鑿壁偸光 漢字検定一級抔

since 2006.6.11(漢検1級受験日) by 白魚一寸

【21】 麌(グ・ゴ)

2009年05月12日 | ×の漢字の音熟語を学習する[高]

【音熟語】 「捷径」「大漢和」

麀麌(ユウグ) 牝鹿と牡鹿 
麌麌(ゴゴ)群がり集まるさま (出典 「詩経 小雅 吉日」) 「捷径」には、

★「グ」「ゴ」の読み分けに注意 

なんて書いてあります。しかし、麀は、配当外ですから、麀麌は絶対出題されません。麌麌(ゴゴ)だけ憶えておけばいいでしょう。昔、「捷径」を使っていた頃は、こんなところまで憶えられないよなと思いながら学習していました。「辞典」が発行されて、1級学習はかなり楽になったと思います。

 ただ、「捷径」には、他にも結構配当外の漢字も載っており、当時の編集者の意気込みを感じます。麌は牡鹿という意味ですから、序でに、配当外の麀=牝鹿 も対で憶えましょうという感じです。

 「捷径」(第3刷)が発行されたのは、平成9年4月で、もう12年も前です。この編集者の名前は、緒言に明記されており、「必携」の旧版と同じ人達です。「必携」が平成13年4月に新版になったとき、序文にあるとおり、少し編集者の異動がありましたが、同じ人も残っています。1級の参考書は、「辞典」や「必携」が発売された平成13年からもう8年も何も出ていないのですから、この辺りで、そろそろ出して欲しいなと思っています。

【呉の音符字】
常用では、虞だけがグで、呉・娯・誤はゴです。1級配当は、麌以外は、茣・蜈の二つで、音読みは孰れもゴ。

茣の見出し語については、 【茣蓙】=蓙(国字)ですから、【着茣蓙】も着蓙でいいでしょう。茣は書けなくてもよい漢字です。

また、蜈については、見出し語は、熟字訓の【蜈蚣(むかで)】4-1Y一つですから、 これも書けなくてもいいでしょう。


【20】禺(グ)

2009年05月02日 | ×の漢字の音熟語を学習する[高]

【音熟語】禺谷(グコク)

【意味】日の入るところ「大漢和」
 禺に、隅(すみ)という意味があります。日没するところは、隅っこの谷だから、禺谷というのでしょう。

【用例】夸父(コホorカホ)力を量らず、日景を追わんと欲し、之に禺谷にて逮ぶ(「山海経 大荒北経」)

 「山海経 中国古代の神話世界」(高馬三良訳 平凡社ライブラリー)も積ん読本です。白文や書き下し文が載っておらず、訳文だけなのが残念ですが、挿画を見ているだけでも、不思議な世界へ引き込まれそうです。配当外の漢字の宝庫なので、いつか読んでみたいとは思うのですが、こういう世界に入り込むと戻って来れなくなるような気がするので、先延ばしにしておきます。

 尚、「辞典」には、グウの音も載っていますが、「大漢和」には、グウの音も載っておらず、グウと読む音熟語もありませんので、無視します。


【禺の音符字】

「音符字典」では、二音家族で、グウかグです。

×禺 グ
J  おろ(か)
J偶 グウ  たまたま9-2Y
J グウ [グ] あ(う) (たまたま) 
 「辞典」の見出し語で、遇をグと読むのは、見つけた範囲では【値遇(チグウ・チグ)】だけです。ただ、グウと読んでもいいのですから、遇はグウと読むと憶えておけばいいでしょう。「ちぐ」で書き取りに出ると困りますが・・。

J グウ (グ) すみ
J1  グウ (グ)
 [グウ](グ)
(2) グウ たぐい (つれあい)
(2)藕 グウ はす

(グ)としたのは、「辞典」には音が載っていても、今のところ「辞典」では、グと読む音熟語を見つけていないものです。取り敢えずは、出題可能性の低い×△の漢字と(グ)を無視して、愚はグ、他は全部グウと読むと憶えておけばいいでしょう。


