今年の4月頃、道にブラックベリーの苗が捨てられていた。
道の端に捨てられていて、干からびてもう枯れてるかなと思ったのですけど、なぜか「タスケテ」と言っているようにも見えたのです。
無駄かなと思いながらも、鉢に植えて水と栄養剤を与えてみたのです。
1週間ほどしたら、なんとか植え付いたので水やりをしていたのです。
そんなときに近くの喫茶店をしているご夫妻から、グリーンカーテンについて相談を受けたのです。
カーテン閉めておくより、何かの植木の方が雰囲気も良くなるし、地球にも優しいのでしょうということで、相談されたのです。
丁度拾ったブラックベリーがあったので、譲ることにしました。
まだ苗ですけど、7月頃には大きく成るでしょうからと言って譲りました。
七月になって様子を見に行ったのです。
喫茶店の窓一面に広がったブラックベリーを見つけました。
「良い感じに広がりましたね」
「ええ、葉も茂って店の中から見ると、木漏れ日と影のシルエットで魚や虫のようにも見えるんですよ、素敵な樹をありがとうございました」と言われました。
「グリーンカーテンとして育ってなかったらどうしようと思ったのですけど、立派に育ってて良かった」
「それに最近、実が成ったのですけど、ブラックベリーなのに甘いんですよ。凄く甘くて子供が摘んで食べちゃうので、ジャムにしようと思っているのに集まらなくて」と奥さまが笑うのです。
「良かった。捨てられた苗だったけど、なんとか恩返ししてくれたみたいです」
「蔓だからつるの恩返しですね」と旦那様が言うのです。
「私としては、どうせ恩返ししてくれるのなら、金目の方が良いです」と言ったとき、喫茶店の屋根に止まっていたカラスに「アホー、アホー」と笑われてしまいました。
「金魚さんには中で、美味しいコーヒーでどうですか」と笑顔の奥様に言われました。
はい、私には奥さまの笑顔が一番のご褒美です。