空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

米国はソマリアに「外科手術」を断行―戦果を得る

2009-09-15 23:15:19 | ソマリア関連
 要約:米国はヘリ部隊をソマリアに進め,特殊軍事作戦を敢行。アルシャバブ政治指導者のひとりSheikh Hussein Ali Fidow及び東アフリカ・アルカイダ組織の要たるSaleh Ali Saleh Nabhan (BBC)を殺害せり。

 他関連記事:
BBC Al-Qaeda Somalia suspect 'killed'  15 September 2009
Garowe Online Somalia: Foreign helicopters 'attack Al Shabaab insurgents' Sep 14, 2009 - 2:49:29 PM
CNN U.S. may have killed al Qaeda target in Somalia, officials say  updated 11:25 a.m. EDT, Mon September 14, 2009
CNN-Japan アルカイダ構成員、米軍の攻撃受けソマリアで死亡か 2009.09.15 Web posted at: 13:12 JST Updated - CNN

 まずソマリア趣味者的にSheikh Hussein Ali Fidowの話から。彼はモガディシュで活動が確認されるアルシャバブの政治指導者(と新聞記事中に注釈が入る)。当blogの過去記事からは,外国人戦闘員はムスリムであるから兄弟であって外国人という方がおかしい,と主張した記者会見の記事等に見られます:

「いわゆる外国人戦闘員とはイスラムの兄弟たちである!」
ソマリアで自爆テロ―犯行声明と政府側説明と国連特使と

 Garowe Onlineによれば,海辺の町Baraweにてキスマユから移動中の彼の乗車が正体不明のヘリ部隊に襲撃された。複数のヘリが着陸,彼の乗車に銃撃。彼を含め4名が死亡。彼とともに外国人戦闘員たちが死亡したとの未確認情報もあり。

 襲撃者については,初期報告では仏国の軍服・記章をつけ仏国の旗を翻した艦艇へ撤退していった(BBC)というが,仏国は関与を否認。米国側報道ですと,ヘリは米国艦船から発着したようで―現地初期情報は途中の伝言ゲームが関与したか,『フランスの情報局員を取り戻しに・または報復をしにフランス人が来たに違いない!』みたいな思い込みが関わった可能性を考慮すべきか。

 これがBBC・CNN的には―西欧的関心からはSaleh Ali Saleh Nabhanの「除去」に重点が変わる。彼は2002年のモンバサでのホテル襲撃,さらには1998年の米国ケニア・タンザニア大使館に対する攻撃関与の疑いまで掛けられる,FBIのテロリストリスト最上位クラスの大物。

 なお,アフガンのアルカイダとも密接な,東アフリカのアルカイダ組織の扇の要たる人物であったという。こうした襲撃―6機のヘリを使用,(ソマリソースによれば)2台からなる車列(の中の1台:米側報道)に発砲,着陸してNabhanの死体を回収―については米国officialが公式に認めたとのこと。

 日本語報道だと「米特殊部隊は14日、ソマリア南部バラウェでヘリコプターから自動車1台を爆撃」しとあり,これはGarowe Online(系)のwhere a vehicle reportedly driven by Al Shabaab insurgents from the southern port of Kismayo was hit by missilesのmissilesあたりに影響されたかとも思うんですが,ミサイルで爆撃なんかしたら肉片しか残んねえんじゃねえかと思うところではある。

 数機のヘリで取り逃さないよう完全包囲し,(どのくらいの口径が適当かはさておき)機銃で制圧すれば足りるではあろう。

 そんなわけで,どう考えても東アフリカ地域のアルカイダ活動に重大な影響を与えるであろう人物が暗殺されちゃった模様。

 米側としては,いわば恨み重なる,ヒットリスト最上位者の一人を殺害,敵側の情報連絡・意思疎通・作戦中枢に多大なダメージを与えて大戦果(ああなんかソマリ人のテロリストもついでに死んだっぽいね?),といいたところか。

 他方ソマリアとしては,アルシャバブの大物が一人殺害され,その点重大事ではあるものの,所詮彼は多数の指導者連のなかの一人にすぎない(少なくとも,Ayroほど,他を圧する存在感はなかったかと思われる)。

 彼の欠けたあとの穴は適宜埋めることができ,外国軍の勝手な行動を単に歯嚙みしてみているしかない(いや,ソマリア内閣も承知のうえの様子で,Nabhanが死亡したと信じるとコメント出してる由)情けない「我が国の政府」に対する国民の失望―まあいまさら改めて失望できるほど望みがあったかどうかはさておき―,果断な発言をするだけはするアルシャバブ―

 …マイナスっぽいなー,差し引きなー,というところか。

ShabelleMediaNetwork Helicopters seen flying low level in Abudwaq town  Posted: 9/10/2009 4:02:00 PM

 ソマリア中部Abudwaqでは,どうもエチオピア方面からと思われるヘリが見られたとかで。
 なんぼなんでも,「領空」なる概念を好き勝手凌辱する格好の「外の連中」に―ふつうは好感を持たないであろう所。

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1 コメント

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んなわけで (teiresias)
2009-09-15 23:34:06
内政事情―やっぱりHawiyeとDarodで闘争するか君ら的大統領―首相間の齟齬やキスマユ事情の考察はまたしても後回し。明日はちと仕事があるし,さていつ言及できるやら。つか自分の仕事が進まないんですが。ここ数日は割に調子いいですが。

まー西側主要メディア的にはアルカイダ上級構成員(東アフリカ組織の設立メンバー)暗殺成功に注視するのは当然ですが,ソマリア事情的には当該車列がキスマユから来たものっぽい点,注意しておくべきか。

恐らくケニアから来たNabhanは―まずはKismayoに到着,何らかの事情でモガディシュのアルシャバブと連絡,またはモガディシュに赴く必要があり,モガディシュ方面からFidowが出迎えに来てたってことか。
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