晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「家族はつらいよ」(16・日) 70点

2016-07-28 16:56:34 | 2016~(平成28~)
・ 山田洋次監督20年振りの喜劇は、消えつつある昭和家族。

 

 <男はつらいよ>シリーズで笑いとペーソスを長年振りまいてきた山田洋次監督20年ぶりの喜劇。

 小津安二郎へのオマージュ作品「東京家族」(13)のスタッフ・キャストをそのまま再現させ、三世代同居家族での熟年離婚をテーマにした本作が生まれた。

 三世代は70代の周造(橋本功)・富子(吉行和子)夫婦、40代の長男幸之助(西村雅彦)・史枝(夏川結衣)夫婦と息子2人、同居する次男庄太(妻夫木聡)の7人。

 長女成子(中嶋朋子)は家を出て会計事務所を経営、夫泰蔵(林家正蔵)は事務員として働いている。

 庄太にはしっかりものの看護師・憲子(蒼井優)という恋人がいる。

 そんな一見幸せそうで平和な平田一家に突然舞い降りた周造と富子の離婚騒動。

 筆者は秀造と同世代だが、設定が昭和30年代では?と思うほど、現在とはかけ離れた雰囲気なのは83歳の監督が描いた世界だからか?それとも高級住宅街の青葉台ではこんな家族が今も存在するのか?

 筆者が観た映画館では、年配女性の笑い声で溢れていた。おそらく自分も頑固おやじと化した夫を周造に見たのだろう。自分もカルチャー・センターに通い、老後を謳歌しているはず。

 絶妙なタイミングでのこけ方や古典的な笑いの渦は、山田映画の健在ぶりを証明するものだ。警備員の笹野高史、落語家のような医師の笑福亭鶴瓶、うなぎやの徳永ゆうきなどコメディ・リリーフの起用や、私立探偵・小林稔侍、居酒屋の女将風吹ジュンの安定感ある演技が支えている。

 小津映画の原節子のような存在が蒼井優。こんな女性がいたら周造でなくても、言うことを聞くことだろう。

 続編もできそうな本作。山田ワールドを楽しみに足を運んでくるファンのために劇場に笑いを振りまいて欲しい。

 
 

「エアホース・ワン」(97・米) 60点

2016-07-26 11:33:34 | (米国) 1980~99 
・ トランプが大絶賛した、大統領が勇猛果敢にテロと戦うアクション映画

 

 米国大統領専用機「エアホース・ワン」が、モスクワから帰国途上でハイジャックされる。犯人グループはロシアTVクルー6人になりすましたカザフスタン独裁者ラデクを解放要求するテロリストだった。

 護衛官はマニュアルに沿って大統領を脱出ポットに乗せ脱出させたが、発見されたポットはカラだった。

 貨物室に隠れていた大統領が、愛する家族(妻と娘)や人質を救うため大活躍する。

 共和党大統領候補トランプが大絶賛した本作。ジェームズ・マーシャル大統領を演じたハリソン・フォードがテロにも屈しない強い米国の象徴として登場する。

 元ベトナム戦争の英雄だった大統領は、ホワイト・ハウスと衛星電話連絡に成功するや自ら人質救済のため燃料の一部を投棄、燃料補給のため高度を下げるエアホース・ワンからパラシュートで脱出させる作戦を思いつく。

 その間テロリストのリーダー、イワン・コルシュノフ(ゲイリー・オールドマン)は機長・副操縦士を射殺、ホワイトハウスにラデク釈放を要求。さもないと30分毎に乗員を一人ずつ殺すといい、仲裁を買って出た国家安全保障会議ドハーティ顧問が犠牲となる。

