ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ムーチョ・カロール

2017-07-27 12:18:41 | ジャズ(ウェストコースト)
本日は梅田のタワーレコードでゲットしたCDの中からのラテンジャズのアルバムをご紹介します。ジャケ帯では「アート・ペッパー/ムーチョ・カラー」と記載されており、ペッパーの棚に並んでいましたが、訂正点が2つ。まず、カラーは英語のcolorではなく、スペイン語のcalorです。英語に訳すとvery hotですね。第2点として、これはペッパーのリーダー作ではなく、あくまでリーダー不在のオムニバス作品と言うこと。発売元はアンデックスと言う西海岸のマイナーレーベルで、当時のウェストコーストの俊英達を集め、そこにラテン・パーカッションを加えたラテン・ジャズの企画モノです。メンバーはコンテ・カンドリ(トランペット)、ビル・パーキンス(テナー)、アート・ペッパー(アルト)、ラス・フリーマン(ピアノ)、ベン・タッカー(ベース)、チャック・フローレス(ドラム)と言った西海岸ではおなじみの面々に、ジャック・コスタンザとマイク・パチェコという2人のパーカッション奏者が加わった計8人の編成す。アレンジャーも4人いて、うちテナー奏者でも知られるビル・ホルマンが10曲中5曲を、後はペッパー自身が2曲、ベニー・カーターとジョニー・マンデルが1曲ずつ手掛けています。内容的にはラテン色を前面に出して編曲しているだけあって、終始パーカッションがチャカポコチャカポコ後ろで鳴っていますが、一方でそれ以外のメンバーはウェストコーストを代表する面々だけあって、魅力的なソロを繰り広げています。一番目立つのは何と言ってもアート・ペッパー。彼の切れ味鋭いアドリブはやはり天才と言うしかないですね。コンテ・カンドリのパワフルなトランペット、レスター・ヤング派のビル・パーキンスのテナーも捨て難いです。



全10曲。オリジナルとスタンダードが半々の構成です。オリジナルでお薦めは何といってもタイトル曲の“Mucho Calor”。ビル・ホルマンが作曲した名曲で、いかにもラテンと言った哀愁漂うメロディで、ペッパーも最高のソロを聴かせてくれます。同じくホルマン作の“Vaya Hombre Vaya”も疾走感溢れるアップテンポの曲で、ペッパー、カンドリらがエネルギッシュなソロを繰り広げます。一方でウッ!と掛け声の入るペッパー作の“Mambo De La Pinta”、パーカッションが主役の“Mambo Jumbo”あたりはちょっとラテンっぽさを狙い過ぎかな?ジョニー・マンデルの“Pernod”はパーカッションの入らない普通のバップです。

一方、スタンダードは“Autumn Leaves”“I'll Remember April”“I Love You”“Old Devil Moon”“That Old Black Magic”とよく知られたスタンダードばかりですが、こちらはちょっとラテン風のアレンジを利かせすぎて若干くどくなっているのは否めません。ただ、そんな中でもペッパーのソロはやはり素晴らしく、“I Love You”ではビル・ホルマンの仰々しいテーマ・アンサンブルの後に、目の覚めるような素晴らしいソロを聴かせてくれます。冒頭で「これはペッパーの作品じゃない」と言っておきながらなんですが、ペッパー抜きには語れない作品であることは間違いないですね。
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オスカー・ピーターソン/ザ・サウンド・オヴ・ザ・トリオ

2017-07-25 13:16:09 | ジャズ(ピアノ)
最近は私生活でなかなか時間が取れず、ジャズ名盤探しもしばらく中断していましたが、先日梅田のタワーレコードで久々にまとめ買いしました。本日はそのうちの1枚で、オスカー・ピーターソンのトリオ作品をご紹介します。彼に関しては本ブログでもすっかり常連になりましたね。もともとは特にファンという訳でもなく、アルバムも数枚しか持ってない状態だったのですが、最近になってCD発売の機会が多いということもあって、よく聴くようになりました。本作は1961年の7月にシカゴのロンドン・ハウスというジャズクラブでの演奏を記録したライブ盤です。メンバーは後期のピーターソン・トリオ、すなわちピーターソン(ピアノ)、レイ・ブラウン(ベース)、エド・シグペン(ドラム)の3人です。実は同日のライブを録音したものはもう1枚あり、そちらは「ザ・トリオ~オスカー・ピーターソン・トリオの真髄 」のタイトルでこれまで繰り返し発売されており、例の「ジャズの100枚」シリーズにも選ばれるなどすっかり定番の作品となっています。本作はいわばその超有名作品の“裏盤”ですね。



おそらく、“表”ばかりが有名になったのは“Chicago”はじめスタンダード曲が揃っており、ジャズ入門者にピッタリの内容だったと言うのがあるでしょうね。一方の本作は全5曲中、2曲目“On Green Dolphin Street”と4曲目“Ill Wind”の2曲が有名スタンダードですが、残りの3曲はオスカー・ペティフォード作のバップ・チューン“Tricrotism”と後はピーターソンのオリジナルということもあって、やや趣が違います。冒頭“Tricrotism”は作曲者のペティフォードがベーシストということもあり、レイ・ブラウンのベースが最初に大きくフィーチャーされ、そこから縦横無尽のピアノ・ソロが繰り広げられます。3曲目の“Thag's Dance”は今度はエド・シグペンのドラムが大活躍。アルバムタイトル通りまさにトリオの三位一体となったアドリブが堪能できます。ラストの“Kadota's Blues”は門田?角田?と漢字が思い浮かびますが、ライナーノーツによるとピーターソンの友達のジョージ・カドタという人物(おそらく日系人でしょう)に捧げられた曲だそうです。これはタイトル通りコテコテのブルースで、トリオのいつも以上にファンキーで黒っぽい演奏で締めくくります。以上、内容的には“表”に決して引けを取らないどころか、むしろ個人的にはこちらの方が良いと思いますが、いかがでしょうか?
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