ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ジョン・ジェンキンス、クリフ・ジョーダン&ボビー・ティモンズ

2024-05-01 21:30:19 | ジャズ(ハードバップ)

本日はジョン・ジェンキンスを取り上げたいと思います。ジェンキンスのことは以前にサヴォイ盤「ジャズ・アイズ」でご紹介しましたが、1957年に4枚のリーダー作と6枚のサイドメン作品を残しながら、翌年以降シーンから姿を消した幻のアルト奏者です。何でもジャズから足を洗ってニューヨークで宝石を売っていたとか。音楽教師になったルイ・スミスやエアコン販売業者になったジョージ・ウォーリントンの話は本ブログでもしましたが、ジャズで飯を食っていくのはなかなか大変だったようです。もともとはシカゴの出身で、多くのジャズメンを輩出したデュセーブル高校の出身です(同高校については以前のブログを参照)。本作はジェンキンスの4つのリーダー作のうち1つで、テナーのクリフ・ジョーダンとピアノのボビー・ティモンズとの共同リーダー作です。ジェンキンスとジョーダンは高校の同級生で、ブルーノート盤「クリフ・ジョーダン」でも共演しています。ティモンズはフィラデルフィア出身。西海岸でのチェット・ベイカーとの仕事を終えて東海岸に戻ってきた頃です。ちなみに本作はティモンズにとって初のリーダー作に当たります。残りのメンバーはベースがウィルバー・ウェア(彼もデュセーブル高校の先輩のようです)。ドラムがダニー・リッチモンドという布陣です。

アルバムはまずクリフ・ジョーダンのオリジナル”Cliff’s Edge"で幕を開けます。マイナーキーのバップ曲ですがちと暗すぎか。2曲目はバラードの”Tenderly”。本作中唯一のスタンダードですが、これが素晴らしい。温かみのあるジョーダンのテナー、しっとり聴かせるティモンズのピアノ、そしてロマンチックに歌い上げるジェンキンスのアルトと最高のバラード演奏を聴かせてくれます。ジェンキンスのアルトは特にクセもない正統派のプレイで、ストレートに胸に響いてきますね。3曲目”Princess”はジェンキンスのオリジナル。愛らしいタイトルどおりメロディアスなミディアムチューンです。4曲目は本作のハイライトである"Soft Talk"。トロンボーン奏者ジュリアン・プリースターが前年に前衛ジャズの旗手サン・ラのために書いた曲ですが、ここでは血沸き肉躍る熱血ハードバップに仕上がっています。10分余りの曲ですが、7分過ぎまでジョーダンとジェンキンスによる熱きサックス・バトルが繰り広げられます。2人を煽り続けるダニー・リッチモンドのドラミングも最高です。ラストのジェンキンス作のブルース”Blue Jay”もまずまずの出来です。以上、名盤特集に取り上げられることはまずありませんが、個人的にはかなりの傑作と思います。

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