Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

新橋演舞場『八月花形歌舞伎 第三部』 3等B席右袖

2010年08月18日 | 歌舞伎
新橋演舞場『八月花形歌舞伎 第三部』 3等B席右袖

『通し狂言 東海道四谷怪談』
  「序幕 浅草観世音額堂の場より大詰 仇討の場まで」

花形らしく本筋が見えやすい芝居でした。

お岩/小仏小平/佐藤与茂七@勘太郎さんが出色の出来。勘太郎さんのための芝居になっていた感じがしました。勘三郎さん写しだけど、勘太郎さんの硬質さが活きて雰囲気は少し違う。 また三役の切り替えがかなり上手い。これで芝居の本筋をかなりわかりやすくした。

お岩さまは、武士の娘らしさ、凛とした品位が立っているお岩さまです。浪宅でのひとつひとつが丁寧でしっかり見せてくる。見事だと思う。 惜しむらくは髪漉きあたりから、ちょっと一本調子かな~。恨みがまだまだ若いねえって感じです。勘三郎さんのお岩さまだと、恨みのなかに哀れさ切なさが含まれるんだけど、さすがにそこまではいかなかったかな。また「恨み晴らさで」の台詞がちょっと男ぽい感じになってしまってたのが残念。でも全体的に凛としたプライドのなかに女の哀れさを漂わせ、とても良いお岩さまでした。今後、お父様同様に当たり役にしていくことでしょう。

宅悦@市蔵さん、ちょっと生真面目すぎかなと思いつつも初役にしてはかなり良かったんではないかと。もう少しクセのある味わいが欲しいところではありますが気弱なところ、流されてしまう性格などがよく出ていました。個人的に宅悦@市蔵さんを拝見して、亀蔵さんが宅悦をやっても面白そうと思いました。

お袖@七之助さんは可愛かったです。世間知らずゆえの愚かさがあるのが面白かったです。まだちょっとお袖の女房としての佇まいというか人物像の空気感は薄いのですが七之助さんは女形として安定感でてきたように思います。

茶屋おまつ@歌江さんとおいろ@小山三さんの存在感は格別。ただそこにいるだけで空気が濃くなる。そういえば小山三さんて、勘太郎くんのこと勘九郎って言い間違ってました(笑) 早く襲名してほしいのかな。

直助@獅童さん、役には非常に合ってる。でも第二部の『暗闇の丑松』の祐次同様に台詞がうわっついてしまっている…。動きも相変わらず腰が決まらずひょこひょこしてしまう。獅童さんは舞踊をもう少し稽古したほうがいいと思う。所作のひとつひとつが色々と甘すぎます。台詞はうわっついてしまうけど、ストレートでクセがあるわけではないのでこなしていけば改善していけるだろうと思う。

他の配役、伊右衛門@海老蔵さん、お梅@新悟くん、舞台番@猿弥さん、喜兵衛@家橘さん。