Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

アートスフィア『歌舞伎 夢の担い手たち』センター

2005年10月20日 | 歌舞伎
アートスフィア『歌舞伎 夢の担い手たち』センター

正式には「坂上みきのビューティフルpresents 『歌舞伎 夢の担い手たち』」です。東京FMのパーソナリティ坂上みきさん司会での愛之助さんと染五郎さんトークショー。

<第一部>

まず染五郎さん登場。坂上みきさんと仲良しらしく、お互い息のあったつっこみ、ぼけ、つっこみが繰り返される(笑)。どんどん話が逸れていくのが可笑しい。早く本筋聞かせて~と思う部分もあったけど、かなり楽しいトークでした。染ちゃんは真面目なんだけどちょっと天然入ってる感じ。

次が愛之助さん登場。さすが大阪人という感じでくだけた話ぷりがこれまた楽しい。テンションの上がり具合がかなりすごかった。どうやら『狐狸狐狸ばなし』の千秋楽ということもありご自分いわく「ナチュラルハイ」だったらしい(笑)

きっとこれが終わったら千秋楽の打ち上げをするつもりなんでしょう。『狐狸狐狸ばなし』共演者の名取裕子さん達が見えられていました。近くに座ってらしたんですが凄い美人。やっぱ一般人とは違うわと思った。

<第二部>

封印切の実演をするということで、これを楽しみにしていました。まずは坂上さん、染五郎さん、愛之助さんの三人で江戸歌舞伎と上方歌舞伎のことについてのトーク。それから実演だったのですがなんとビックリなことに、2畳のタタミと火鉢だけを置いた小さなスペースで羽織袴姿の二人が素顔のままで実演。えええ~、素踊りならぬ素芝居。しかもトークしたすぐ後でインターバルがないまま、いきなり芝居を始める。この二人の切り替えの早さと集中力には脱帽。役者魂を見せていただきました、という感じ。これを観られただけでも行ったかいがあったというものだ。

芝居のほうはお互い役を変えて同じ場を演じる。「封印切」の八右衛門の挑発に乗り、忠兵衛がつい封印切をしてしまう場面。最初は染五郎@忠兵衛に愛之助@八右衛門で次が愛之助@忠兵衛に染五郎@八右衛門。個人的好みもあると思うが染五郎@忠兵衛に愛之助@八右衛門がどちらもニンにあっていて良い芝居になっていたと思う。

以下個々の感想:

染五郎@忠兵衛は今年6月にやったばかりということもあるだろうが、「つっころばし」風情が良く出ていた。切羽詰った追い詰められ感や、迷いと意地とのない交ぜな表情、まさしく忠兵衛であった。また印象的だったのが動きの美しさ。手の動き、体全体の形が絵になっていた。また手先、足先まで神経が行き届いた柔らかさを持っていた。仁左衛門さんにしっかり習った成果だろう。

愛之助@八右衛門は今年お正月にやったばかり。さすがネイティブな大阪弁での悪態はテンポもよく、そこはかとなく愛嬌がありつつも金持ちぼんぼんの意地の悪さがよく見えた。

愛之助@忠兵衛も今年お正月にやったばかり。当たり前であるが大阪弁での台詞廻しはこちらのほうが断然上。ただ思ったほど「つっころばし」風情が出ていない。骨太でしっかりしすぎているのだ。忠兵衛の弱さが見えてこない。あとどことなく所作がせわしない感じも。二人とも松嶋屋型だと思うのだけど、愛之助さんのほうは鴈治郎型ぽかったような?

染五郎@八右衛門は4年前に大阪松竹座一度やっている。私は未見だが評判は良かったらしい。で期待したが、台詞回しが硬すぎ。大阪弁を言うので精一杯という感じでテンポのよさがでない。また金持ちぼんぼん風情はあるけれど意地の悪さがほとんど無し。しかも立ち振る舞いが上品すぎないか?その代わり「八右衛門って忠兵衛とお友達だったんだよな、そういえば」な親しい間柄な距離感は出てたけどね…。