三酔人の独り言

ルポライター・星徹のブログです。歴史認識と国内政治に関わる問題を中心に。他のテーマについても。

関東大震災 朝鮮人虐殺の現場 横浜を行く

2017-11-14 12:19:50 | 歴史認識・社会論
 社会民主党の機関紙「社会新報」2017.9.27号に寄稿した星徹「関東大震災 もう一つの歴史 朝鮮人虐殺の現場 横浜を行く」を、編集部の許可を得て以下に転載する。
 
*無断転載禁止

【本文】

 神奈川県横浜市西区の市営久保山墓地に直径5メートルほどの大きな土饅頭(どまんじゅう)がある。「横浜市大震災横死者合葬之墓」だ。

 1923年に発生した関東大震災(メモ参照)によって、横浜市内で約2万6000人の死者・行方不明者が出た。そのうち、引き取り手のない約3300遺体がここに埋葬された。

 合葬墓の手前の木陰に隠れるように「関東大震災殉難朝鮮人慰霊之碑」が佇(たたず)んでいる。碑の裏には「少年の日に目撃した一市民建之」とだけ記される。石橋大司さん(故人)が市の許可を得て74年に建てたものだ。

 石橋さんは大震災当時、市内在住の小学2年生。一家で避難する途中の9月3日、久保山の坂の電信柱に後ろ手に縛られ血まみれになった朝鮮人の死体を目撃した。この時のことが忘れられず、50年後に私財を投げうち、碑を建立した(「朝日新聞」1993年8月31日付参照)。

朝鮮人慰霊碑の意味

 今年9月1日の午後、くもり空の下、歴史を学ぶ市民の会・神奈川(北宏一朗代表)が主催する「関東大震災・横浜フィールドワーク」に参加した約60人は、94年前の歴史を思い、合葬墓と碑に手を合わせた。

 案内役を務める横浜市立中学校元社会科教員の後藤周(あまね)さん(67)は、「朝鮮人慰霊碑がなぜここにあるのか、子どもたちに伝えていかなければならない」と参加者に訴えた。

 横浜市教育委員会は、2012年度版までの市立中学生用副読本にこの碑の写真を載せていた。しかし、1人の市議の批判をきっかけに、全冊回収・溶解処分となった。そして、13年度改訂版には碑の写真は載らず、朝鮮人らへの「迫害と虐殺」の表現は弱められ、15年度には各校50冊の限定配布となった。

 新副読本に変更されることになり、17年度版では当初、朝鮮人殺害に関する記述は載らない予定だった。しかし、市民らの抗議により、不十分ながら記述されることになった。だが、碑の写真はないままだ。

 関東大震災時に国内で朝鮮人や中国人など多数が一般民衆や官憲・軍によって虐殺されたことは、多くの資料や証言に基づく研究で明らかにされている。

歴史と向き合う必要

 内閣府の中央防災会議が08年3月に発表した「1923関東大震災報告書【第2編】」は、殺傷の対象の多くが朝鮮人で、中国人や内地人も少なからず被害にあった、と述べている。そして、殺傷事件による犠牲者数を「震災による死者数の1~数パーセント」と推計した。つまり、「1000~数千人」ということだ。

 参加者一行は、路線バスなどで阪東橋に移動。後藤さんの説明を受けながら、震災当時多くの人が住んでいた横浜橋商店街周辺を通り、三吉橋まで歩いた。橋の下を流れるのは中村川だ。

 大地震によって引き起こされた火災は、街の中心部からこの川を越えて広がった。人々は橋を渡り、丘の上を目指した。

 当時、三吉橋から下流の「土方橋」や車橋にかけて、川の両側に木賃宿(きちんやど)と呼ばれる簡易宿泊所が建ち並んでいた。ここに多くの朝鮮人などが住み、重労働に駆り出された。

 9月1日の夜から、丘の上に避難した人々の間で、朝鮮人が悪事を働いているとの流言が広まり始めた。

 後藤さんは「こういった流言を警察など治安当局が追認し、民衆による虐殺に手を貸してしまった」と参加者に説明する。

 三吉橋ちかくの中村町に住んでいた男性は、当時の状況を次のように記している(『潮』1971年9月号)。

「電信柱に針金でしばりつけ、なぐるける、トビで頭に穴をあける、竹ヤリで突く、とにかくメチャクチャでした。何人殺(や)ったかということが、公然と人々の口にのぼり(後略)」

 後藤さんは、「私たちはこの歴史を知り、二度と繰り返してはならない歴史として伝えていかなければなりません」と訴えた。

  【ルポライター・星徹】

【メモ=関東大震災】
 1923年9月1日の正午少し前、神奈川県の相模湾沖を震源とするマグニチュード7.9の大地震が発生した。この大地震によって引き起こされた災害のことをいう。神奈川県・東京都の大部分と千葉県南部は、震度6~7。家屋倒壊や火災・津波などにより、死者・行方不明者は推計で約10万5000人。 

*下記の当ブログ関連記事も参照されたい。
「関東大震災での加害を忘れるな」(2014.9.1)

「関東大震災時の朝鮮人虐殺の歴史から学ぶ」(2013.10.8)
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