Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

出口のない光

2023年06月08日 | 映画など
是枝裕和監督「怪物」を見る。
うわわ。あれれ。おお。
本作の感想をオノマトペで書くとこんな感じです。
そして。そうか。そうなのか。
これはラブストーリーなのか、と。


うわわ。
えらく怖いんですけど。
登場人物がみんな怖い。
息子がDVを受けていると抗議する安藤サクラも、
それに対応する校長の田中裕子も。DV教師の永山瑛太も。
殺気立っているか、魂の抜け殻のような佇まい。
およそ人間らしくない人物が蠢きつつ、
伏線を張るような謎めいた描写があちこちに。

あれれ。
いきなり安藤サクラの視点から瑛太の視点に変わり、
時制もさかのぼる構成に。シネフィルはきっとここで
黒澤の「羅生門」とかタランティーノ映画を思い出すことだろう。
ともあれ、安藤サクラの視点とはまったく異なる見え方に
首をかしげながら、そして頭をひねりながら
スクリーンを見つめるかない。
瑛太の恋人役の高畑充希、薄情な感じが
絶妙に上手いなあと感心したりする。
瑛太と安藤サクラが、台風のなか、子供たちを探そうと
廃車となったバスの天窓を開けようとする場面。
バスの中から捉えた窓のショットの美しさは本作の白眉だ。

おお。
3部構成の最後。そうなのか。
窓のショットがあまりにも美しいので、
何が始まるのかと思ったら、
少年たちのラブストーリーが始まるとは。
ひねくれた構成と、回収されたかどうか
今ひとつ判明しない伏線の数々を乗り越えて、
なんとも清々しい少年たちの交わりを目の当たりにする。

そういえば「怪物」ってなんだろうと
映画館をあとにした観客に
考えさせようとする是枝監督、
ずいぶん観客を挑発するなあ、と。

坂本龍一の訃報を聞いた直後であり、
どうしても音楽に耳を澄ませてしまう。
でも、音楽。良かった。とても。

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7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (坂本龍一の)
2023-06-10 19:21:21
シンプルなピアノの音楽が、ひとつは「シャイニング」のオープニングの曲に聴こえ、もうひとつが「マン・オブ・スティール」の曲のイントロに聴こえた。それぞれが鬱屈と希望を感じさせるシーンに使い分けられていた。
Unknown (坂本龍一が、)
2023-06-11 11:28:37
真似をしたとは考えにくい。音楽を削ぎ落として感情に寄り添わせるとあの音になるのかと思う。
Unknown (そして)
2023-06-11 18:10:07
「小さな恋のメロディ」のようでもある。旅立つからね。
Unknown (それは俺も、)
2023-06-12 22:26:34
本当にそう思った。是枝同い年だからな。そういえば金魚も共通点だね。
小さな恋のメロディ (taco)
2023-06-13 14:48:13
なるほど「小メロ」ね。確かにそうだ。
Unknown (あれバスじゃなくて、)
2023-06-18 01:13:15
電車だよ。横倒しになった電車の中から撮った窓の泥を拭く手の長いカット、スピルバーグじゃんって思った。是枝、実はスピルバーグ好きなんだ。なんかで読んだことある。脚本を人に任せると、映像演出家としての切れ味が出るなと思いました。
電車か (taco)
2023-06-18 07:23:33
そうか。バスだとばかり。あの泥をぬぐうカットはすごい。泥の黒と水と光。

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