しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

T型フォード殺人事件 広瀬正著を読んで+全集感想

2011-01-18 | 日本SF
これで広瀬正全集を先月からで、全巻読破(エロスはこのブログで感想を書いていませんが...。)

このT型フォード殺人事件は初めて読んだのも一番遅く確か社会人になってから、10年くらい前か?

中、高生の頃は、広瀬正=SF作家のイメージが強くなんとなくこの本を買おうという気が起きず、ブックオフで見つけたこの本を購入したときには「これで広瀬正全集が全巻そろった」という感慨がわいた記憶があります。

標題作は最初に読んだ時は推理小説として「骨組みだけの荒削りな作品」という感想でしたが、今回読み返してみた感じでは、「なかなかいける」という感想に変わりました。
(ほとんど内容を覚えていないのが不思議、社会人になってからの記憶は残りにくいのと1回しか読んでいないためか?)

作中の戦前の上流階級の生活を描くところや、ちょっとしたすれ違いが大きな人生のズレにつながっていくところ、それによる登場人物の悲喜こもごもなどこの作家のよいところが出やすい要素が多く、描写も丁寧とはいえないかもしれませんが、書き過ぎず情感が伝わってきました。
タイムマシン小説を描く時の論理性なども推理小説につながるものがあるのでしょうか?、この作家にもっと推理小説を書かせたらすごい作品ができたのでは?と思わせる作品です。
(裏を返せばこの作品は「すごい」まではいっていないという話ですが・・・。)

その他、「殺そうとした」は作者の初出作品とのことですがここでも推理小説作家としての才能の片鱗が見られます。
SFにいかずこの方向に進んでいたらどうなっていたか?
などというのは、まさににこの作家にふさわしい話ですね。
作品としては、初出だけにちょっと単調かな?という感想。

「立体交差」は最晩年の生前未発表の作品とのこと、なぜかこの作品の内容だけは妙に覚えていた。(どうしてだろう?)
ただし結末部分は記憶と違う・・・。(前に読んだのは違う過去だったりして・・、などというのは全集を読破するとそういう感想がでてきたりします。)
作者得意のタイムマシンものなのですが、結末になにやら「いさぎよさ」というか決意めいたものを感じました。

全集を読破してみての感想は、広瀬正は当時のSFのレベルからすれば傑作ぞろいの作家である。
ただし現代の読者が読んで「本当におもしろい」と感じるのは「マイナス・ゼロ」くらいかなぁという感想。
個人的には「エロス」もおやじの郷愁を誘う味わいがあっていいなぁというところ、あとは「タイムマシンのつくり方」収載の前半の作品も傑作かなぁという感想。

他は小松左京の多くの長編と同様今日的な評価でみるとキビシイかもしれませんねぇという感想。
(私がそんなに偉いわけではないのですがあくまで個人的感想)

でもまた10年後くらいに全集を読み返しそうな気がします。
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