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山岳ガイド 江口正徳の仕事と日常

手袋について

2019-08-29 10:40:54 | うんちく・小ネタ
小物でありながらとても重要で難しい装備の一つに手袋があります。
手袋について僕が実践していること(特に初夏から晩秋までの無雪期における方法)をご紹介したいと思います。

今までにガイド業を通じて数多くの方々を様々な状況、環境下でガイドしてきましたし、僕自身も同じような状況、環境下は勿論、それを遥かに上回る頻度、状況、環境で登山をしている訳なのでいろんな経験をしてきました。そしてその都度「皆さん辛い思いをされているなぁ~」とか「僕自身もキッツイなぁ~」という思いをしてきてその結果実際にもうだいぶ前から行っている方法があります。
それは多くの方が既にご存知の「テムレス」(ショーワグローブ発売)を積極的に使用する方法です。但しこれはいわゆる冬山登山で爆発的人気となった「防寒テムレス」ではなく、あくまでも無雪期の登山における一般的な使用としての「テムレス」です。「防寒テムレス」が余りに人気となった為に逆に存在さえ知らない人も多いこの普通の「テムレス」。1枚もののペラペラの作りの物です。テムレスを知らなかった随分昔は全面ゴムの作業用グローブをテムレス代わりに使っていました。テムレスの存在を知ってからはより快適さを求めて移行した訳なのでご紹介する方法は僕がもうかなり昔から実践してきている方法なのです。というか僕の中では確立された方法です。但し別にこの企業から何かしらの利益を得ている訳ではありませんし、ましてや昭和レトロ好きの僕が「ショーワグローブ」という企業名に惹かれた訳でもありませんのでアシカラズ。


ショーワグローブ発売「テムレス」
使用について賛否両論(登山業界及びガイドには否定的な意見が多い)がありますが、ここでご紹介するのはあくまでも一般的な登山における一般に起こりえる状況、環境下においての使用です。クライミングのビレーに使用するだとかそういうことではありません。
(ここまで書くのはどうも登山関係の人間というのは他人の考えや意見や物事を最後まで「見ない」「読まない」「聞かない」人が多く、直ぐにクレームを言ってくるからです。例えば「ビレーに使うべきじゃないやろ!」とか・・・、でも「それってちゃんと書いてるでしょ!」といった具合にです。)

更に状況により関連して使用する手袋として、薄手のインナー手袋を使用しています。これら実際に既に実践されている方も多いとは思いますが、改めて僕的理由付けを合わせてご紹介します。

例えば「ミズノ ブレスサーモ インナーグローブ」

■■状況、環境別で行っている方法
①普通のマイルドなコンディション
 →→→素手、もしくは皮製グローブ

②風雨下での行動
 →→→テムレス

③濡れたクサリ場、岩場の通過及び行動
 →→→テムレス

④草付き、ヤブ漕ぎ
 →→→テムレス

⑤寒冷下での行動及び上記②~④のいずれか+⑤
 →→→テムレス+薄手インナー手袋


■■以下理由

②の風雨下での行動について
よく防水透湿素材を使用したレイングローブを使用されている方が多いですが、実は殆ど無力さを感じている方は多いのではないでしょうか?
直ぐに水が浸みてビショビショになってしまう。おまけにその状態で風に吹かれると手がかじかんで辛い。

③の濡れたクサリ場、岩場の通過及び行動について
よく皮製グローブを使用している登山者が多いですが、普段の状況下では良いですが、皮製グローブは水に濡れるとヌメリが出てきてその状態でクサリや岩を掴むと恐ろしいくらいに滑り易くなります。例え雨中で行動していなくとも直前まで降っていた雨で濡れていたり、朝早目に出発した最などに朝露で濡れていたりということは普通に良くあることです。たまに軍手や綿の手袋にゴムが張り付けてあるものを使用されている方も多いですが、確かに濡れたクサリ等でもとても有効ではあるのですが、前記①の風雨時にはビショビショになってしまう。更に寒冷下では強烈に冷たくなってしまう。

④の草付き、ヤブ漕ぎについて
草付きの場合は基本的に「滑り易い」ということが前提です。またヤブ漕ぎに関しては灌木、笹など滑り易い、掴み難い、濡れ易い等々ということがあります。普通のグローブ、手袋の類ではボロボロになったり、ビショビショになったりしてしまう。

