キャスリン・ビグロー監督「デトロイト」を見る。
1967年に起きたデトロイト暴動のさなか、
警官による黒人への暴行殺人事件の詳細を、
この監督ならではのハードなタッチで描く。
法と秩序を守るはずの警官が、人権を無視し、
ヘイト感極まる暴力を繰り広げる。
なんともしんどい2時間半なのだけど、
見ておかなければいけない映画だと思う。
メディアなどで取り上げられるヘイトデモなどを見ていると、
自分たちとは違う者たちへの憎悪が、これほどまでに強いのかと
愕然とすることがある。異質の者たちへの侮蔑と差別。
それが暴力に発展したのが、この映画で描かれている事件だ。
レイシストの警官役の俳優(ウィル・ポールター)がとても上手いのだけど、
差別意識と権力が合わさると、人間というものは
とてつもなく横暴な存在になるのだなと思う。
これはアメリカだけの問題ではなく、
日本に住む自分たちにも、いろんな意味を突きつけてくる。
被害者の一人の黒人少年が
のちにモータウンで成功するコーラスグループのメンバーで、
少なくない場面で歌われる楽曲の素晴らしさ。
やりきれない思いが募るこの映画のなかで、
唯一の救いになっているような気がする。
キャスリン・ビグロー監督は
ハードで切れのいい演出に定評があって、
この人がかつて撮っていた娯楽アクション映画が好きだった。
「ハートブルー」とか「ストレンジデイズ」とか面白いんだ、これが。
でも「ハートロッカ−」でオスカーを獲って、
大きく社会派アクションに舵を切ったことでブレイク。
これはこれでアリだし、今後もこの路線で
どんどんスリリングな題材に挑んでもらいたい。