夕焼け金魚 

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熱取り草 ヒヤシマス

2023-08-01 | 創作
夏休みに入って、学校のプールも開放されています。
水の事故が多いので、プールの監視人として町内役員も動員されるのです。
ところが、動員される役員がプールサイドで、熱中症になる危険があるのです。プールサイドって意外と日陰がないし、特にコンクリートの照り返しで暑いのです。
「金魚さん、なにかいいものありませんか」と言われて紹介するのが、「ヒヤシマス」です。
ヒヤシンスと同じ、キジカクシ科でヒヤシンスの方が有名ですが、本当はヒヤシマスから派生したのがヒヤシンスなのです。
同じように球根を作るのですが、ヒヤシマスの球根は熱に特に弱いのです。
それで球根を熱から守るために球根の回りを厚手の皮が覆っているのですが、この皮が熱を内部の吸い取って外に放出するのです。
皮もバナナの皮のように五ないし六等分に分かれて、内側がゼリー状になっているのです。
「冷えピタ」はこの「ヒヤシマス」を研究していて、作られたとも言われてます。
ゼリー状の処から熱を吸収して、皮の方で放出するので割と長い時間冷却効果があり、一個で半日ほど冷たいので便利です。
帽子の内側にバナナの皮を広げるように貼り付けて、帽子を被れば半日の監視業務中は、頭を冷やすことができます。
今日も監視業務に行こうとして、一緒に行くビニールハウスのおじさんの所に行ったのです。
おじさんと一人娘のお嬢さんが大声で口喧嘩していたのです。
私が顔を出すと二人とも大声を出していたのが恥ずかしいのか、急に黙って分かれたのです。
私の側を通るとき「帽子貸してね」と言って私の帽子を取って被っていきました。
「どうしたのですか」
「なんか、推しメンの歌手がこっちに来るから、お金貸してと言うから幾らだと聞いたら10万だと言うんだよ。いくら有名な歌手でも10万は高いだろうと言ったら、怒りだしてあんな声にね」
「娘さん、きっとグッズとかいろいろ買っちゃうから」
「ああ、どうせ今だけの熱だと思うけど、いつも入れあげると見境がなくなるから」
「それだけ押してる証拠ですから」と言って二人でプールの監視に言ったのです。
その日はヒヤシマス帽子をとられたので、頭に氷を乗せていました。
監視業務が終わって、ビニールハウスのおじさんのところで、ビールをごちそうになっていたときです。
おじさんの娘さんが来て「帽子、ありがとう」と言って返してくれました。
おじさんが「そんなに行きたいのなら、10万あげる」と娘さんに言ったのです。
「あれ、もう良いわ。行くの止めたから」と言うのです。
おじさんと二人でポカンとしてしまいました。
あれほど行きたがっていたのに、コンサートにも行かないというのです。
返して貰った帽子の中を見ると、貼ってあったヒヤシマスの皮が真っ黒になっていました。
放出できなかった熱のために焼けたようです。
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