【19】 朏(ヒ)

2009年04月29日 | ×の漢字の音熟語を学習する[高]

 配当外の漢字詘を学習していたら、朏が出てきました。

朏は、月が出たという会意文字です。

惟れ丙午は、三日戊申に越(およ)んで・・(「周書 召誥」)

の用例が最も古いように思います。三日月の意味とされています。

 月は太陽と同じく、東から出て西に沈みますが、月齢零の新月の頃は太陽と同じ頃に出て同じ頃沈みますので、夜は月がありません。そして、月は少しずつ大きくなり、また、月の出は、日の出よりも毎日、少しずつ遅れるので、日の入りよりも、月の入りが遅くなり、日没後、西の空に月が見えるようになります。月齢1や月齢2くらいでは殆ど見えず月齢3日目くらいでようやく見えるようになるようです。これが三日月です。

 朏は、数日間月がみえなかったのに、やっと西の空に月が出たという古代人の歓びを表しているような気がします。従って、朏は、夕暮れから夜にかけて西の空にしか見えないものです。


ところが、 「淮南子 天文訓」には、

日出於暘谷,浴于咸池,拂於扶桑,是謂晨明。登於扶桑,爰始將行,是謂胐明(ヒメイ)。至於曲阿,是謂旦明。至於曾泉,是謂蚤食。至於桑野,是謂晏食

とあります。相変わらず、書き下しはよくわかりませんが、夜明けは、晨明→胐明→旦明→蚤食→晏食の順に、明るくなるようです。

「大漢和」の胐明の説明には、

天の将に明けんとしてうすぐらい時、夜明け方

とあります。「辞典」にも胐の意味として「明け方のうすぐらいさま」とあります。

 しかし、夜明けには三日月は絶対出ていないのに、どうして、胐明が夜明け方の意味になるのかよくわかりません。 三日月の出ている黄昏時と、黎明時は、どちらも薄暗いから、区別をしなくなったのでしょうか。それとも、日の出の直前に出てくる月は、月齢26~29の逆三日月型をしていますので、これも胐と称したのでしょうか。

 なお、お月さんのことについては、こよみのページ等を参考に致しました。


【16】××苻(フ)標準解答にあり 【17】××坿(フ) 【18】××柎(フ)

2009年04月23日 | ×の漢字の音熟語を学習する[高]

(21.5.6 表題に××の符号追加)

【16】苻(フ)

【音熟語】苻嫗(フウ) 「大漢和」

【意味】地上に万物が生育すること。

【用例】今夫積惠重厚,累愛襲恩,以聲華嘔苻嫗、掩萬民百姓淮南子 俶真訓

 読み下し文がわかりませんので、訓点だけつけましたが、横書きに訓点を付けてもよくわかりませんね。淮南子は、char様(mixi IDある方は→こちら)やあおむし様が興味を持っておられます。私も、新書漢文体系は買いましたが、これは抄録で、残念ながら上記用例は載っていませんでした。新釈漢文体系を入手するしかなさそうですが、これは三巻本で高いですね。

【過去問】
隠元豆のさやは上を向く。 11-2K
隠元はさやのまま食用とする。14-1K

の標準解答に載っています。何れもとの同訓異義の書き取り問題です。ただ、「辞典」の苻欄に、「さや」という意味は載っていますが、訓は載っていません。この意味の「さや」は、「辞典」の訓にあるが書ければいいでしょう。

付の音符字で×の漢字はあと二つあるので、序でに。

【17】坿(フ)

【音熟語】白坿(ハクフ)≒水晶、白石英 「捷径」「大漢和」

 尚、「辞典」にはブの音も載っていますが、ブと読む熟語は「大漢和」に載っていなかったので、これは無視していいでしょう。

【18】柎(フ)

