晴れ、ときどき映画三昧

「縛り首の木」(59・米)70点



 ・ ゲイリー・クーパー最後の西部劇。


 ドロシー・M・ジョンソンの原作を「折れた矢」(50)、「襲われた幌馬車」(56)などの西部劇を手がけたデルマー・デイヴィス監督で映画化。「ヨーク軍曹」(41)、「真昼の決闘」(52)のゲイリー・クーパー最後の西部劇主演。共演は「居酒屋」(56)のマリア・シェル。

 19世紀後半、モンタナのスカイクリークという金採掘で賑わう街に現れた孤高の医師ジョー・フレイル(G・クーパー)は小高い丘の上に療養所を構える。街で盗みを働き負傷した若者ルーン(ベン・ピアッツァ)を救い、治療費の代わりに使用人として雇うことに。
 ある日、街に向かう駅馬車が強盗に襲われ唯一生き残った若い女性エリザベス・マーラーを看病するうち、ジョーの暗い過去が明らかに・・・。

 G・クーパーはジョン・ウェイン、ジェームズ・スチュアート、ヘンリー・フォンダと並ぶ西部劇がお似合いの大スターだが、どこか影のある知的な役柄がまさにはまり役。医師でありながらギャンブルに強く、貧しい人には治療費も取らない西部版<赤ひげ>の趣。ときどき容赦なく相手を打ちのめす暴力的な行為には、過去のトラウマがあって女性にも冷たい扱いをする。

 スイスから父親とはるばるやってきて帰るあてもないエリザベス。フレイルに好意を抱きながらも治療が終わったら追い出されてしまう。演じたM・シェルは如何にも可憐で年が離れすぎているが、父親的存在のフレイルに好意を寄せたということだろう。

 そんな二人に何かと絡んでくるのが山師のフレンチに扮しているカール・マルデン。街の顔役でもありエリザベスを救った命の恩人でもあり、エリザベスが金採掘をルーンと始める際のビジネス・パートナーでもある。
 一癖ありそうな風貌そのものに、善人を装いながらエリザベスをものにすることに執心するという敵役だ。K・マルデンに善人役は似合わない。

 脚本に破綻がありながらテンポよく進むストーリーは、ダイナミックな風景描写とマックス・スタイナーの音楽が寄与し、適役の俳優たちの貢献が大。
 ほかにも偏執狂的な祈祷師に扮している当時30歳のジョージ・G・スコットが出ている。

 印象的なラストシーンにマーティン・ロビンスの主題歌「The Hanging Tree」が被ってエンディングとなる。D・デイヴィス監督がこのシーンに至るプロセスをどのように描いて行くか?が全てといっても過言ではない。この頃トロイ・ドナヒューやスザンヌ・プレシェットの恋愛青春ドラマも手堅くこなしている監督の片鱗も窺えた。
 
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