ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

アート・ペッパー・ウィズ・ウォーン・マーシュ

2013-02-27 23:17:55 | ジャズ(ウェストコースト)
白人アルト奏者アート・ペッパーは重度の麻薬中毒のため、キャリアの多くを棒に振っています。そのため、残された録音は50年代後半と70年代後半に集中していますが、私を含めジャズファンに人気が高いのはやっぱり50年代の演奏ですよね。ジャンル分け的にはウェストコーストジャズなんですが、その天才的なアドリブは同時代のどんな黒人ハードバッパー達に劣るものではなく、モダンジャズの歴史に輝かしい足跡を残しています。特に西海岸の名門レーベルであるコンテンポラリーには多くの名作を残しており、かの有名な「ミーツ・ザ・リズム・セクション」はじめ、「プラス・イレブン」「インテンシティ」等6作品をこの時期に吹き込んでいます。本作は1956年に録音された同レーベルへの初吹き込みです。



さて、アート・ペッパーのことばかり述べましたが、本作のもう一人のリーダーはウォーン・マーシュ。白人テナー奏者でリー・コニッツとのコンビでよく知られていますが、正直私の好みではあまりない。クールジャズだか何だか知りませんが、モソモソと起伏に乏しいアドリブは調子っぱずれにしか聞こえません。リズムセクションもロニー・ボール(ピアノ)、ベン・タッカー(ベース)、ゲイリー・フロマー(ドラム)とインパクトに欠ける面々ですし。ずばり本作の魅力はペッパーの輝かしいアルトに尽きるでしょう。冒頭の軽快なミディアムナンバー“I Can't Believe That You're In Love With Me”に始まり、マイナー調の“All The Things You Are”、急速調のテンポの中でペッパーのアドリブがほとばしる“Avalon”、自作のスローブルース“Warnin'”、そしてラストの幸福感に満ちあふれた“Stomping At The Savoy”。どの曲でもメロディアスなフレーズを連発するペッパーに酔いしれるべし!
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クレア・フィッシャー/シソーラス

2013-02-23 13:35:20 | ジャズ(ビッグバンド)
クレア・フィッシャーをご存じでしょうか?通の方なら60年代初頭にビル・エヴァンス風のトリオ作品を残したピアニストとして彼の名を挙げることでしょう。パシフィック・ジャズ盤「ファースト・タイム・アウト」「サージング・アヘッド」は最近廉価版で発売されたこともあり、隠れ名盤として再評価されています。ただ、今日紹介するのはそんなフィッシャーが1968年にアトランティックに残したビッグバンド作品。他にもボサノバのアルバムを出したりとマルチなスタイルの持ち主だったようですね。ここでのフィッシャーはピアニストとしてもプレイしていますが、ソロを取る場面は限られており、もっぱらアレンジャーに徹しています。



参加メンバーは総勢19人。サックス6+トランペット5+トロンボーン4による分厚いホーンセクションによる見事なアンサンブルが聴き所ですが、各楽器のソロも充実しており、中でもコンテ・カンドリ(トランペット)、ウォーン・マーシュ(テナー)、ビル・パーキンス(バリトン)など西海岸の名手達のプレイが聴けるのは嬉しい限りです。特にテナーを主楽器とするパーキンスがバリトンで大活躍しており、“Calamus”では卓越したバラード演奏を、ファンキー調の“'Twas Only Yesterday”ではコンテ・カンドリと共にパワフルなソロを聴かせてくれます。それ以外ではホーンアンサンブルをバックにフィッシャーがゆったりとエレピを弾く幻想的な“Bitter Leaf”も秀逸。1曲だけスタンダードの“Upper Manhattan Medical Group”もスインギーで楽しい好演ですし、全体的によくまとまった隠れ名盤だと思います。
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アート・ファーマー/ブルースをそっと歌って

2013-02-22 21:42:01 | ジャズ(モード~新主流派)
1960年代に入りハードバップが下火になると、ジャズメン達は様々な方向を模索するようになりました。トランペッターを例にとるとリー・モーガンがジャズロック、ドナルド・バードがゴスペル/R&B、フレディ・ハバードがモード/フリーにそれぞれ路線変更しました。一方、アート・ファーマーはフリューゲルホルンに楽器を持ち替え、ソフト・ジャズ路線で売るようになります。以前に紹介したジム・ホールとのコラボ作「インターアクション」がその典型ですね。ただ、その中で異色の作品が1965年録音の本作。ファーマーにしては珍しく新主流派っぽいアグレッシブなスタイルです。