【音熟語】柎側(フソク) 「捷径」「大漢和」

【意味】ますがたの上の横木の傍ら

 柎に「ますがたの上の横木」という意味があります。今一よく解りませんが、木製の付属品なのでしょう。

 尚、「辞典」にはブの音も載っていますが、これも、ブと読む熟語は「大漢和」に載っていなかったので、無視します。


【15】××嶢(ギョウ)

2009年04月19日 | ×の漢字の音熟語を学習する[高]

(21.5.6 表題に××の符号追加)

【音熟語】 嶢嶷(ギョウギョク)≒高峻 「捷径」「字通」

 堯の音符字の内、ギョウと読む漢字は以前纏めました。堯の音は、ギョウだけですから、嶢は、音符を普通に読めばいいだけです。従って、特に学習する必要もなさそうですが、堯の音符字には、色んな読み方をする漢字があって混乱してきますので、高得点狙いの場合は、嶢は、ギョウと確認しておいた方がいいでしょう。

 嶢嶷(ギョウギョク)で難しいのは、寧ろ、嶷(ギョク)の読みですね。これは、18-2Yで、「辞典」の見出し語にある【嶷然】(ぎょくぜん)が出題されました。小熟語で嶷立(ぎょくりつ)も載っています。

 「辞典」の嶷の音は、ギョクとギなのですが、ギと読む熟語は載っていないので、嶷はギョクだけ憶えておけばいいでしょう。 「辞典」の見出し語になく、過去問にも出題されていない音訓は括弧に括っていますので、嶷の親字欄のギの読みは括弧に括り、音訓索引のギ欄の嶷には×をつけています。

 唯、「辞典」に全く熟語の載っていない×の漢字の音熟語を学習しているのに、見出し語がある1級漢字について、熟語の載っていない音は学習しないというのは平仄に合いません。でも、色々し出すと混乱してくるので、×の漢字を学習し終わってから、ぼちぼち学習していこうかなと思っています。


【14】摎(キュウ、コウ)

2009年04月08日 | ×の漢字の音熟語を学習する[高]

【音熟語】 「捷径」「大漢和」より
摎結(キュウケツ)まつわりかたまる。又、つかねて丸める
摎蓼(コウリョウ)あまねく捜索する。 

 摎には、もとめる、さがすという意味があります。この意味のときは、コウと読み、まつわるという意味のときは、キュウと読むようです。この読み分けも難しいですね。

 なお、「辞典」には、くびる、くくる の意味も載っていますが、「大漢和」にはこの意味の熟語は見当たりません。

の音符字】
 随分以前に記事にしました。あの頃は、見出し語のない△や×の漢字は無視していましたが、×の漢字の音熟語も学習することにしましたので、修正しました。

キュウと読む音符字は、△樛
コウと読む音符字は、

があります。


【13】■病垂+嬰(エイ) 標準解答に載っている*

2009年03月29日 | ×の漢字の音熟語を学習する[高]

(21.5.6 表題に■の符号追加)

【音熟語】癭腫(エイショウ) 「捷径」「大漢和」

【意味】こぶ  癭は「こぶ」という意味、腫は、「はれもの」という訓があり、「できもの」という意味もありますから、癭≒腫で、癭腫は、同義の漢字で構成された熟語でしょう。

 これは、寧ろ、準1級の腫をショウと読むのがが難しいですね。「辞典」には、腫の音読み見出し語として、

腫脹・腫物・腫瘍・筋腫・水腫・肉腫・浮腫

がありますが、孰れもシュと読みます。腫をショウと読む見出し語は見つけていません。 

 尚、見出し語ではありませんが、腫の親字の下付に疼腫(トウショウ)があります。「新字源」によると、「痛んで腫れる」という意味です。ただ、シュと読む場合も、腫れる・はれものという意味で、ショウと読む場合と同じ意味でしょうから、シュとショウを、どういう理由で読み分けるのかよくわかりません。まあ、若し出題されたら、シュと読めば大体当たりでしょう。

