・ 西部開拓史で悲劇のアウトローとして名高いジェシー・ジェイムズを描いた伝説の西部劇。
19世紀末ミズリー州リバティ。鉄道建設のため土地を奪われたジェームス兄弟の弟ジェシーを主人公に、波乱の人生をテンポ良く描いた西部劇。悪名高い無法者ではなく庶民・農民の不満を銀行・鉄道会社へ晴らすため立ち上がったヒーロー的存在として描かれている。名匠ヘンリー・キング監督、タイロン・パワー主演のテクニカラーで原題は「ジェシー・ジェームズ」。
ジェシー・ジェームズは実在の人物で何度も映画化されているが、近年ではブラッド・ピット主演「ジェシー・ジェームズの暗殺」(07)のシリアスな描写が記憶に新しく、本作と見比べると興味深い。
H・キングは、ときにはユーモアも交えながら人間性溢れる人物像を浮き彫りにしてブラピ・ジェームスの暗さはなく、軽快なテンポと列車強盗や騎乗でのアクションシーンなどダイナミックなアングルによる映像美の演出が際立っている。
演じたT・パワーは20代半ばで本作を始め「怪傑ゾロ」(40)、「血と砂」(41)など世紀の2枚目スターとして活躍。大根役者との陰口もありながら40代半ばで「長い灰色の線」(55)、「愛情物語」(56)で主演し、遺作となった「情婦」(57)では演技派としても評価されている。
共演した兄のフランク役に扮したヘンリー・フォンダは、受けの演技に徹し主人公の引き立て役に回っている。続編「地獄への逆襲」(40)ではフランク役で主演を果たし、同年「怒りの葡萄」でブレイク「荒野の決闘」(46)で大スターへの道を進んで行く。
もう一人西部劇には欠かせないスターが出演している。ウィル保安官役のランドルフ・スコットだ。本作ではジェシーに好感を持ち法の番人として板挟みとなりながら、ジェシーの恋人ゼレルダ(ナンシー・ケリー)を庇うという立ち位置の難しい役柄。彼が演じなければ中途半端な立ち位置だったが違和感なく見られた。
鉄道会社マッコイ(ドナルド・リーク)、代理人バーシー(ブライアン・ドンヴェリ)は悪代官とその手先のような敵役を配し、人情味溢れる新聞社編集長ボブ少佐が鉄道会社批判のペンを振るいジェシーを擁護する図式は勧善懲悪の人情話の図式だ。
34歳6ヶ月28日でこの世を去ったジェシーの伝説は本作から始まった。
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