⑤寒冷下での行動について
対策として、例えばこれから季節から晩秋にかけて山はドンドン冷えて寒くなってきます。このような状況、環境下ではテムレスの下にインナー手袋を重ね使いするようにしています。もし手袋の厚さによって重ねるのがキツイ場合はテムレスのサイズを1サイズ大きいものに変えるようにしています。また行程によっては替えのインナー手袋を予備に1組持つようにしています。

あとこのテムレスであっても実際には袖口などから水が浸入してきたりします。でもその場合でも1枚もののペラペラなので水さえ抜いてしまえば特に気にはなりませんし、完全に乾かしたい場合は裏返しておくと直ぐに乾いてしまいます。また寒冷下でインナー手袋と併用してる場合は予備に変えるようにしています。

いろいろ長々と書きましたがこれは僕の主観にも基づいていることなので一般的に確立されている方法ではありません。
従って「この方法を実践してください」と強制するものでもありませんのでご自身の判断でより良い方法を実践されることをお勧めします。そしてなにより少しでもより安全に快適な登山を楽しんでいただければ幸いです。











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個人ガイド 北アルプス ジャンダルム飛騨尾根

2019-08-29 09:40:22 | ガイド山行/バリエーションルート登山
8月26日~28日は、個人ご依頼でジャンダルムのバリエーションルートの飛騨尾根をガイドしてきました。
何年か前から目標にされていたルートで、今夏も雨天に当たって2度の延期を経て3度目の正直でバッチリ登って頂くことが出来ました。

難しさ的には前穂北尾根の1ランク上くらいのレベルなので僕はずっとアプローチシューズ、Oさんにはクライミングシューズで登ってもらいました。その難しさ云々より寧ろその遠さ!なにしろ日本最高所のルートの一つであり、上級登山者の憧れであるジャンダルムですらアプローチに過ぎないのですから・・・
それでも幸い天気にも恵まれ、適度に緊張感のある快適な岩稜登攀が楽しめました。


右のスカイライン(赤線)がジャンダルム飛騨尾根(奥穂側から以前撮った写真)

今回は岳沢小屋をベースにして中日で登りました。


天狗のコルをめざして天狗沢を登っていきます。


ジャンダルム直下からガレガレのルンゼを下っていきます。


下りてきたルンゼ


先ずは支尾根を登ります。


穂高岳山荘、涸沢岳そして遥か槍ヶ岳の絶景を望みながらの快適な登行が続きます。


傾斜の緩い岩稜をバリバリ登っていきます。


足下スッパリの緊張感満点のトラバースもあります。


上部の岩稜もバリバリ登っていきます。


更にバリバリ、グングン登っていきます。


ジャンダルム直下(T1)からのジャンダルム、ロバの耳、そしてガスの中に奥穂高岳。


ジャンダルム登頂! おめでとうございます!
岳沢小屋を出て8時間、長丁場を本当によく頑張って登りましたね!
本当にお疲れさまでした!


前穂~明神岳主稜の眺め。
公募企画でも作っている「明神岳東稜~主稜縦走」のコースはルートカッコ良さ、ルートの素晴らしさ、充実度、全てにおいて最高です!
ハイ!

下山はまたまた長い長い天狗沢を辿って岳沢小屋めざして下りました。


シモツケソウが丁度綺麗に咲いています。


トリカブト


サラシナショウマの大群落!!
♪ワンサカ ワンサ ワンサカ ワンサ イェーイ イェーイ イェイ イェーイ♪(~レナウン ワンサカ娘 より~)

翌日は朝から岳沢が増水して少々大変な思いもしましたが、順調に上高地に下山して今回の山行を終了しました。
兵庫からご参加のOさん、大変大変お疲れさまでした。ご依頼ありがとうございました。









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北アルプス 奥穂高南稜~ジャンダルム~西穂

2019-08-29 08:26:41 | ガイド山行/バリエーションルート登山
8月23日~25日は、奥穂高岳のバリエーションルートの南稜を登攀してからジャンダルムそして西穂高岳へと長大な縦走を組み合わせての山行でした。


上高地から望む穂高岳の象徴的景観です。
あのド真ん中を登って奥穂高岳に至る南稜は北アルプスの数多いルートの中でも僕の最も好きなルートの一つです。


岳沢小屋では丁度この日はヨーデルコンサートが開かれていました。上高地と霞沢岳、乗鞍岳を見下ろすテラスでの演奏。
毎年出かけるスイスの街角やレストランでは当たり前に聴いていますが、日本のそれもアルプスの山中で視聴できたのはとても素敵な体験でした。


