Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

東京オペラシティ『ヒラリー・ハーン ヴァイオリン・リサイタル』 D席3階LA3

2009年01月15日 | 音楽
東京オペラシティ『ヒラリー・ハーン ヴァイオリン・リサイタル』 D席3階LA3

今年の初鑑賞は歌舞伎ではなくクラシックコンサート。昨夜はオペラシティに『ヒラリー・ハーン ヴァイオリンリサイタル』を聴きに行きました。

ヒラリー・ハーンは2005年に聴いた以来役3年ぶり。相変わらず背筋がピンと伸びたとても美しい演奏スタイル。透明感のある美しい音色はますます磨きがかかっていました。硬質でそれでいて伸びやかな音。またテクニックが凄いです。音にほとんどブレがなくて音のひとつひとつが本当に綺麗に鳴る。超絶技巧も軽々としかも淡々と弾いてしまうのには驚きます。繊細と言っていいような音色なのですが芯がしっかりしているというか弱さはまったくないです。彼女の真っ直ぐに真っ直ぐに伸びる美しい音色に聴いていると背筋がこちらもピンと伸びるような、爽やかな心持になります。音の膨らみという部分でまだまだ若いなあと思いますが、美しい音色を追求しているような真摯な演奏に心打たれます。

今回のプログラムはイザイ、アイヴズとそれほど一般的じゃないものを並べてきました。このなかではイザイが秀逸。特に第6番が素晴らしい演奏でした。バッハを意識した曲想ですのでヒラリー・ハーンに合うのでしょうね。こういう求道的な天上へ向かう音楽、というものが彼女の資質に合うような気がします。アイヴズは初めて聴きましたが映画音楽のような少しポピュラーな雰囲気を持った流れるような曲でした。ハンガリー舞曲集は上手いし聴き応えはあるのですが私の好みからするとちょっと綺麗過ぎるかなあ。好みからするともう少し粘り気が欲しいかも。アンコールではパガニーニのカンタービレが音の美しさが際立って 素晴らしかった。

伴奏者はヴァレンティーナ・リシッツァ。大柄で迫力のある金髪美女でした。演奏は脇に徹していた感じかな。悪くはないと思うのだけど、これぞという演奏はなかったかな。2005年のナタリー・シュウよりはハーンに合っていたと思う。ピアノの聴き所が少ないせいもあり今回の演奏からはどういうタイプのピアニストか把握できませんでした。調べてみるとどうやら超絶技巧の持ち主でわりと自由奔放なタイプらしい。

【曲目】
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第4番 ホ短調 Op.27-4
アイヴズ:ヴァイオリン・ソナタ第4番「キャンプの集いの子供の日」
ブラームス(ヨアヒム編):ハンガリー舞曲集より
アイヴズ:ヴァイオリン・ソナタ第2番
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イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第6番 ホ長調 Op.27-6
イザイ:子供の夢 Op.14
アイヴズ:ヴァイオリン・ソナタ第1番
バルトーク(セーケイ編):ルーマニア民族舞

【アンコール曲】
パガニーニ:カンタービレ
ブラームス:ハンガリー舞曲第5番