Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

新橋演舞場『秀山祭九月大歌舞伎 昼の部』 1等A席1階前方センター

2011年09月10日 | 歌舞伎
新橋演舞場『秀山祭九月大歌舞伎 昼の部』 1等A席1階前方センター

『再春菘種蒔 舌出三番叟』
初日の硬さはなんだったんだ?って感じです。祝祭感と当時の嫁取りの風俗の可笑し味がバランス良く出ていて今回はとても良かったです。

舌出三番叟@染五郎さん、初日の硬さがとれてのびのび大きく踊ってました。染五郎さんの踊りは体幹がしっかりしてるというかほんと身体の芯の部分がブレないんですよね。そのうえで大きくキレよく表現豊かに踊る。とても丁寧に踊り祝祭性を出しつつ、ストーリー性のある舞踊を軽妙に情景描写しておりました。また先輩として歌昇くんをしっかり受け止めてリードしていましたね。

千歳@歌昇くんは丁寧に丁寧に一生懸命。歌昇くんはまだ体幹ができてなくて、腰のすわりがまだまだでブレちゃう。だからまだ踊りが小さめかな。それでも染五郎さんにきちんと食らいつこうと頑張っていました。お父様に似て身体能力は高いし、まるく踊れるタイプにみえるから、これからますます頑張って欲しいですね。

『恋飛脚大和往来「新口村」』
孫右衛門@歌六さんが初日に比べさすがにこなれてきてしっかり見せてきていました。とはいえ、やっぱ藤十郎さん相手の孫右衛門はなかなか難しそうですね。まだ老父になりきれてない感じ。親としての子への情の部分がまだ出し切れてないというか。若さのほうがまだ先に出ちゃってるかな。無骨な厳しさが感じられたのは歌六さんの持ち味かな。若手相手だといい塩梅だったかもしれません。

忠兵衛@藤十郎さん、初日のときに、さすがと思ったたのですが今回は少々老いを感じてしまったかな…。全体の動きが弱く声も小さい。やっぱもう80歳なんだもんなあって感じてしまいました。疲れてきたのかな。それでも窓格子ごしの顔上半身だけで受けの芝居の時はやはり非常に若々しくすばらしかったです。そういえば老いを感じたと同時にまったく似てない親子だと思っていた先代鴈治郎さんにふとした時に似ててビックリしました。

梅川@福助さんは姿形が綺麗でその部分で上手いとは思うけど梅川じゃないなあって感じです。顔の表情が全体的にあだっぽすぎるのと恋ゆえに思いつめた可憐さがあまり無いのですよね。う~ん、表情をもっと工夫してほしいです。

『菅原伝授手習鑑「寺子屋」』 
やはり初日に比べて芝居が密になってて面白くなっていました。全体の個々の役者の感想はそれほど変わらずなんだけどアンサンブルがよくなるだけで芝居は密になる。

松王丸@吉右衛門さんが押し出しがよくなっていました。ああ、そうそうこれこれって感じ。小太郎への想いも明確になってたし。前回、そこが少しばかり薄い感じがしたですよね。気持ちをハラのなかに秘めすぎというか。しかし今回は子を犠牲した親の悲しさが全身からにじみ出ていました。そのうえでやはりどこか物語に奉仕している感じがありました。文楽人形のようなそんな感じというか。まだ感触としてある、というだけなんですが。今後、観ていかなければわかりませんが、もしかしたら吉右衛門さんの演じ方はもう一段深いところに行く可能性も秘めてるのかなと思ったり。しかし個人的にはやはり吉右衛門さんは源蔵のほうが好きです。

源蔵@又五郎さんはつい足の怪我が気になってしまいました。実際目にするとほんとにひどい怪我なんだなあってハラハラしてしまいました。しかし気迫で乗り越えようとされていて小太郎を身替りにすると決めたあたりから首実検のところが相乗効果の気迫で非常によかった。ただ、やはり肩に力が入りすぎな部分でメリハリに若干欠けるかも。ほんと源蔵は難しい役だ。足の怪我のせいで決まりの部分がきれいに決まらないのが無念だろうなあ。初日での形のよさをみてるだけに…。

戸浪@芝雀さん、千代@魁春さんはそれぞれの持ち味での役の作りが深いとこまでいきそうな気配でほんといいです。後半観たいかも。

『勢獅子』
これは打ち出し狂言として楽しくてとってもいいです。皆こなれてきてるのでまとまりもでてきて締まってました。

梅玉さんの踊りがやはり一枚も二枚も上手って感じでした。もっと棟梁っていう押し出しがあればなおよしですがサラリとした雰囲気が持ち味ですからね。にしても上半身の裁き方の上手さには惚れ惚れします。

松緑さんも全体の動きが軽やかになってきたかも。やはり後輩たちをリードしようという気概がみえたような気がします。

松緑さんと歌昇くんの獅子舞がとっても可愛いくなってて楽しかったです!

種之助くん、身体能力は高い感じはしないけどクセのないとっても素直な踊り。うまくいくと伸びるかも。