。大学新設だけを不認可としたこととの整合性をきちんと説明できるのだろうか」
「文科相の独断と暴走がもたらす混乱は計り知れない」
「問題閣僚のスタンドプレーで現行ルールに沿った結論が覆されるようでは行政の継続性は失われ、教育現場が混乱するだけだ」
…ほとんど非難一色。
そりゃあそうだ,かなり厳格な審査をして,要求されたことをこなせば開学できるという見込みがあり,学生のほうも進学の見込みをもち,教員も採用の見込みを持ち…細かい話だが印刷会社さんなども動いていたところ「問題閣僚のスタンドプレー」でひっくり返るのでは。
…単純に関係個所の引用してみたら,「問題閣僚」ってすごい表現だなオイ。
さらっと記事を検索してみたところでは,
INSIGHT NOW! 純丘曜彰 大学化けした元短大への進学は慎重に 2012年11月4日 00:21
これが田中文科相の見解に近いだろう。大学は800校もあるのだ,と数を以てその過剰を訴え,小規模大学(彼の言うところの「掘っ立て小屋のような付け焼き刃の大学」)では真っ当な教育はできまい,水準をクリアし,維持し続けることはできまい,というのである:
「単学部単学科で学年100名、総学生数400名などという高校程度の規模では、現代の大学として求められる多様な一般教養や高度な専門科目などを教えるだけの教員数や施設・設備を維持できまい。それも、その定員すら満たすことができないのであれば、早晩に潰れる。作るやつらは、自分が退職金をもらうまでのことしか考えていないかもしれないが、入る学生は、そんな掘っ立て小屋のような付け焼き刃の大学に高いカネを注ぎ込み、貴重な若い四年間を費やすのでは、人生として取り返しがつかなくなる」
そして教員・教育の質だけでなく,財務も重要なのである,と続けるのである。勿論,事務部の優秀さも実は重要なのである…! そういうことを語る上掲記事2頁目は,わりと真っ当な,正論を書いているようである。「真理探究の高等教育研究機関」というところにあまり重きを置くのは多少どうかと思われる点がないでもないが(※)―
「いま、進学を考える若者や、その保護者のみなさん。大学のパンフレットなど、どこもどうせ都合のよい話しか書いていない。青年の前途、人生のスタートが懸かっているという意味で、大学は、金額以上にはるかに高い買い物だ。人の話を鵜呑みにせず、経営体質(左右偏向や借金頼みではないか)や教育陣容(今の肩書よりこれまでの経歴、名義貸し以上の教育実態があるか)など、よくよく自分で再チェックしよう」
このあたりなど,『うん,そうだねえ』と生暖かい笑みを浮かべたくなったことである。
なお,取りあえず秋田さんについては:
西日本新聞 公立大不認可で法的手段も検討 秋田市の副市長 2012年11月5日 12:39
「石井副市長はまた、就任が内定していた教員に対して、個別に意向や状況を確認するとしながらも「1人でも欠けると大学の設置は困難になる」と基本的に採用する方向であることも明らかにした」
教員としての階級的利害を鑑み,連帯の精神から私は秋田公立美術大を支持する方針とする。
※いやど文系・哲学系の私としてはまあ同意なのだが,相当数の大学さんは実業学校だったりして,きちんと職業のための基礎訓練をするのが任務だったりするはずでさ(典型的には教員養成大学)。
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