旋律はいつもドリン系

高校時代のマンドリンクラブの話です。
若干、ほんとのことをベースのフィクションです。

(5)藤本(ふじぃもとぉぉぉ)。なのじゃ。

2008年07月05日 01時06分34秒 | 2章-D線の切れる音

目次
〈1章-はじまりは、こんなもん〉の最初から
〈2章-D線の切れる音〉の最初から
〈3章-ワシと江本の八福(ハチフク)代理戦争〉の最初から
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最初、ワシは2人の会話を聞くつもりは、全くなかった。
自分の名前が聞こえてきたので注意を向けただけだ。

「チハルくんを指導してくれて、本当にありがとう」

「いや、青山が頑張ったんです。でも、最初はどうなることかと…」

2人は、会話をワシに聞かれているのは全く気づいていない。
ワシは、誉められるのは大好きじゃから、この会話は非常に心地よい。
このあと、ギターの技術的な話などが続く。

「棗田さんは、ローマトリノの後半の3連音の単音は、どの指でとってますか?」

ちっ。ワシの話はもう終りか。

「わたしは、(p)(i)(m)で、アルペジオの要領でやってるの。
 親指だけだと、リズムが取りづらいの」

「お、お、おれは、親指です」

「おう、そうか…」「まあ、そうなの…」

藤本(ふじぃもと)、無理して会話に加わらなくてもいいのに。
藤本は、弾くのはうまいが、技術的な事を言葉にするのは、まだ無理だった。
2人は藤本の答えを適当にスルーしている。

「そういえば、この前テレビで、SFものの映画の宣伝で俳優が日本に来てましたね。
 あの映画、おもしろそうなんで、見に行きたいんですけど。
 何ていう映画でしたっけ。日曜にテレビ、見ました?土井まさるが出てるやつ。」

「ああ、日曜日にやってたの、私も見たわ。スター…。えーと」

「おれ、おれ、おれ、それ知らないんです。なんて映画ですか?
 あー、テレビ見たかったな。映画の名前教えて下さい」

だぁかぁらぁ、藤本(ふじぃもとぉ)。2人とも覚えてないんだって。
無理して会話に加わるから2人とも、困っとるじゃろうが。
ちなみにそれ、スターウォーズじゃ。ゲームみたいな映画じゃ。

「でも、大阪フェスティバルが終わっても、今度は定期演奏会に向けて、
 日曜練習になってくるから、見に行くのは難しそうね」

「そうですね。たぶん、無理ですね。棗田さんの最後の定期演奏会ですもんね」

『棗田さん』?はて???
福田先輩、あんた、この前まで『棗田先輩』って呼んでませんでした?

この瞬間ワシは、電車に揺られて、膝カックンと符に落ちた。

ふ、ふ、藤本(ふじぃもとぉぉぉぉぉ)、何をやっているのじゃあ。
お前の出番じゃ。早く何か言って「しらけ鳥」を飛せ。
2人の邪魔をするのじゃあ。

藤本、その二人は目と目が絡みあっとるぞ。

2人は、今まさにフォーリンラブじゃ。
いやいや、もしかしたら本人達も、まだ気づいていない。

棗田先輩、貴女の目の前に居るのは、あの福田先輩ですぞ。
えーんですか?
なんか、とてつもない勘違いをしていませんか?

藤本(ふじぃもとぉぉぉ)。ワシは心底、心から叫ぶ。

ワシの顔が電車の窓に映った。

薄眼。冷や汗。口、半開き。
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今年も『全国高校ギター・マンドリンフェスティバル』が開催されます。
私が最後に聞きに行ってから、もう20年くらい経つでしょうか。
今年の予定はこのようです。お近くの方はぜひ、お出かけください。

と き:7月26日(土)11:00~18:00/27日(日)10:00~18:00
ところ:大阪府立青少年会館 文化ホール(環状線森の宮、地下鉄森の宮下車)
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