*最近新装開店のchar様のブログ「髭鬚髯散人之廬を読んでいたら、ショウヨウの同音異義語に腫瘍が挙げられていました。腫瘍は、「辞典」には、シュヨウの読みしかなく、ショウヨウとも読むのかなと思って調べてみました。

「漢語林」「現代漢語例解辞典」には、シュヨウの読みしか載っていません。

「新字源」には、シュヨウ・ショウヨウどちらの読みも出ています。意味は同じです。なお、シュが呉音、ショウが漢音です。

「大漢和」「大字典」「字通」には、ショウヨウの読みしか載っていません。「大漢和」「字通」には用例として、周礼が載っていました。

昔は、ショウヨウしか読まなかったものが、最近はシュヨウと読むようになったのでしょうか。あるいは、医学用語は時々特殊な読み方をしますので、漢語としてはショウヨウと読んでいたけど、医学界ではシュヨウと読んでおり、医学界の読み方が一般化したのでしょうか。音読みの読み分けは難しいものです。まあ、漢検対策としては、「辞典」の読みに従っておけばいいのでしょう。

【過去問】
目の上のこぶ 7-3K 12-1K
こぶの如く俺の頭の一角に固着した(阿部次郎「三太郎の日記」) 8-3K

の標準解答には、癭も載っています。他に、瘻や贅も載っています、しかし、こぶは、「辞典」に訓があるだけ書ければいいでしょう。

【同じ音符字】
 「音符字典」に拠ります。常用(J)以外の、準1級(J1)・1級配当については「過去問情報」も付記します。

J1 嬰 エイ

纓 エイ (ヨウ)[ひも] 被髪纓冠13-1K 17-2K

癭 (エイ)

J櫻=桜 オウ さくら

嚶 オウ [なく] 過去問未出かな? 「辞典」に嚶鳴(オウメイ)という見出し語があります。

J1鸚 オウ イン 鸚鵡(オウム)7-1K 15-1K

 [オウ] もたい [かめ]  罌粟(けし10-1Y 15-1Y 18-3Y 略同義の罌(オウ)≒甕(オウ)≒甌(オウ)≒瓮(オウ)は同音と憶えておけばいいでしょう。

瓔 ヨウ (エイ) 瓔珞(ヨウラク)8-2K 13-2Y 18-1K


 癭は、音符嬰を普通に読めばいいのですが、他の漢字の読みの方が難しいですね。


【12】▲幺(ヨウ) 音熟語の出題もまだあった

2009年03月23日 | ×の漢字の音熟語を学習する[高]

(21.5.6 表題に▲の符号追加)

【出題例】唯幺微(ようび)の間なり 12-3Y=征159頁、「捷径」にも載っています。

【意味】ちいさい。細かい。細微。(「新字源」)

【幺の音符字】
 「音符字典」に載っている9個の内、「新字源」で形声文字とされているものだけ拾い、「辞典」の音訓と、1級漢字だけ「過去問情報」を付します。

J幼 ヨウ おさな(い) いとけな(い)
拗 ヨウ
 [オウ] 執拗7-3K 18-1K ねじ(ける) す(ねる)10-1K 14-3K こじ(れる)
窈 ヨウ 窈窕9-1K 14-3K
J幽 ユウ かす(か) くら(い)
黝 ユウ あおぐろ(い) 過去問未出かな? 「四字熟語」に黝堊丹漆がある。


【9】罩(トウ) 訓読み出題まだあった 【10】×倬(タク) 【11】啅(トウ・タク)

2009年03月18日 | ×の漢字の音熟語を学習する[高]

(21.5.6 表題に×の符号追加)

【9】罩(トウ)

