しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

串刺し教授 筒井康隆著 新潮文庫

2014-08-11 | 日本SF
時をかける少女」を読んだ時にいろいろ調べていたら、本書に映画「時をかける少女」のパロディである「シナリオ 時をかける少女」が収載されていることを知りブックオフで探していて今年6月にやっと見つけて購入。

今現在は絶版のようです。

アインシュタイン交点」でちょっと頭が疲れていたので箸休め的なつもりで手に取りました。

内容(裏表紙記載)
崖から転落して鉄柵の先端に串刺しにされた大学教授を目撃したガソリン・スタンドのサーヴィスマンが最初にしたことは? 写真週刊誌時代の未来を予見した作品として「東海道戦争」などと並ぶ表題作。やくざが女学生の言葉で会話し、女学生が中年紳士の言葉で会話し、中年紳士が主婦の言葉で・・・・・・会話する「言葉と<ずれ>」。人間がきつねをだます奇怪至極の「きつねのお浜」など全17編。

一言で言えば筒井康隆が「虚人たち」や「虚航船団」を書いていた頃のメタフィクション「実験」的な作品群という感じです。
それなりに頭は疲れました。

収録されている作品が1979年-1984年発表で、「虚人たち」が1981年、「虚航船団」が1984年発刊ですから時期的に丁度重なっています。
(掲載誌にも「純文学系」がけっこう多い)
筒井氏の頭の中がメタフィクションに占領されていた時期なんでしょうねぇ。

表題作の「串刺し教授」なども普通に書けばいいような気がするのですが…メタフィクション的に書いています。
実験的作品群を破綻なく描く才能はすごいとは思いましたが….。
正直読んで面白いかというと「う~ん」でした。

他の作品もかなり実験的な作品が多く、形式を楽しむにはいいとは思いますが…。

ただしお目当ての「シナリオ 時をかける少女」は個人的にはかなりツボにはまりました。
知世ちゃん最後は大変なことに....。(笑)
これを読めただけで本書読めたかいがありました。

以下各編簡単に紹介と感想など。

○旦那さま留守 1979年2月 新潮現代文学
 お手伝いロボットたちが主人夫婦のマネをして楽しんで…。

 ロボットと主人夫婦のそれぞれ性描写の露骨さがなんともおかしい作品でした。
 
○日本古代SF考1981年12月小説新潮
 未来からSF作家の集まる文壇スナックを俯瞰したらというお話。

 筒井氏の得意(?)分野であるSF作家内輪ネタ、自虐的です。
 当時の雰因気を楽しむにはいいんでしょうけれどもねぇ。

○通過儀礼1982年1月15日読売新聞
 成人式で晴れ着を着ると云々。
 
 晴れ着と性が云々、純文学的表現のパロディ?、私には理解できなかったです。

○句点と読点1982年12月26日週刊小説
 「、」と「。」のとても短いお話。

 言葉遊びとしては面白いです。
 
○東京幻視1982年11月新潮
 東京に憧れを抱いていた地主の息子は、子供の頃東京に行けず、終戦後に行くと…。

 素直に受け取れば「東京」という存在の変化と成長による人間の感覚の変化を情感交え描いているんでしょうが....。
 裏読みすると「純文学風に書いてみました」というようにも取れるような…。
 
○言葉と<ずれ>1983年2月小説現代
 内容紹介で紹介されていたお話。

 実験としてはおもしろいと思いますが「だからどうした?」という気もしました。 

○きつねのお浜1983年4月小説新潮
 ざっくりいえばきつねがかわいそうな話、もしくは酷い和尚のお話。
(要約するのは難しい….)

 落語的世界を描きたかったんでしょうかねぇ?
 でもこのいいかげんな感じは初期の筒井作品っぽくて好きです。
 
○点景論1983年6月海
 尾行される男と、尾行する男のお話。

 「虚人たち」同様一人称で語る「尾行される男」は登場人物であることを自覚しています。
 「虚人たち」に向けた実験的作品でしょうか?、観覧車でのパニック感は面白かったです。
 
○追い討ちされた日1983年6月中央公論
 江戸の町を官軍から逃げている旗本が現代の東京に来てしまうというお話。

 なにがどうというより、こういう場面を描きたかっただけ?というように感じました。

○シナリオ・時をかける少女1983年6月SFアドベンチャー
 原田知世主演の「時をかける少女」のパロディ。

 いかにも筒井作品っぽくない映画に対しての照れ隠しなのかどうかわかりませんが、思いっきりちゃかしています。
 原作者じゃなければ許されないだろうなーという作品。

○退場させられた男1984年4月別冊文藝春秋
 退場させられた「主人公」は次は目茶苦茶をやる小説家を演ずることに。

 「目茶苦茶って難しいのよね」というセリフは作者本人にあてた言葉でしょうか?
 メタフィクション練習作という感じの作品。

○春1984年4月海
 お経のような作品。
 声に出して読んでみるとリズムがあるのかもしれないですね。
 実験的作品…でしょうか?

○妻四態1984年4月小説現代
 普通の人と思って結婚した妻は実は...。

 ぶっ飛んだ「妻」と、日常的感慨をもつ「夫」とのギャップを楽しむ作品。
 
○風1984年5月小説現代
 老夫婦の家の扉を叩くように吹き付ける風は….。

 人情もの?を目指しているんでしょうか?

○座右の駅1984年5月小説現代
 作家の机の右には線路があり電車が走ってきて、観光に来た小さい人間たちが…。

 メタフィクション実験作という感じでしょうか?
 
○遥かなるサテライト郡1984年7月小説新潮
 月、タイタン等さまざまな衛星の飲み屋でいろいろな女性とつきあっていた主人公は最後は地球で過ごすしかなくなり…。

 いかにもSF短編然とした作品。
 
○串刺し教授1984年1月新潮
 転落して串刺しになった教授の目撃者の写真を掲載した雑誌の編集者は…。

 上記の主題・設定で素直に話が展開されるわけではなく、メタフィクション的(?)に時間や場所が捻じ曲げられて話が展開されます。
 そういう意味では実験的短編でしょうか。

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