三酔人の独り言

ルポライター・星徹のブログです。歴史認識と国内政治に関わる問題を中心に。他のテーマについても。

日米軍事「一体化」とイスラエル擁護

2024-05-01 07:48:38 | 外交・安全保障
 私は当ブログでこれまで、日本が米国を筆頭とする他のG7諸国と歩調を揃える形でイスラエル擁護の姿勢を強めていること〔A〕に対し、批判の言を展開してきた。以下参照。

当ブログ2024.1.30「国際司法裁判所の「対イスラエル」命令に反する日本など」
同2024.3.31「日本の中東外交 「いやな感じ」と不合理」


 他方で、一見して別のテーマのように見えるが、ここ十数年来の「日米同盟一筋(一本足打法)」〔B〕の危うさも指摘してきた。以下参照。

当ブログ2024.4.25「自衛隊と米軍 指揮統制「一体化」への道?」
同2024.4.27「立憲民主主義を無視した日米同盟一筋」


 このAとBの関係性については、当ブログ2024.4.20「「朝日」社説から考える「日本を含むG7の不正義」」の最後で、私は以下のとおり述べた。

〈岸田政権は結局、「何があってもアメリカさんと運命を共にします」「だから、日本に何かあったら助けてくださいね」という方針の下で突き進んでいる、ということではないか。それに伴い、親米諸国とも安全保障面で共同歩調を採る、と。まさに「一本足打法」だ。

 日本は少し前〔*2012年12月に始まる第2次安倍政権より前〕まで、米国とは友好関係を維持しつつも、場合によっては米同調の「一本足打法」ではない是々非々の外交方針〔*特に中東外交〕を採ってきたはずだ。その基本は、「親米」という限界を踏まえながらも、国際社会の中で「社会正義の実現」を追求することで日本の国際的地位を高めていく、ということではなかったか。

 だが、昨今の日本政府の姿勢は、国会での十分な議論も国民の間での議論もないままに、危うい方向に急激に舵を切っているのではないか。もしそうした方向に進みたいというのなら、憲法との整合性を含めて徹底した議論が必要なはずだ。〉

 以下、このことに関連してもう少し述べる。

 今年4月10日に行なわれた日米首脳会談に基づく日米首脳共同声明(*原文は英文)の中で、イスラエル・パレスチナ問題について次のように述べられている〔*日本・外務省HPより仮訳〕。

〈我々は、昨年10月7日のハマス等によるテロ攻撃を改めて断固として非難し、国際法に従って自国及び自国民を守るイスラエルの権利を改めて確認する。同時に、我々はガザ地区の危機的な人道状況に深い懸念を表明する。

 我々は、ハマスが拘束している全ての人質の解放を確保することが不可欠であることを確認し、人質解放の取引がガザにおける即時かつ持続的な停戦をもたらすことを強調する。

 我々は、ハマスが拘束している人質を解放し、支援を必要としているパレスチナ人に不可欠な人道支援を届けることを可能にする取引の一環として、少なくとも6週間にわたり、ガザにおける即時かつ持続的な停戦を実現することが不可欠であることを確認する。

 我々は、ガザ全域で命を救う人道支援の提供を大幅に増やす緊急の必要性と、地域的なエスカレーションを防ぐ極めて重要な必要性を強調する。

 我々は、文民の保護に関するものを含む、適用される国際人道法等の国際法を遵守することの重要性を改めて確認する。

 我々は、イスラエル人とパレスチナ人が公正で、永続的で、安全な平和の下で暮らすことを可能にする二国家解決の一環として、イスラエルの安全が保障された、独立したパレスチナ国家に引き続きコミットしている。〉

 イスラエル・パレスチナ問題に於ける上記の基本姿勢は、米バイデン政権の基本姿勢とほぼ一致する。

「昨年10月7日のハマス等によるテロ攻撃を改めて断固として非難」する一方で、イスラエル側犠牲者の30倍以上のガザ地区内パレスチナ人〔*その約7割は女性や子ども〕を無差別に近い形で虐殺し続けるイスラエルに対しては、批判的な言説を全く述べていない。それどころか、「国際法に従って」と留保を付けながらも〔*日本側の要望を少しだけ加えた?〕、「自国及び自国民を守るイスラエルの権利を改めて確認する」とまで述べている。

 また、「我々は、文民の保護に関するものを含む、適用される国際人道法等の国際法を遵守することの重要性を改めて確認する」と述べるが〔*これも日本側の要望?〕、イスラエルも米国も「イスラエルは国際法を遵守している」と主張しているのだから、米国にとってもイスラエルにとっても「痛くも痒くもない」言説だろう。

 要するに、日本政府は、米政府のイスラエル・パレスチナ政策のほぼ全てを受け入れているのだ。

 結局、日本は上記B〔*安全保障での米への「抱き付き」〕の政策を採るがために、米国から「見捨てられる」ことを恐れてA〔*米国を筆頭とする他のG7諸国と歩調を合わせたイスラエル擁護〕の政策を採ることに繋がっているのだ。

 だが、これまで述べてきたように、単体としてのAの政策に於いても〔*負の面として、不正義かつダブルスタンダードによる国際的地位の低下〕、Bの政策に於いても〔*負の面として、「巻き込まれ」のリスク大〕、日本の国民益にとって大きくマイナスに働くこと必定だ。さらに「A+B」の相乗効果によって、日本はさらに大きなマイナスを背負い込むことになるだろう。

 私たちはこうした諸事案・諸要素を総合的かつ理性的に考え、日本の採るべき方向性を決めていく必要がある、と思うのだ。
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