 ホワイトハウスにはベネット副大統領(グレン・クローズ)が指揮を執るが、ウォルター国防長官は次期政権を狙っている風情もあり・・・。

 大統領はテロリストを銃殺し人質となった乗員に遭遇し、特殊部隊との連携、救出機へ移る段取りまで陣頭指揮を執る勇ましさ。

 果ては自ら操縦機を握り、テロリストと組んず解れずの大格闘。

 <アメリカがわが母なる祖国をマフィアと売春婦の巣窟にした>と主張するリーダーに向かって<私の飛行機から出ていけ!>と言って突き落す大統領。

 トランプが大好きな家族愛・愛国心の強い大統領と、アメリカのためなら自己犠牲も厭わないスタッフたち。21世紀には考えられないアメリカ万歳映画だが、ハリウッドの原点を見るような作品でもある。

 

 

 

「がんばれ!ベアーズ」(76・米) 80点

2016-07-23 17:37:30 | 外国映画 1960~79
   ・12歳で女優人生のピークだったT・オニールが可愛い



 アメリカ西海岸の地元少年野球チーム「ベアーズ」は弱点だらけの少年たちを抱えた弱小チーム。息子トビーの父親ホワイトウッド議員が昔馴染みの元マイナーリーグ選手のバターメーカー(ウォルター・マッソー)へ監督を委託してチーム強化を目論む。

 16ドルの報酬目当てで引きうけたバターメーカーは初戦で26失点、試合放棄する始末。チーム解散の危機に陥り何とかチーム立て直しを図ろうと、投球センス抜群だった昔の恋人の娘・アマンダを訪ね、チーム入りを勧誘する。

 監督のマイケル・リッチーはアマンダ役を14歳のジョディ・てフォスターに声を掛けたが、M・スコセッシの「タクシー・ドライバー」と重なり、T・オニールが演じることとなった。 
 
 T・オニールは「ペーパー・ムーン」(73)で父ライアンと親子共演して史上最年少(10歳)でオスカー(最優秀助演女優賞)女優となった天才子役。

 華々しいデビューを飾った彼女は本作で女優人生のピークを迎えた感があり、その後はスキャンダル(両親の虐待、麻薬売人の性的虐待、ジョン・マッケンローとの結婚・離婚、コカイン事件などなど)にまみれて、女優として大成できなかったのがとても残念な気がする。

 本作ではスターの住居を記した地図をドライバーに売るというシッカリ者で登場し、母親とよりを戻さないかと言うオシャマぶりで、何よりも可愛い。

 害虫駆除業者でアル中のバターメーカーは今の立場を自覚していて、彼女の条件であるバレーの授業料を払うことでチーム入りを約束させる。

 ダメチームにはエースと4番バッターが必要で、アマンダに好意を持つバイクの不良少年ケリーをスカウト。ここから快進撃が始まる。

 ここで、勝利を目指して感動のエンディングとなるのがお決まりだが、本作はチョッピリ変化球が混じる。勝利・成功の喜びを味わうか、チームワークの大切さを学ぶのか?

 ライバル「ヤンキース」の監督ターナー(ヴィック・モロー)の息子でエースのジョイ殴打事件を目撃し、勝つために手段を選ばずだったバターメーカーが選択したのは・・・。

 「あきらめるな!一度あきらめたら、それが習慣になる」と子供たちに言ったバターメーカー。アル中のダメ親父が立派な教育者に見えてくる。演じたW・マッソーの飄々としたキャラクターがぴったりとはまっていた。

 本作が大ヒットしたため続編が2作作られ、日本まで遠征した「ベアーズ」。リメイクや類似作ができたりしたが、本作を超えたものは見当たらない。

 

 
 

「白鯨との闘い」(15・米) 75点

2016-07-18 18:10:58 | (米国) 2010~15

 ・絶望の先に希望を見いだせるか?壮絶なサバイバル・アクション



 アメリカ人なら誰でも知っているハーマン・メルビルの冒険小説「白鯨」は、どのようにして生まれたか?