【出題例】深く罩(こ)める雨の奧に松が見える 14-1Y=征43頁、類 本2-9-7Y

【音熟語】徐孝穆、五行の秀を挺(さ)げ、天地の靈を稟け、聰明特達、今古を籠罩す。(陳書 徐陵伝論) 「字通」「捷径」

籠罩(ろうとう) とらえる。まとめる。

【同じ音符字】卓の音符字を「音符字典」から拾い、「辞典」の音訓と「過去問情報」を付記します。Jは常用、1は1級配当、括弧で括ったのは、見出し語のない音訓です。

卓 タク すぐ(れる)
×倬(タク)
×啅(タク)(トウ)
悼 トウ いた(む)

1掉 トウ チョウ ふる(う) 掉尾(トウビorチョウビ)8-1Y 15-1K=征90頁 19-3K(何れも「チョウビ」で出題) 尾大不掉13-2K=征104頁

1棹 トウ (タク) さお10-3Y さおさ(す)
×罩 (トウ)
1綽 シャク [ゆる]やか 過去問未出かな? 一寸意外です。

卓の音符字には、×の漢字が、罩の他に、倬・啅があります。この三つを無視すると、1級漢字は、3つですから、なんとかなるのですが、×の漢字も含めると6つとなります。音読みも、タク・トウ・チョウ・シャクと4つあって混乱してきます。合格のためだけなら、やはり×の漢字は無視した方が良さそうです。ただ、ここでは、序でに二つの×の漢字の音熟語も探します。


【10】倬(タク)

【音熟語】倬詭(タクキ) 他に勝って異彩を放つ(「捷径」・「新字源」)


【11】

トウ 啅啅(トウトウ) 小鳥が囀る声(「捷径」・「新字源」)
タク 啅噪(タクソウ) 大勢のかまびすしい声(「捷径」・「大漢和」)
啅は、囀る意味のときはトウ、かまびすしい意味のときはタクです。まさかここまでは出題されないでしょう。


【7】▲臠(レン) 音読みも出題されていた 【8】××病垂+攣

2009年03月05日 | ×の漢字の音熟語を学習する[高]

(21.5.6 表題に▲等の符号追加)

【7】臠(レン)

【出題例】 一臠(いちれん)の肉を嘗めて味を確かめる。10-1Y=征14頁

 これは、「辞典」の音にある読みです。過去問に出題された音読みは、見出し語になくても再度出題されることがありますので、憶えておいた方が良いでしょう。

 尚、20-3の(シツ)が×の漢字の音読みは初めての出題と思っていましたが、こんなところにもありました。4-1~9-3、14-3~20-2までは、×の漢字の音読みは出題されていないことを確認しましたので、残りも調べてみます。

 これだけでは短いので、「辞典」の臠の隣りにあった×の漢字をもう一つ。

【8】(癴)

【音熟語】 (「新字源」「捷径」)

【痙攣】(けいれん)は、「辞典」の見出し語にあります。11-1K=征服74頁、本7-17-2Kにも出題されており、回答は痙攣だけです。ただ、の意味は、つる、ひきつるで、「辞典」には類 攣とあります。また、痙の訓も、ひきつ(る)です。従って、痙攣、痙とも、同義の漢字で構成された熟語で、痙攣≒痙でしょう。


【6】■叨(トウ) 既出の漢字はまだあった

2009年03月01日 | ×の漢字の音熟語を学習する[高]

(21.5.6 表題に■の符号追加)

【出題例】 臣、弱才を以て叨(みだり)に非拠を窃む。(出典 「蜀志」 諸葛亮伝) 11-2Y=征37頁

【音熟語】 叨窃(トウセツ) みだりに盗む。高い地位を忝なくも受ける(「新字源」「捷径」)

 これは刀(トウ)をそのまま読めばいいだけですから、難しくないですね。


【5】■蛬(キョウ) 他にも出題されていた

2009年02月27日 | ×の漢字の音熟語を学習する[高]

(21.5.6 表題に■の符号追加)