翌朝、南稜取付きめざして雪渓を登っていきます。左奥には南稜のシンボルとも言うべき「トリコニー」の岩場が1峰~3峰まで綺麗に並んでいます。


トリコニーをめざしてグングン登っていきます。


モノリス岩を足下にグングン登ります。


朝に辿った雪渓を遥か足下に上部岩稜をグングン登ります。


前穂高岳と明神岳の眺めが素晴らしい・・・


ウサギギクもまだまだ綺麗に沢山咲き競っていました。


上部岩稜は一般的には殆ど踏み跡通しで登っていくのですがそれではツマラナイので敢えて岩稜だけを辿るラインで登りました。
足下には越えてきたトリコニーの1峰~3峰が綺麗に並んでいます。


南稜の頭到着! お疲れさまでした! よく頑張りましたね~!
この日は奥穂高岳を経て穂高岳山荘まで。お昼頃に着いたのでタップリ有り余る時間を翌日の長丁場に備えてノンビリ過ごしました。


翌朝は4時に出発。ようやく明るくなりかけた頃に馬の背を通過です。


ジャンダルム!


ジャンダルムへはやはり直登ルートから登りました。


ジャンダルム頂上! 


天狗岳からの間ノ岳、そしてガスの奥にかすかに西穂高岳。
まだまだ遥か遠いですが頑張って登っては下り、登っては下りを繰り返して一歩一歩進みました。


この後、順調に西穂高岳に到着して今回の目的のコース、奥穂南稜~ジャンダルム~西穂を踏破。
ロープウェイ駅まで下山して今回の3日間の山行を終了しました。
奥穂~西穂縦走だけでも多くの上級登山者が憧れる大変なコース。南稜の登攀から継続してのコースの踏破は本当によく頑張りましたね。
大変お疲れさまでした。ご参加ありがとうございました。










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夏休み

2019-08-14 12:08:13 | うんちく・小ネタ
毎年恒例のヨーロッパから7月後半に帰ってきて、仕事でアチコチと出かけている間に早やお盆!
時間の経つスピード感に圧倒されています。
暫くキツイ系のガイディングが続いていて疲れも溜まっているので(というか有名な売れっ子ガイド諸氏と違って暇の多いガイドなので仕事が入っていないというのが事実ではあるが・・・)、ノンビリと夏休みを満喫させていただいております。



♪あー夏休み~ チョイト 登り 疲れ胸に cool baby♪











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北アルプス 槍ヶ岳 北鎌尾根(水俣乗越経由コース)

2019-08-13 08:57:18 | ガイド山行/バリエーションルート登山
8月10日~12日は、北鎌尾根ガイドでした。

昨年は悪天候中止により一度も登らなかったので2年振りの北鎌尾根でした。
バッチリ天候に恵まれて最高のコンディションの下で登っていただくことが出来ました。


イザ・入山! 快晴の穂高連峰を望みます。
緊張感と期待感が合わさってなんとも言えない心持でスタートです。


ようやく水俣乗越までやってきました。
正面には針ノ木岳。眼下の天上沢を下り、キャンプ予定地の北鎌沢出合をめざします。


北鎌尾根核心部を横に眺めます。


出合を4時に出発。北鎌沢右俣上部まで登ってきました。


独標の雄姿!


独標のトラバースルート核心部を慎重に進みます。


チシマギキョウが綺麗すぎます!


独標山頂からの北鎌尾根上部。


槍の穂先をめざして岩峰群を次々と越えていきます。


槍ヶ岳が小槍を従えてだいぶ近付いてきました。


遂に槍の穂先の基部まできました。いよいよクライマックス!


有名なチムニーを登ります。


槍ヶ岳登頂! おめでとうございます! 本当によく頑張りましたね!
北鎌沢出合を出て約9時間!体力のあるお二人だったので非常にスピーディーに登り切ることが出来ました。
そう、いつもいつも言ってることですが「登山はなんと言っても体力」なのです。
Tさんにとっては初めての槍ヶ岳登頂が北鎌尾根からという羨ましい初登頂でした。




翌朝はゆっくり目に出発して花々を見ながら下山。

長い長い道のりを上高地まで下山して3日間の山行を終了しました。
ご参加のお二人様、大変お疲れさまでした。ご参加ありがとうございました。










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