Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

国立大劇場『江戸宵闇妖鉤爪』 2回目 (3等3階上手寄りセンター)

2008年11月20日 | 歌舞伎
国立大劇場『江戸宵闇妖鉤爪 - 明智小五郎と人間豹-』2回目 (3等3階上手寄りセンター)

8日に1回目を拝見し、上から観たくなってチケットを追加し2回目の観劇です。今日は一番安い3等席。一番後ろ12列目での観劇です。国立はこんな天井桟敷席からでも花道の半分近くは見えるし、本来は舞台の奥の上のほうは見切れるのだけど『江戸宵闇妖鉤爪』は舞台を前のほうに作ってくれてるので見切れ無し。まったくストレスを感じずに済みました。

2度目の乱歩歌舞伎ですが8日に観た時よりだいぶ芝居が締まっててメリハリもついていました。でもやっぱり、良くも悪くも突っ込みどころ満載。おおっ、これだ!という感じではなく、もっと脚本練ってほしいとか、演出をもう少しなんとかとか、場を増やしてもいいなあとか、あれこれ突っ込みたいというか、突っ込まずにはいられない。「ここはもうちょっとなんだけど、惜しい」とこいっぱい。でもそれすらもとっても楽しいし、とっても楽しめました。ぜひ練り直して再演をと思いましたらなんと来年10月に乱歩歌舞伎第二弾が早々に決定とのこと。観客動員数の伸びや評判の良さで松竹と国立劇場と相談して決めたそうです。役者さんやスタッフの方々は嬉しいでしょうね。ぜひシリーズ化していってほしいです。

さて、今回センターの上から拝見したところ、前回(1階前方花外)見切れてしまっていて、ちゃんと全部楽しめなかったんだな、という所がいくつかあって、新しい発見多数。観ててもう筋はわかっているのだけど色んなシーンで思わず「ぎゃ~」とか「うわ~」とか声が出そうになった。お蘭の殺害シーンとか芳之助実は乱学の顔の拵えの早替わりとか、捕まえられた乱学が消えてしまう所とか、百御前がお文に爪を突き立てる所とか。あれこれ、こうだったんだ~という所がいっぱいでした。この芝居センター寄りのほうがより楽しめるかも。

それと一幕目の蕎麦屋の声、新内で語ってるって初めてわかった。こういう使い方もしてたんですね。前回、端からだと口パクが不自然に感じて録音?とか思ってた。違うんだ~。正面からだと新内語りでの蕎麦屋の台詞が不自然に感じない。不思議だ。

今日はとにかく役者さんたちが妙にノリノリでした(笑)8日に観た時も皆さん楽しそうだったけど、今日は役者さんたちのノリ具合がすごくて、観てて、おおやってるやってるって感じでなんだかニマニマしてきちゃいました。段取りがこなれてきて役を楽しめるようになってきたんでしょうね。

乱学@染五郎さん、ワイヤーアクションがかなり上手くなっていました。危なげなくて自在に動いてた。恩田乱学の最初の殺しの最後の見得んところがかなり不気味でした。クワッと歯をむき出しにして、異様な雰囲気でした。個人的にこの不気味さをもう少し引っ張っていってほしかったかな。後半脚本のせいもあるのだけど、人間味がありすぎるというか。なんだか可愛らしく見えてきちゃう。拗ねまくってる若者な雰囲気というか。半獣人としての切なさや悪の華の雰囲気はあるのですが、描写する部分がちょっと少なすぎましたね。個人的に衣装が着ぐるみぽいのも少々不満かな。もっと和テイストのほうが私は好きかなあ。そういう意味でラストの宙乗りの衣装は文句なく素敵。それにしても染五郎さんの宙乗りの姿勢は非常に綺麗ですし大きく見える。贔屓目で花道に立たせたら日本一と思っていますが宙乗りでも大きさと美しさを存分に見せ付けてくれたような気がします。はい、とっても贔屓目ですが。

芳之助@染五郎さんのほうはもう似合いすぎ。自分で二枚目ってどうぞ言っちゃて、という感じです。お甲との待ち合わせのそわそわ加減がよくなっておりました。小鼓のシーン、最初の音がやたら良かったですが後半少々弱くなったかな。。掛け声は傳左衛門さんにソックリでした。お稽古してもらったんでしょう。それにしても物狂いのホケホケ加減が超可愛いです。踊りも色ぽいし。どうせなら芳之助が死ぬシーンまで描写してほしかったな。もっと哀れさがでたと思うんだけど。

明智小五郎@幸四郎さんは存在感がやはり抜群。また前回、染五郎さんに少々押され気味だった台詞がかなり良くてたっぷり聞かせてきました。やっぱこの人すごいわ。今日、台詞のイチイチに拍手もらっていましたよ。なんというか聞かせ方が上手いんだよなあ。溜めとか間とかがね、他の役者さんとちょっと違う。思わずおおって思わせちゃうんだよね。でもちょっと重厚すぎな雰囲気も。飄々とした部分も見せていただけるとと思ったり。しかし、なぜに名乗りを芳之助にまかせちゃったの~。自分で名乗るのがいいんじゃん!いかにもって感じで好きだったんだけどなあ。

春猿さんはやはりお文さんが素敵。小五郎@幸四郎さんとのやりとりがますます夫婦な雰囲気でとってもよかったです。旦那のこと心から愛していてそのために命までも投げ出す覚悟がきっぱりとした表情に表れていました。春猿さん、今回のこのお役が本当に似合います。お蘭さんもだいぶいい感じで色気も出てきたし、芳之助@染五郎さんとの会話もいかにも恋人同士という空気がありました。お甲さんに関してはもう一歩かな。前回よりはだいぶいいんですが、なんだろな、もっと可愛げな色気が欲しいかなあ。

鐵之助さんの百御前がもうノリノリでした~。不気味でいやらしくて、とことん非情なのだけど百御前なりのゆがんだ愛情があって。ここまでノッて演じてくださると人物像に深みがでますよね。楽しいという言い方はヘンかもしれないけど、観ててニンマリしてしまいました。

は小林新八@高麗蔵さん、目明かし恒吉@錦吾さんコンビは味があっていい。江戸の風情が立ち上がります。ぜひ明智ファミリーとして第二弾も同じ役をしていただきたいですね。お文@春猿さんと林太郎@錦政くんもこのまま続行していただきたいな。

お蘭の弟子、お英@広太郎さん、お京@笑野さんコンビもほのぼのしてよかったなあ。