【出題例】 澄む月や髭をたてたる蛬(きりぎりす) 其角 14-1Y=征43頁

1,「辞典」にない訓は無視しています

 蛬は、×の字ですから、「辞典」に訓はありません。「必携」には、きりぎりす・こおろぎの訓(訓義)が載っていますが、 「辞典」の訓にないものは、14-3以降は呷る以外は出題されていませんので、無視しています。この問題も括弧を付けて、解かなくてもよい過去問としています。

2, 一度出題された漢字は、また出題されるかも

 過去問を全部遣った印象では、同じ漢字が何度も出題されているものもあり、一度出題された漢字はまた出題されるのかもわかりません。「辞典」の訓にない訓読みが出題され、その後音読みが出題された例としては、餮(むさぼ)る13-2Y→饕餮(とうてつ)19-2Y があります。蛬も、訓読みは出題されないとしても、音読みは出題されるかもわかりません。ただ、×の漢字ですから、出題可能性はかなり低いでしょうが。


3, 音熟語

 蛬音(キョウオン) こおろぎ(蟋蟀)またはきりぎりす(螽斯5-2Y 8-2Y)の鳴く声(「大漢和」「捷径」)

蛬音=蛩音(キョウオン)です。蛩は△の漢字ですが、序でに憶えておきます。20-3の文章題の中に寒蛩(カンキョウ)がありました。尚、「辞典」の見出し語、 【跫音】と混乱しないようにしなくては。

4, 同じ音符字

 蛬の音符共は、キョウとしか読みませんので、音符を普通に読めばいいだけです。ただ、「音符字典」に拠ると、哄笑】(こうしょう)4-1Yのように、コウと読むものもありますね。


【4】××××贇(イン)

2009年02月24日 | ×の漢字の音熟語を学習する[高]

(21.5.6 表題に××××の符号追加)

【音熟語】 人名以外は見付からず
  我が家にある9つの漢和辞典で探しましたが、どれにも音熟語は全く載っておりません。「捷径」にも「美しいさま。多く人名に用いられる。」とあるだけです。そこで、本屋で「新潮日本語漢字辞典」を見たら、親字【贇】のところに人名が載っていました。確か陳元贇だったと思います。「大漢和」にも載っていない下付きの人名を載せるとは、この辞典なかなかやるなと思います。古本であったら買いたいです。ただ、人名は出題されないでしょうから、この漢字は絶対出題されないと言っていいでしょう。

【他の熟語との関係】

 贇は、斌+貝で、斌は準1級です。見出し語に斌斌(ひんぴん)17-3Yがあります。斌(ヒン)→贇(イン)と変化しますが、斌(ヒン)だけ読めるようにしておくことが必要でしょうね。

 「音符字典」には、斌と贇は、音符武のところに載っています。斌の部首は、文ですので、音符を武とされたのかもわかりませんが、魁のように部首と音符が同じ漢字はあります。斌について、「字通」は会意、「大字典」(旧版)は会意形声で文が音符としています。 武(ブ)→斌(ヒン)よりは、文(ブン)→斌(ヒン)の方がまだ音が近く、文の音符として整理する方がいいように思います。


【3】×××酳(イン)

2009年02月22日 | ×の漢字の音熟語を学習する[高]

(21.5.6 表題に×××の符号追加)

×の漢字の音熟語は一つだけ学習すれば十分でしょうから、原則一つにします。

【音熟語】酳酬(インシュウ)←「捷径」「大漢和」

【意味】
 
献酬するをいう(「大漢和」)とあります。酳酬≒献酬です。ただ、献酬という言葉もあまり使われる言葉でないため、更に辞書を引かなくてはなりません。「大漢和」も不親切だなあとは思いますが、「大漢和」は、他の辞書を引いても出て来ないような漢字や熟語を探す辞書で、現在でも厖大な分量がありますから、意味の説明が簡略なのはやむを得ないでしょう。