原因は共演者ですね。スティーヴ・キューン(ピアノ)、スティーヴ・スワロウ(ベース)、ピート・ラロカ(ドラム)という布陣ですが、とりわけキューンの影響が大。キューンと言えば60年代以降第一戦で活躍し続ける白人ピアニストで正統派のピアノも弾きますが、どちらかと言えば若い頃は前衛もどきのトンがった演奏を得意としていただけあって、本作でもエネルギッシュなプレイを聴かせてくれます。ピート・ラロカもモード/新主流派では欠かせない存在だけあって、熱いドラミングぶり。全6曲、タイトル曲“Sing Me Softly Of The Blues”“Ad Infinitum”はじめ、いかにもモーダルな雰囲気を漂わせた曲調が支配的です。ただ、最大のお薦めは唯一のスタンダード“I Waited For You”。哀調を帯びた美しさの中にも白熱したアドリブが繰り広げられる名演です。
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ジミー・オーウェンス&ケニー・バロン/ユー・ハド・ベター・リッスン

2013-02-18 21:49:04 | ジャズ(モード~新主流派)
今日はちょっぴりマイナーめで。今やジャズピアノの巨匠であるケニー・バロンがトランペッターのジミー・オーウェンスとの双頭クインテットで吹きこんだ1967年アトランティック盤です。両者とも本格的にメインストリームで活躍するのは1970年代以降ですので、ハードバップ愛好家の私には正直あまり馴染みがないのですが、本作はまだ駆け出しだった2人のフレッシュな魅力にあふれた拾いモノの1枚でした。サポートメンバーはこれもポストハードバップ世代のテナー奏者ベニー・モーピン、ベースのクリス・ホワイト、ドラムが曲によってフレディ・ウェイツとルディ・コリンズが分担しています。



全5曲。内容は1960年代後半のジャズシーンを凝縮したようなバラエティ豊かな構成です。ジャズロック調の“You Had Better Listen”で始まり、スタンダードをボサノバ風にお洒落にアレンジした“The Night We Called It A Day”、これぞモードジャズと言った“Gichi”、ジェイムズ・ムーディ作の隠れた名バラード“Love, Where Are You?”と続き、最後はファンキーな“Carolina John”で締めくくります。演奏の方では予備知識の全然なかったジミー・オーウェンスが意外にブリリアントなラッパを聴かせてくれますね。同世代のフレディ・ハバードと比べても遜色ないと言えば誉め過ぎでしょうか?特に“Love, Where Are You”は彼の独壇場です。もちろんどんなスタイルでも器用に弾きこなすケニー・バロンのピアノはさすがですし、モーピンの意外に力強いテナーも合格点です。正直聴く前は頭でっかちな新主流派ジャズをイメージしていたのですが、意外にストレートアヘッドな王道ジャズに良い意味で期待を裏切られた1枚です。
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レオ・ライト/ソウル・トーク

2013-02-11 22:58:15 | ジャズ(ソウルジャズ)
レオ・ライトと言われてピンと来る方はどのくらいいるでしょうか?何でもディジー・ガレスピーのビッグバンド出身で、アルトの他にフルートも吹くマルチリード奏者ですが、一般的な認知度はあまりないでしょう。私もブルーノートの隠れ名盤であるジョニー・コールズ「リトル・ジョニー・C」やトランペッターのリチャード・ウィリアムズのキャンディド盤での彼のプレイを知っているぐらいですかね。アトランティックには他にもリーダー作を2つ残していますが、内容は正直パッとせず中古屋に売り払ってしまいました。1963年録音の本作も正直あまり期待せずに買ったのですが、傑作とは言わないまでも意外と楽しめる拾いモノでした。



サポートメンバーはケニー・バレル(ギター)、グロリア・コールマン(オルガン)、フランキー・ダンロップ(ドラム)。ジャズギターの最高峰であるバレルの参加が何と言っても目を引きますが、謎の女流オルガン奏者コールマンも意外と活躍しています。何でもテナーのジョージ・コールマンの奥方らしいですが、シャーリー・スコットばりのソウルフルなオルガンを聴かせてくれます。もちろん主役のレオ・ライトも彼らに負けじと全編に渡って熱いブロウを聴かせます。曲は1曲だけスタンダードのバラード“Skylark”が入っている以外はどれもコテコテのブルースばかり。中でもコールマンの怒涛のオルガンで始まる“State Trooper”、フルートとギターで奏でる“Blue Leo”、コール&レスポンス形式で始まるスローブルース“Soul Talk”、バレルのブルージーなギターが冴え渡る“Blues Fanfare”あたりがお薦めです。
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