 19世紀初頭、捕鯨船エセックス号に初乗船したトム・ニカーソンが若き作家メルビルに語った驚愕の実話をもとに構成された白鯨との出会いと漂流生活を描いた、ハリウッドならではの3D技術とVFXを駆使したサバイバル・アクション。

 監督は名匠ロン・ハワード、主演したのは「ラッシュ プライドと友情」(13)でコンビを組んだクリス・ヘムズワース。いくつもの困難を乗り越え映画化されたのは2人の熱意によるもの。

 マッコウクジラ「モビィ・ディック」と義足の捕鯨船船長エイハブとの波乱万丈なストーリーである「白鯨」を連想するシーンはあるものの、もっと哲学的なテーマが潜在していた。

 一等航海士・オーウェン・チェイス(C・ヘムズワース)は腕利きの捕鯨船乗り。身重の妻に必ず帰ると約束して米国ナンタケット島を出港。エセックス号船長は名家の出で経験の浅いジョージ・ポラード(ベンジャミン・ウォーカー)。この2人の関係がトム(トム・ホランド)やマシュー(キリアン・マーフィー)ら21人の仲間の命運を左右することに・・・。

 経験不足のエリート上司と経験豊富なベテランの部下は、嵐に遭遇したとき意見が食い違うが、船長は嵐に突っ込む判断をする。経験不足を指摘されムキになった末の誤った判断なのが哀れである。

 何とか沈没は免れたが、一年あまり鯨を追った航海は不漁で、伝説の白鯨を求めて危険な海域へ挑んで行く。30メートルを超える鯨との遭遇は臨場感溢れる画面で前半の見どころ。

 その大きさはエセックス号との比較を俯瞰で捉え、モリで突き刺そうとするオーウェンの視点へ。白鯨の眼を見たオーウェンは一瞬躊躇する。それは人間とクジラを超えた生きるモノ同士の自然の摂理を伝える瞬間のようでもある。

 あっけなくエセックス号は解体され、3艘の救命ボートでの地獄絵のような漂流生活が始まる。初航海にして究極の体験をした幼いトムにとって、一生誰にも話したくない出来事だ。

 ドラマはこのシーンを描くことで<鯨と人間の関係>を倫理上のテーマまで昇華させようという意図が伺える。

 正直、後味は決して心地よいものではない。それでも生きて妻のもとへ戻ったオーウェンには新しい仕事と家族があり、ジョージは裁判官へ真実を話し人間的良心を発揮した。

 若き作家が年老いたトーマス・ニカーソン(ブレンダン・グリーソン)から話を聞き終えたとき「土から油が出た」という知らせを聞かされる。鯨油から石油へ時代が大きく変わろうとしていた。

 捕鯨に反対する現在のアメリカの象徴のようなトーマスにとって、トラウマが消えることはないが長年の苦痛が和らいだことだろう。
 
 


 

「オデッセイ」(15・米) 80点

2016-07-16 10:44:11 | (米国) 2010~15

 ・ 宇宙音痴にも充分楽しめる、スペース・サバイバル・エンタテイメント




 NASA火星探査アレス3計画の宇宙飛行士がアクシデントで火星に置き去りにされ、生存を懸けた孤独な奮闘ぶりとアレス3飛行士・NASA関係者の必死の救出劇を描いた宇宙映画。

「2001年宇宙の旅」をはじめ宇宙映画は定期的に話題作・名作が現れるが、本作は筆者のように宇宙好きでなくてもサバイバル・エンタテイメントとして楽しめる作品で、「アポロ13」(95)に比較的似た展開。

 映像技術の進歩で観客を疑似体験させたような「ゼロ・グラビティ」(13)のような臨場感も味わえる。

 アンディ・ウィアー原作「火星の人」を読んだひとにはチョッピリ物足りないかもしれないが、リドリー・スコット監督が長編を141分にまとめ、久し振りにいい仕事をしている。

 主演のマークを演じたマット・デイモンは過酷な状況にも関わらず楽天的なエンジニア・植物学者に扮しドラマを牽引し、見応えのあるドラマに貢献。

 リスクを回避しようとするNASAサンダース長官(ジェフ・ダニエルズ)と失敗を恐れないアレス3ミッション・フライトディレクターのヘンダーソン(ショーン・ビーン)との見解の相違は危機管理責任の在り方の典型的事例で広報の姿勢とともに現実起きた重大事件ともオーバーラップする。

 ヒンズー教の父とバブテスト教徒の母を持つNASA火星探査責任者カプーアの冷静な対応がきらりと光って見えた。

 ディスコ好きの船長ジェシカ(メリッサ・ルイス)以下5人のクルーがマーク救助に命掛けで挑む姿が比較的淡々と描かれているのが、チョッピリ物足りなさが残るところか?
 
