漢検道

あおむしのヨチヨチ漢字道。

淮南子

2009-03-15 02:07:38 | Weblog
 前漢の武帝初期に成立した雑家の書。 漢の高祖劉邦の孫、淮南王(わんないおう)劉安(前178~前122)の編著。 「漢書」芸文志(げいもんし)には、もと内篇21巻・外篇33巻があったとされている。 儒家・法家・陰陽家などの説に混在させながらも、無為自然の道家思想に基づいて、天文・地理などの自然秩序と政治・軍事・処世などの人事百般を統一的に説こうとした傾向がみられる。 著書年代が比較的一定しているため、同じく雑家の書である「呂氏春秋」とともに、先秦思想研究の格好の基準として近年注目されている。 また、神話・伝説などの民俗学上の資料としても重視されている。 →説話・寓話で広く知られる「塞翁馬」の出典は「淮南子」人間訓(じんかんくん)。

では、淮南子出典の一級配当四字熟語の主なものを列挙しておく。

・一饋十起(いっきじっき) 10-3出題

賢者を求めるのに熱心なたとえ。 「一饋(いっき)に十(と)たび起(た)つ」訓む。
出典は”汎論訓”類義語に吐哺握髪(とほあくはつ)13-2・18-1出題、吐哺捉髪(とほそくはつ) 8-3出題が有り。  

・月中蟾蜍(げっちゅうのせんじょ)

月に住むというひきがえる。 蟾蜍はひきがえるの意。
出典は”精神訓”

・哭岐泣練(こくききゅうれん)

人は習慣や心がけ次第で、善人にも悪人にもなるということ。 「岐に哭(な)き練に泣く」とも訓む。 出典は”説林訓(ぜいりんくん)”まだ本試験での出題は無いが、今後出ることがあるかも? 些し違うかもしれないが、先日紹介した南橘北枳も住む環境によって善くも悪くもなるという意味で11-1で出題があるからなぁ。

・渾然一体(こんぜんいったい)

別々のものが溶け合って区別がつかないさま。 出典は”精神訓”

・隋珠和璧(ずいしゅかへき)

この世にまたとない貴重な宝物。 この世の至宝というべき宝玉。 出典は”覧冥訓” 和璧は「わへき」じゃなくて「かへき」と読む。

・尺璧非宝(せきへきひほう)

時間は何よりも貴重であるということ。 「尺璧(せきへき)は宝(たから)に非(あら)ず」と読む。 出典は”原道訓”

・戦戦慄慄(せんせんりつりつ)

恐れつつしむさま。 びくびくして、ふるえ恐れるさま。 出典は”人間訓”

・剽疾軽悍(ひょうしつけいかん)

すばしこくて強いこと。 出典は”兵略訓”


いつも通り、含まれる一級配当字も見ておきます。

一饋十起では、「饋」音読みは”キ”、訓読みは”おく・る”意味は、おくる。 食べ物や金品を贈る。=饋遺(キイ)、饋糧(キリョウ)。 神仏に食物を供える。 貴人に食事をすすめる。 また、食事。=饋食(キショク)、饋饌(キセン)と漢検漢字辞典にはあります。 他に、饋<(キキ)=なまものの食料をおくる。 送り届ける食料。 饋歳(キサイ)=歳暮、饋餉(キショウ)=食糧、兵糧。 饋食(キショク)=食事。 饋薦(キセン)目上の人に食物をささげすすめる。 祭りで供物を供えること「荀子」”礼論”。 饋贈(キゾウ)=進物。 饋奠(キテン)物を供えて神をまつる。 また、その供え物。 饋路(キロ)食糧を運ぶ道。 饋賂(キロ)=進物。 と漢字源にはあるので、余力があったら覚えるといいかな。 これに加えて漢語林には饋運(キウン)食糧を運ぶこと。 がある。

月中蟾蜍では、「蟾」音読みで”セン”。 訓読み欄には記述なし。 意味欄には、ひきがえる、ヒキガエル科の大型のカエル。 熟語に蟾蜍(センジョ)=月、月にひきがえるが住むという伝説による。 と漢検漢字辞典にはあります。 月には兎が住んでいますので、このヒキガエルは月に住む兎の餌なんだと勝手に想像してます。 ということは、月に住む兎は肉食か? と、些し脱線しましたが、他には蟾酥(センソ)生薬の一つ。 ヒキガエルの皮膚腺の分泌液からつくられ、強心剤などに用いる。 が、漢検漢字辞典にあるので覚えておかなかればならない。 因に酥(ソ)は8-2の読みでの出題がある漢字でウシやヒツジの乳で作った飲料という意味。 蟾の他の熟語を漢字源と漢語林でも確認しておくと、漢字源には蟾宮(センキュウ)。 蟾桂(センケイ)、蟾光(センコウ)、蟾兎(セント)、蟾魄(センパク)、蟾盤(センバン)、蟾輪(センリン)、蟾窟(センクツ)があります。 
 蜍は漢検漢字辞典には意味欄に蟾蜍(センジョ)ひきがえるに用いる字とだけあります。 

哭岐泣練では、「哭」音読みは”コク”。 訓読みは”な・く”。 声をあげてなく。 哭泣(コッキュウ)大声で泣き叫ぶこと。 涕を流して大声でなくこと。 と漢検漢字辞典の見出し語にあるので、語選択書き取り対策も含めて意味と共に覚えておかないといけない基本語。 他には慟哭(ドウコク)、下つきで哀哭(アイコク)、鬼哭(キコク)…鬼哭啾啾(キコクシュウシュウ)がすぐに想起されるよね。 戦場などの鬼気迫ったものすごいさま。 出典は杜甫の”兵車行” 成美堂の初版に出題があったなぁ。 あ、また逸れた…。 他に痛哭(ツウコク)がある。 他に、哭臨(コクリン)、哭声(コクセイ)、哭雨風(コクウフウ)夏至のころ、にわかに吹いてくる南西の風。 啼哭(テイコク)、歌哭(カコク)、泣哭(キュウコク)などがある。 意味はもう自分で調べてよ。 眠いから。


…眠くなったので


渾然一体の「渾」、隋珠和璧・尺璧非宝の「璧」、戦戦慄慄の「慄」、剽疾軽悍の「剽」、「悍」はまた次回ということで。






2 コメント

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せんじょ (サト☆ななみ♪)
2009-03-15 21:25:38
こんばんは。いつもお世話になっております。

「蟾除」

とありますが、僭越ながら「蟾蜍」ではないかと思われます。もし僕が間違ってたらお許しを。
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間違ってます! (あおむし)
2009-03-16 10:27:31
>サト☆ななみ♪様


いつもお世話になっております。ご指摘の通りです。後日訂正しておきます。有難うございます。今後もこういった誤字脱字はどんどん指摘頂けると助かります。
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