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心に響く香月泰男、丸木伊里・俊、川田喜久治作品・・平塚市美術館

2016年10月07日 | 注目の現代美術作家と画廊散歩
深い感動に包まれるひとときであった。平塚市美術館の香月泰男、丸木伊里・俊、川田喜久治展、是非観たいと思っていた展覧会であり、無理して出かけてよかった。

香月泰男は知る人ぞ知る素晴らしい画家である。東京美術学校を卒業、国画会・新文展に出品した後に応召、シベリア抑留を経て復員となった。香月と言えばシベリア・シリーズがよく知られているが、帰国後にシベリア抑留中の記憶をもとに描いた作品である。酷寒の中での飢餓や強制労働などの極限状態の日常を描いているが、黒や褐色による暗鬱な色調の画面が見る者を強く感動させる。左・作品「点呼(左)」、右・作品「青の太陽」


・・作品「点呼」・・横長のカンバス二枚組の一枚、貨物船に乗船するためのシベリアでの最後の点呼風景である。作家は「これさえ通過すれば、もう誰からも拘束されることのない自分の身体になるのだと・・。作業衣の中のやせた身体に感謝せずにはいられなかった。多くの友が故国を見ずしてシベリアの露と消えていったのに・・・。」と記している。

・・作品「青の太陽」・・この絵のモチーフは銃を両手で捧げての匍匐(ほふく)前進訓練の時見つけたアリの巣である。自分が穿った穴へ自由に出入りしているアリを見詰めながら、アリになって穴の底から青空を見て暮らしたい。・・そんな思いを描いた作品であろう。普通に生きていることを感謝したくなる絵である。



・・作品「原爆の図」のことは知っていたが、作家の名前も作品も初めてであった。凄い作品である。上記画像はその一部であるが、少年と少女の絵には言葉を失う。作家丸木俊は「900人程の人間像を描きました。たくさん描いたものだなと思いました。けれど広島でなくなった人々は26万人なのです」と語っている。こういう作品作りに生涯をささげた作家がいるのである。



・・上記作品「原爆ドーム・太田川」など、川田喜久治の写真もよかった。「原爆ドーム天井・しみ」や「特攻隊員の写真」等、圧倒的迫力を持って観る者に迫る。モノクロの写真を通して、日本の戦争の歴史の不条理を見詰めている。

香月泰男の作品は今までに何回か観ていたのだが、やはりよかった。それに丸木伊里・俊や川田喜久治を知ったこと、いい一日であった。それぞれの戦争や平和への思いが深い感動をもって伝わる展覧会であった。


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