 「辞典」には、献酬が見出し語にあり、「酒宴などで、杯をやりとりすること。杯を酌み交わすこと。」とあります。これで酳酬の意味もわかりました。なお、献酬は、過去問(7-3K=征139頁)の書き取りで出題されています。

【他の漢字との関係】
 
酳の音符[酳―酉]を使った漢字は他にはないだろうと思って、「音符字典」を参照したら、準1級の【胤】(イン)がありました。酳と胤は音符が共通であることに全く気付きませんでした。胤は、1級ではあまり出題されていないようですが、後胤、落胤、皇胤の見出し語があるため、酳よりは、重要度が高いでしょう。×の漢字を学習することで、準1級の漢字も学習でき、好都合です。


【2】××××矣(イ)

2009年02月18日 | ×の漢字の音熟語を学習する[高]

(21.5.6 表題に××××の符号追加)

【音熟語】矣乎(イコ)、矣哉(イサイ)、矣夫(イフ)←「捷径」「大漢和」

「大漢和」には、意味は孰れも、詠歎の助辞とあります。用例としては、「易」「礼記」「左伝」「論語」などが載っています。論語の用例としては例えば、

矣乎は、公冶長第五―26 に「已矣乎」
矣哉は、子路第十三―9に「庶矣哉」
矣夫は、雍也第六に「亦可以弗畔矣夫」

【検討】然し、書き下し文は、

已矣乎 已(や)んぬるかな
庶矣哉 庶(おお)いかな
亦可以弗畔矣夫 またもって畔(そむ)かざるべし

とあり、音読みでは読まれていません。上二つは「かな」と読み下され、三つ目は無視されています。

 この三つの熟語は、詠嘆の助辞ですから文末で使われ、日本語としては、詠嘆であれば、「かな」が普通でしょう。諸橋先生は、中国語もお得意だったでしょうから、文末で「イコ」「イサイ」「イフ」と読んで詠嘆の感情を表せたのかもわかりませんが、普通の日本人であれば、詠嘆の感情は伝わらないのではないでしょうか。従って、この三つの熟語は、日本語の音熟語としては通用していないように思われます。日本語の書き下し文で、この三つの熟語を音読みしている例をご存じでしたらお教え下さい。

 娘の「漢文学習必携 増補板」(京都書房)にも、詠嘆の句形のところに載っていましたが、音読みでは載っていませんでした。従って、そもそも音熟語といえるかも疑問ですし、まさか漢検一級では出題されないでしょう。

 また、娘に、「矣は何て読む?」と聞いたら、置き字だから読まないと言っていました。従って一文字音としても読まないように思いますし、抑も、高校生に読まないと教えている漢字を読ませるような問題は出さないでしょう。

 「大漢和」には、他に、「矣鮮」(イセン 人名)、「矣邦池」(イホウチ 池の名)がありますが、固有名詞ですから出題されないでしょう。

【結論】矣は出題されないと思う。

 とこれだけでは仕方ないので、

【他の漢字との関連】「音符字典」には、矣は音符で、次の5つの漢字が載っています。

埃 アイ ほこり
挨 アイ
欸 アイ ああ 欸乃(アイダイ
14-1Y
竢 (シ) ま(つ)16-3Y
俟 (シ) ま(つ)

イと読む音符字は一つもありません。音符そのものだけの漢字が特殊な読みをする例は常用漢字にもあります。常用漢字の音読みは憶えておかなくてはいけませんが、矣(イ)などは却って憶えると、音符字の読みに混乱を来しかねません。

 尚、シと読む音符字(竢・俟)について、「辞典」には全く熟語が載っていませんので、これも出題可能性は低いと思います。ただ、「征服」(60頁)にオリジナル問題として、俟望(しぼう)が載っています。×の漢字を学習するくらいなら、「辞典」に訓読みの見出し語だけがあって、音読みの見出し語のない1級漢字について、他の辞書で音熟語を学習した方がいいのかもしれません。