三酔人の独り言

ルポライター・星徹のブログです。歴史認識と国内政治に関わる問題を中心に。他のテーマについても。

日本は米国と心中するのか?

2023-12-30 12:31:30 | 外交・安全保障
 イスラエルは2023.10.7にイスラム組織ハマスなどから襲撃を受けて以降、「ハマス殲滅」「人質の奪還」などを掲げ、ガザ地区へ無差別的な〔*子どもや女性を含む一般人の犠牲を前提にした〕軍事攻撃を続けている。そのため、戦闘開始以降にガザ地区で21,320人が殺害されたという(*2023.12.28、ガザ保健当局の発表/瓦礫の下などに多数の行方不明者も)。イスラエルによるこうした軍事攻撃は、明らかに国際法違反の集団懲罰であり、ジェノサイド(集団殺害)だ。

 イスラエルの蛮行に対し、世界中から批判の声が巻き起こっている。だが、米国はイスラエルを「支持する」という基本姿勢を変えず、国連安保理でも、国連総会でも、「即時の人道的停戦」などを求める決議案に反対し続けている。「しっぽ(イスラエル)が犬(米国)を振っている」とよく言われるが、「どっちが本体で、どっちがしっぽなのか分からない」「混然一体となっている」のが実態ではないか。

 当ブログ2023.12.10「パレスチナの子どもたちを殺す「米国の正義」」参照

 米国は、国連などで「イスラエルの代理人」的役割を果たすだけでなく、イスラエルに対し武器・弾薬やそのための資金援助の大盤振る舞いも続けている。これら軍事支援物資は、ガザ地区のパレスチナ人を虐殺するために使用される〔*ヨルダン川西岸地区などのパレスチナ人への弾圧にも使用される〕。

 当ブログ2023.12.11「米国は「国家テロ」の共犯であり続けるのか」参照

 米政府はイスラエルに対し、「もう少し抑制的にやれ」〔*もっと上手くやれ?〕的な〝申し入れ〟をしているようだが、結局、米国はジェノサイドを黙認し、イスラエルの共犯国になっている。

 2023.12.10の午後、日本の国会議事堂正門前で行なわれた抗議集会「パレスチナに平和を! 日本政府は停戦を実現させろ!」で、千葉大学教授の栗田禎子(よしこ)さん(中東現代史)は次のように訴えた〔*星も取材〕。

「パレスチナ問題というのは、対等なもの同士の争いではなく、占領者と被占領者の関係だ。パレスチナの特にガザ地区で行なわれていることは、明らかにジェノサイド(集団殺害)だ。『現代のホロコースト』と言ってもいいと思う」

「アメリカにとって中東での一番の同盟国はイスラエルだが、東アジアでアメリカを支えているのは日本だ」

「日本の歴代政府は、外交とか軍事・安保はアメリカに揃えておけば間違いない、ということ(方針)だった。だが今、ガザで(イスラエル軍による)ジェノサイドが起き、それを放任し、黙認し、放置しているアメリカは、国際的に孤立している。こう考えると、日本もアメリカと同じ???〔*聞き取り不能〕じゃ、もうヤバいんじゃないかと感じる。そろそろ路線の切り替えを考える必要がある」

 栗田さんの「ヤバい」という発言を私なりに解釈すると、「台湾有事などの危険性を煽られ、『米国の(捨て)駒』として日本が利用される危険性もある」ということではないか、と思う。

 また、これ以降は私の考えだが、日本が外された形での「米中の手打ち」〔*「縄張り」についての和解・協定〕などが行なわれ、尖閣諸島を含む南西諸島での日本の安全保障が危機に陥る可能性だって、十分にありうる〔*1971-72年の「米中和解の動き」を思い出す必要がある〕。

 当ブログ2015.5.30「植木千可子『平和のための戦争論』から考える」で、私は以下のように述べた。

〈もし米中両国がこのように「縄張り協定」のような形に収斂して行けば、日本はどうなるのか? 尖閣諸島などの領有権は、どうなるのか?

 米国の「黙認」の下、中国が望む方向で事が進んで行く可能性が高まるのではないか。米国にとって、日本より中国の方が総合的に「魅力的」に映るのであれば、日本の立場は厳しいものとなるだろう。

 だから、日本の外交・安全保障が米国一辺倒になり、米国の安保政策に振り回されれば、大きなリスクをしょい込むことになる、と思うのだ。日本は、上記のような可能性を含めてあらゆる場面に対応できるよう、常にリスクヘッジ(*危険や不確実性の回避)を念頭に置き、より合理的でバランスの取れた外交・安全保障政策を追求していく必要がある。〉

 現在でも、この私の考えは変わらない〔*日本は英国やオーストラリアなどと「防衛」(実態は軍事)協力を徐々に進めているが、こうした動きは「日米安保体制の一環」であり、基本構造は変わらない〕。というか、この文章を書いた約1年半後(2017年1月)に米国でトランプ氏が大統領に就任し、「何をしでかすか分からない」状況がそれから4年間も続いた。

 2024年11月に予定される米大統領選挙で「この人」がもし返り咲けば、対中国で強硬路線に出るかもしれないし、真逆に「deal(取引)で日本を外した形での米中縄張り協定」のような事態に至るかもしれない。全く予想がつかないのだ。また、「この人」以外が米大統領に就任したとしても、現在の米国を「完全に信用」することはますますできなくなっている。

 米国は今、イスラエルを支持・支援し続けることで、世界中の国々そして人々からの信頼・信用を大きく損なっている。米国の言う「正義」の欺瞞性が明確になり、ダブルスタンダードの構図が白日の下にさらされている。こうしたことは以前から分かっていただろうが、米国の相対的な国力がますます低下する中で、世界中の人々の印象というか『見る目』が大きく変わった、米国の威信が崩れ去った、ということだ。

 私たちは思考停止に陥ることなく、現実を見すえつつあらゆる可能性を考えて議論し、日本の進むべき方向性を探る必要がある、と思うのだ。
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