ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ロッシーニ/小荘厳ミサ曲

2015-08-29 23:11:43 | クラシック(声楽)

本日はオラトリオから離れてロッシーニの宗教曲を取り上げたいと思います。ロッシーニと言えば「セビリアの理髪師」「ウィリアム・テル」等のオペラで知られていますが、実はオペラ作曲家として活躍したのは30代までで、その後は76歳で亡くなるまでの40年近くは悠々自適の隠居生活を送っていたようです。もっともそれでは退屈したのかたまに宗教曲を書いたりしたようで、50歳の時に宗教曲の傑作「スターバト・マーテル」を書き残しています。この「小荘厳ミサ曲」はさらにその20年以上後、ロッシーニが76歳で亡くなる5年前に書かれた曲です。「スターバト・マーテル」ほど有名ではありませんが、ロッシーニらしい歌心あふれる旋律が随所に散りばめられた魅力的な作品となっています。



荘厳ミサ曲とはラテン語で言うミサ・ソレニムスのことで、頭に“小”が付いている分、規模が小さいのかと思いきやそうでもなく、演奏時間80分以上もあります。下手したらベートーヴェンの「ミサ・ソレニムス」より長いかもしれません。私の買ったアントニオ・パッパーノ指揮サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団のCDも2枚組のボリュームです。曲は冒頭の「キリエ」こそ厳かな雰囲気で始まりますが、続く「グロリア」と「クレド」はオペラ作曲家ロッシーニらしく魅惑的な旋律のオンパレードです。特にオペラのアリアを思わせるテノール独唱「神なる主」、ドラマチックな合唱「聖霊とともに」、清らかなソプラノ独唱「我らのために十字架につけられ」、壮麗な合唱「来世の生命とを待ち望む」が必聴です。晩年のロッシーニは長年の美食が祟ってか極度に肥満し、さまざまな病気にもかかっていたそうですが、そんな中でこの曲を書いたのはさすがですね。

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ハイドン/四季

2015-08-13 23:24:54 | クラシック(声楽)
オラトリオ・シリーズ第6弾はハイドンの「四季」です。3大オラトリオの「天地創造」に比べるとそこまでメジャーではありませんが、本作もオラトリオ史上に残る傑作として有名です。タイトル通り春夏秋冬の四季を描いたもので、シモン、ハンネ、ルーカスという3人の農夫が語り部となり各季節の情景を歌い上げていきます。一応、自然の恵みを神に感謝するという形式を取っていますが、宗教色はあまり強くなく、むしろ四季の自然現象と当時の農民の生活が生き生きと描かれていきます。特に秋から冬にかけては、農作物の収穫、結婚、狩り、葡萄酒による宴、農民達の団欒の様子など生活描写がメインですね。当時はオラトリオにしろ、オペラにしろ、聖書や歴史物語を題材にした作品が普通でしたので、庶民の生活を歌った作品というのは珍しいですね。



全44曲、2時間を超える大作ですが、お薦めはバロック的重厚さを感じさせる序曲、春の到来を歌う第2曲の合唱「来い、のどかな春よ」、農民3人の三重唱による第6曲「慈悲深い天よ、恵みを与えてください」、太陽を讃える第12曲「太陽が昇る」、ルーカスとハンネが愛を語らう第25曲「町から来た美しい人」、狩りの場面を歌うエネルギッシュな第29曲「聞け、この大きなざわめきを」、暗い冬の到来をオーケストラで描写する第32曲「冬の序奏」、村人たちのユーモラスな恋話をオペラのアリア風に歌う第40曲「ある時、名誉を重んずる娘が」、フィナーレを飾る第44曲「それから大いなる朝がやってきた」等ですね。CDは「天地創造」と比べるとディスクが少ないですが、ゲオルク・ショルティ指揮シカゴ交響楽団のものが国内盤で歌詞対訳付きなのでお薦めです。ハイドンと言えば“交響曲の父”として有名ですが、創作活動の頂点に位置するのは「天地創造」「四季」の2つのオラトリオにある、というのが評論家の意見のようです。私もその意見に異論はありません。いずれも甲乙つけがたい名作と思います。
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シューマン/ゲーテの「ファウスト」からの情景

2015-08-06 01:09:21 | クラシック(声楽)
オラトリオ・シリーズは第5弾は先日アップした「楽園とペリ」に引き続き、シューマンの作品です。こちらも聖書とは全く関係なく、有名なゲーテの「ファウスト」をモチーフにしたスケールの大きな声楽曲です。文学的素養のない私は恥ずかしながら読んだことないのですが、「ファウスト」は文学史上に残る名作として昔から多くの作曲家にインスピレーションを与えたようで、本作以外にもベルリオーズの「ファウストの劫罰」、グノーのオペラ「ファウスト」、リストの「ファウスト交響曲」などが有名です。一般的にはベルリオーズのものが有名でディスクも多く出回っていますが、個人的にはシューマンの作品の方が完成度が高いと思います。




全21曲、2時間近い大作だけあって、一聴しただけでは良さがわかりませんが、何度も聴いているうちに味わいが出てきます。お薦めはまずは「序曲」。声楽パートはなくオーケストラだけですが、ドイツ・ロマン派の王道を行く力強い作品で、8分半近いボリュームと言い、これだけで単品の管弦楽作品として成立します。2曲目以降は声楽入りで、歌手陣の歌唱も素晴らしいのですが、それを盛り上げる壮麗なオーケストレーションが見事です。お薦めは4曲目の「グレートヒェン、おまえはなんと変わってしまったことか」、6曲目「谷はみどり色を取り戻し、岡の輪郭も浮かび上がり」、続く7曲目「生命の鼓動が新たに生きいきと打ちはじめ」、17曲目「霊界の気高い方が」、そしてフィナーレの「この世の被造物はすべて神の似姿にほかならない」です。CDは残念ながらほとんど出回っておりません。以前国内盤でアバド&ベルリンフィル盤が出たようですが、今では入手困難で輸入盤に頼るしかないでしょう。私が買ったのも輸入盤でダニエル・ハーディングがバイエルン放送交響楽団を指揮したものです。輸入盤だけに歌詞の対訳が付いてないので話の内容がいまいちわからないのが残念ですが、演奏そのものはとても素晴らしいと思います。「楽園のペリ」と言い、本作と言い、シューマンにオラトリオ作曲家としての一面があったとは知りませんでした。クラシックの世界は奥が深いなあ・・・
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