Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

金丸座『第二十八回 四国こんぴら大芝居 第二部』 上場席上手寄りセンター

2012年04月13日 | 歌舞伎
金丸座『第二十八回 四国こんぴら大芝居 第二部』 上場席上手寄りセンター

昨年に続きこんぴら歌舞伎見物をしてまいりました。金丸座は本当に風情があって良い小屋ですね。

『戻駕色相肩』
次郎作@歌六さん、舞踊はほとんど拝見したことがありません。ここまで踊りこんだものを拝見するのは初めてかも。芝居上手な方ですが舞踊もなかなか。大きさや華やかさはないのだけど体の表情が豊かで情景をしっかり描写。

与四郎@錦之助さん、二枚目ぶりが際立つ。所作のひとつひとつを指先まで丁寧にしっかりと。錦之助さんは地道にタイプだと思うけど輪郭がだいぶ太くなってきましたよね~。拵えも前より上手くなってるかな?

禿たより@隼人くん、こんぴらでの隼人くんには実は個人的に思い入れが。7年前にこんぴら歌舞伎で初演された吉右衛門さん主演の『日向嶋景清』で娘役の糸滝を隼人くんが大役を任され11歳で一生懸命に演じていた姿が感動的でした。あれから7年、隼人くん、大きくなったな~って感慨が。しかも同じ女形姿での舞台ですから。細くて骨ばった体格の隼人くんなので女形姿があまり似合わないけど拵えがだいぶ上手くなってきたかな。きちんと体を殺しての丁寧な所作に好感。不器用そうだけど地道に成長してると思う。

『三代目中村又五郎 四代目中村歌昇 襲名披露口上』
こじんまりした金丸座でこじんまりとした口上が味わい深い。播磨屋と萬屋と京屋だけの座組みなので裃の色が芝雀さん以外、全部同じ色で紋が蝶々だらけ(笑)。歌六さんはこんぴら歌舞伎お初の登場なんですね~。

『義経千本桜「川連法眼館の場」』
良かったです。凄く良かった!!金丸座マジック差し引いても相当良い『四の切』だったと思います。

忠信@又五郎さん、本物忠信も狐忠信も両方とも見事だった。気持ちがしっかり伝わってくる。又五郎さんは襲名して芸格あがったと思う。真っ直ぐさが勝ってた芸に緩急がついた感じがします。見た目、若干たぬ~ですけど動きにはキレがあってお客さんを喜ばせていました。そして何より親を思う心持ちが溢れんばかりに出ていて胸を打つ。狐言葉に無理がなく台詞が非常に聴きやすい。又五郎さんの今までのお役のなかでもこのお役、かなり好きです。

静御前@芝雀さん、この役は当たり役ですけど赤姫姿が本当に似合って可愛い。またこの所、可愛さのなかに艶やかさが出てきたような気がします。この場の静御前の行動原理、気持ちを本当に明快に演じてきて存在感がありました。

源義経@吉右衛門さん、さすがの貫禄というか義経としての説得力がお見事。義経の追われる立場としての境遇や哀しみを存在感と巧みな台詞術で表現していく。吉右衛門さんの義経は単なるご馳走と思っていましたがとんでもなかったです。また拵えが似合うかな?って思ってましたけどとても似合ってかっこよかったです。少し痩せられたかしら?

亀井六郎@歌昇くん、のびやかにしっかりとした芝居。体の芯がきちんと安定しているので体の使い方がで綺麗です。声も良く出ていてます。歌昇くんは年齢のわりにすでに個性が強い役者さんですね。お父様の又五郎さんとはだいぶ違う方向に行きそうな感じ。

駿河次郎@隼人くん、こちらの拵えはすっきりとしててお似合い。まだ体の芯が出来てないので所作がなかなか決まりませんが丁寧にこなしておりました。