 

「ローマの休日」(53・米) 85点

2016-07-07 17:56:38 | 外国映画 1946~59

 オードリーの米国デビュー作は、伝説のラブ・ストーリーとなった。

 エリザベス・テーラー、ジーン・シモンズのキャスティング予定がキャンセルされ、当時アメリカでは無名の存在だったオードリー・ヘプバーンが起用された本作。

 堅苦しい王室の儀式から自由を求めて抜け出した王女アン(O・ヘプバーン)と、特ダネをモノにしようとした新聞記者ジョー(グレゴリー・ペッグ)のピュアで切ないローマを舞台に繰り広げられる2日間のラブ・ストーリー。

 23歳にしては初々しく、その表情の豊かさや透明感あるスタイルでヒロインのアン王女を演じファンを虜にし、一躍大スターへと歩んで行く。

 名匠ウィリアム・ワイラーによる慧眼の賜物で、大スターG・ペックもその魅力を称えタイトル名を自分と同じ扱いにするよう進言したという。

 ローマの観光名所となったスペイン広場、真実の口、ベスパの2人乗り、ヘプバーン・カットなど当時のファッション・トレンドを挙げればキリがないが、これがモノクロであることを今さらながら再認識させられた。

 当時のハリウッドは赤狩りの真っ最中。ワイラー監督が製作費を工面してイタリア・ロケを強行したのもそんな空気から逃れたかったのだろう。

 脚本のダルトン・トランボはレッド・パージの10人(ハリウッド10)で締め出されていたが、監督の友情により偽名で仕事をしていた。

 「トランボ ハリウッドに最も嫌われていた男」という題名で映画が公開されているので、当時の状況がドラマチックに描かれている。

 身分違いの束の間の恋をユーモアを交えながら切なく描いて、老若男女が楽しめるこのファンタジー・ドラマ。

 こうした背景をもとに生まれたのも、ヒロインが自由を束縛されながら国のため本来の役割に戻って行く姿にオーバーラップすると思うのはうがち過ぎか?

 

 
 

「ビューティー・インサイド」(15・韓) 60点

2016-07-04 15:44:15 |  (欧州・アジア他) 2010~15

 ・奇抜な設定ながらオーソドックスな韓流ラブ・ストーリー



 韓国映画は久しぶりで、俳優の名前もよく分からなかったが、ヒロインのハン・ヒョジュは韓国大河ドラマ「トンイ」で知っていた。

 監督のペクはCMディレクター出身、ビジュアル・アーティストとして名の知られた存在で本作は長編デビュー。

 原案はインテル・東芝制作によるカンヌ・広告祭グランプリを受賞した40分のソーシャル・フィルム。

 眠りから覚めると姿かたちがマルっきり変わってしまう家具デザイナーのキム・イジン。知っているのは母(ムン・スク)と家具販売会社「アレックス」共同経営者の親友サンペク(イ・ドンフィ)だけ。

 そんなイジンがアンティーク家具専門店「ママスタジオ」で働くホン・イス(ハン・ヒジョン)に一目惚れしてしまう。

 2人の出会いから、どのように知り合ってどのように秘密を打ち明けるのか・・・。その進展ぶりがファンタジックに描かれ、<人は外見か?中身か?>という究極なテーマに迫って行く。

最大の話題は主人公イジンに扮した何と123人という出演者の数。筆者には区別がつかないがユ・ヨンソク、パク・ソジュン、イ・ジヌク、ト・ジハン、キム・ジュヒョクなど韓流イケメン俳優を始め老若男女が扮し、その中には上野樹里も。

 ペク監督はCM・MVで培った美しい映像を駆使して、この奇想天外なラブストーリーを純愛ドラマに仕上げている。ヒロイン、ハン・ヒョジュンの驚き・トキメキ・戸惑う姿に純粋な美しさが溢れ、あり得ない設定を忘れさせてくれそう。

 好きな日本の女優が上野樹里ではなく、<蒼井そら>だというイジンの親友サンペクに扮したイ・ドンフィがコメディ・リリーフ的な存在。当初キャスティングしていた蒼井優に断られたペク監督のシニカルなジョークか?

