夕焼け金魚 

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男の履歴書

2017-06-16 | 創作
家の塀とか神社の祠とかに落書きする人がいますけど、気をつけなければなりません。
おかしな処に落書きすると、本当に祟られることがありますから。
先日、街で落書きしていたとして学生さんが警察に捕まりました。
神社の祠に落書きしたというのです。
意味不明のアルファベットや記号をビルの壁や塀にスプーレーで描いてある物です。
本人は芸術だと本気で思っているのでしょうか。
普通、落書きの犯人は防犯カメラとかに写らない限り捕まることはまず無いのですが、その学生はすぐ捕まってしまいました。
防犯カメラのあるような処では落書きしていないのに、どうして捕まったのかなぁと思っていたらそのあたりの事情を知っている方がいました。
他の不動産屋で掃除の仕事をしている方で、元警察の方でした。
この業界いろいろな人材がいると改めて感心しました。
その方に聞いたところ、その方もこんな話し始めてだと言われました。
実は落書きに似顔絵が描かれていたというのです。
それがまるで写真のようにはっきり描かれていたので、警察が捜査している処に自首して来たというのです。
「壁に似顔絵、自分で書いたのですか」
「いや、自分では書いた覚えが無いと言ってますよ、でも落書きの処にしっかり残ってましたから」
「馬鹿というか、自己顕示欲が強すぎるのでは」
「いや、自分で書いたわけでは無いようなんです。実はそいつ自分が描いた作品を全てカメラに撮っていましてね、それが証拠になったのですが自分が描いたときにはそんな似顔絵なんか無かったというのです。それが、翌日になると似顔絵が描いてあったというのです」
「夜のうちに誰かが描いたのですか」
「分からないのですが、そいつ怖くなって似顔絵を翌日に消しに行ったのだそうです。スプーレー消しで夜中に消していったのに翌日になると似顔絵がまた描いてあったというのです」
「夜中に消したのに、翌日にはあったというと何時描いたのでしょうかね」
「それも、それだけでなくそいつが今までに描いた落書き全部に似顔絵が描いてあったというのですから、ちょっと人間業じゃ無いですよ」
「それは不思議ですね」
「それで、そいつが怖くなって警察に自首してきたのだそうですよ」
「へえ、似顔絵があちこちに描かれたらイヤですよね」
「ええ、自首して来て翌日からあちこちの落書きを消して歩いたら、それからは似顔絵も落書きも消えたと言いますから」
「それは、その人もひと安心ですね」
「ところが、その人は気づいていないのだけど、背中に落書きの文字が入れ墨みたいに残っているのですよ」
「背中にですか」
「ええ、それも白粉彫りと言われるやつで、風呂などに入ると浮き上がってくるのですよ」
「そんな」
「ええ、知らないうちに前科とか背中に隠し彫りされるなんて、気味が悪いと思いませんか」
「イヤですね」としか言い様がなかったです。
もしかしたら、私の背中にも知らないうちに隠し彫りがされていて、火照った背中を見て過去の悪さを見られていたりして。
男の火照った背中見る人なんて、肌を合わせた女の人しかいないでしょう。
男の背中を見て、過去の経歴を知って、付き合うとか別れるとか決められていたりして。
そういえば昔から言われていますよね。
男の背中は履歴書だと。

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