PRESIDENT Online 掲載

■「保険証の原則廃止」に10万筆を超える反対署名

10月13日、河野太郎デジタル担当大臣はマイナンバーカードの機能強化について、「2024年度秋に現在の健康保険証の廃止を目指す」と発表した。また運転免許証についても2024年度末に一本化する目標からさらに前倒しする検討を進めていることも明らかにした。

「健康保険証の廃止」という、政府のこの強引ともいえる手法に対しては、ネットを中心に批判の声が上がり、河野大臣の会見が行われるやいなや「一体誰のため? 保険証を廃止して、マイナンバーカードに一本化することに反対する緊急署名 #健康保険証の原則廃止に反対します #マイナンバーカードの義務化に反対します」との署名活動も始まり、20日までに約10万筆が集まった。

健康保険証が原則廃止されてマイナンバーカードに一本化されることとなれば、保険医療を受けるためにはマイナンバーカードの所持、そしてそのカードに保険証の機能を加える操作が必須となる。つまりマイナンバーカード取得が事実上の義務となってしまうのだ。

■「これだけ便利になる」から「これだけ不便になる」と大転換

そもそもマイナンバーカードの取得は任意であったはずだ。それはマイナンバーの根拠法からも明らかである。それにもかかわらず政府は来年3月末までに、ほぼすべての国民に行き渡らせることを目標として掲げ、急速に“任意から原則義務化”に舵を切ったのだから、このような批判を浴びるのも当然といえば当然であろう。

ポイント付与や有名タレントを起用したCMをテレビ等からさんざん流しているにもかかわらず、その普及率(交付率)はやっと50%程度なのだから、政府が業を煮やしているのも理解できなくはない。だが「持っていればこれだけ便利になるヨ」としていたものから「持っていないとこれだけ不便になるゾ」とまるで脅しのようにカード取得を迫る手法への転換は、ただでさえマイナンバーカードに不信感を抱いている国民の、その不信感をより強固にしてしまうものと言えよう。

この普及率の低さが、政府に対する不信感の結果であることに岸田政権が気づかないかぎり、普及率100%など夢のまた夢だ。