 挿入歌には<恋の予感>を意味するホセ・ラミラス製のギターによる「アマポーラ」が流れ、citizens!の「トゥルー・ロマンス」がムードを盛り上げる。

 純愛ものとはほど遠い過去で無縁な筆者には、3日眠るのを我慢していたのに、電車でうたた寝して変身してしまった髭ズラの男(キム・サンホ)にもイスに逢わせて欲しかった。

 結局イスを誘ったのは知的な中年経営者風の男(イ・ボスム)であり、3日連続でデートしたのはイケメンのパク・ソジュンだったりする。

 結論は<外見も大事、中身はもっと大切>という、ファンタジー・ドラマだったが、知的で美しいハン・ヒジュンを堪能した127分。
 

「最愛の子」(14・中国/香港) 80点

2016-07-03 10:52:02 |  (欧州・アジア他) 2010~15

 ・ 児童誘拐事件をもとに中国の現在を浮き彫りにしたP・チャン監督



 実際の児童誘拐事件をもとに、「ラヴソング」(96)のピーター・チャン監督が、世界第二位の経済大国が抱える数々の歪みを浮き彫りにした社会派人間ドラマ。

 TVドキュメンタリーを見て映画化を企画したP・チャン。世界共通の普遍的テーマである<親子の愛>が描かれているが、中国の検閲を潜り抜けた監督の手腕に敬意を表したい。

 中国・深圳の街中で3歳の息子が消息不明となる。警察の捜索で何者かに誘拐されたと判明、両親の必死な呼びかけにも関わらず消息がつかめない。
 
 父ホアン(ティエン・ウェンジュン)は大都会の片隅で細々とインターネット・カフェを経営。母ジュアン(キティ・チャン)はキャリアウーマン。2人は離婚してジュアンは裕福な男と再婚しているという背景がドラマを複雑にしている。

 そこには地方と都会の経済格差や、ひとりっ子政策による弊害が見え隠れしている。中国における児童誘拐は農家の後継者不足が要因で何と年間20万人にも及び、犯罪組織が男の子は140万女の子は30万で取引されている実態があるという。

 インターネットによる呼びかけで得られた情報もイタズラや詐欺ばかり。2人の拠り所は<新しく子供は作らない。子供を探しましょう>というモットーの「行方不明児童を捜す会」だった。

 3年が経過、北部の安徽省に息子がいるという電話が入る。

 流れは息子を巡って実の親と育ての親との葛藤や、息子が置かれた環境への戸惑いに焦点が移って行くが、このドラマは育ての母ホンチンの視点で歯車が廻って行く。

 ホンチンを演じたのは中国四大女優のひとりヴィンキー・チャオ。亡くなった夫から子供を産めない女だといわれ、実子ではないが盲目的に子供を取り戻すことに執念を燃やす。

 その必死な姿は善悪を超えた本物の愛をヒシヒシと感じさせる。汚れ役に挑戦した彼女の演技は終盤最大の見所だ。

 主要人物以外、探す会のリーダー・ハン(チャン・イー)、弁護士見習いのカオ(トン・ダーウェイ)など、夫々もっともだという説得性のある人物描写にシナリオの確かさが伺える。

 十数年前何度か訪れた中国は、喧嘩や裁判が日常の国だという印象の再現であり、探す会のカオがホンチンへ言った「相手の身にもなれ。この国にはそれが足りない」という言葉に大いに頷いてしまう映画だった。