・ ギャグニーVSボガートの西部劇は盛り沢山。
ギャング映画でお馴染みのジェームズ・ギャグニーとハンフリー・ボガートが競演する西部劇。本邦劇場未公開作品だが名作「駅馬車」と同じ年に製作され、ふたりの魅力とアクション・ロマンス・歌や踊りなど盛り沢山でチョッピリ社会風刺も効いていて一見の価値あり。監督はチャップリン映画出演など俳優経験も豊富な「四十二番街」(33)のロイド・ベーコン。
先住民チェロキー族の居住区だったオクラホマの土地を政府が買い上げ白人入植をさせる<ランド・ラン>。補償金の銀貨を奪ったのはマッコード(H・ボガート)一味。その銀貨を奪った男がオクラホマ・キッド(J・ギャグニー)だった。
9月16日正午一斉スタートの<ランドラン>に向けて集まった人々。前夜オクラホマ・ミキサーの曲に乗ってフォークダンスに興じるなかに法と正義を守る信条のジョンとネッドキンケイド父子やハードウィック父娘がいた。
<ランドラン>から始まり所有土地の争いや権力争いがテンポ良く描かれ街(タルサ)の繁栄とともに善と悪の存在が明らかに。
ギャグニー扮するキッドは小柄でキビキビして三枚目の風貌のアウトサイド・ヒーロー。乗馬や拳銃も得意で唄やダンスも上手く赤ん坊をあやす愛嬌者。
対するボギーが演じたマッコードは黒ずくめでダンディ。目的のためには手段を選ばない街を牛耳るボス。
ふたりの競演は「汚れた顔の天使」(38)、「彼奴は顔役だ」(39)などギャング映画だがギャグニーは30年代ギャング映画のスターとして活躍し、ボギーは本作同様いつも敵役。
同い年のふたりは40年代になるとギャグニーが興行師ジョージ・M・コーハン役の「ヤンキー・ドゥドラル・ダンディ」(42)でオスカーを受賞、ボギーが「マルタの鷹」(41)、「カサブランカ」(42)でそれぞれ主演。
その後ギャグニーは演技派として80代まで息長く演じ続け、ボギーは「アフリカの女王」(52)でオスカーを獲得し50年代の大スターとして活躍したが57歳で生涯を閉じる。何から何まで好対照のふたりだった。
迫力ある群衆シーンや崖から急降下する馬など随所に目を奪う映像を織り交ぜながら<強者・開拓者たちは弱者・先住民から奪うが、賢者・キッドは強者から奪う>という展開でエンディングへと向かう・・・。
「駅馬車」とは趣が180度違うが、キャラクターの違うふたりの競演と<法か正義か>をさり気なく訴える活劇西部劇として大いに楽しめる85分間だった。