目次
〈1章-はじまりは、こんなもん〉の最初から
〈2章-D線の切れる音〉の最初から
〈3 章-ワシと江本の八福(ハチフク)代理戦争〉の最初から
〈4章-スターウォーズと夏の日の恋〉の最初から
「八守先輩と棗田先輩。昔、付合ってたからな」
「はっ?」ワシは…目が点。
突然の言葉にワシの思考は一瞬停止した。
停止した思考が戻ると同時に驚きと怒りが込み上げて来た。
そんな馬鹿な。ワシには天使のよう棗田先輩と、
何を考えてるんだか分からない八守先輩が恋人だったなんて、信じられない。
きっと棗田先輩は八守先輩にダマされたんだ。そうに違いない。
いや。もしかしたら頼り無い八守先輩に同情したんだ。
ワシの中で、大阪もギターも江本の事も全部ふっとんでしまった。
「そ、それは、ほんまですか?」
「あー。俺が1年の頃は、まだ付合ってたよ」
ワシの気持ちとは逆にこの人はまた、のんびりとした口調で言う。
「信じられない。絶対に似合わないでしょう。あの2人は」
「いや~、そうでもなかったなあ。お似合いだと思ってたんだが…
八守先輩はもてるからな…」
ワシには、この言葉は許せない。たとえ福田先輩であっても。
「棗田先輩だってモテルでしょう!」
「えっ、そうか?」
なんで、驚くんだ!バカやろう!!
「そうですよ!」
「なんで?」
…この人は、いったい何を見てるのじゃ。
「棗田先輩みたいに、美人でやさしい人は、
女子がたくさんいるこの学校でも、そうはいないでしょう?」
「うん。確かにやさしい。が…美人?」
だめだこの人は。一生ギターを抱えて生きていけ!
「ところで、なんで2人は別れたんですか?」
「だから、八守先輩はもてるんだって」
「つまり、浮気したと」
「棗田先輩、クラブ辞めるかもしれないと心配したんだ。
辞めずにいてくれて良かったよ。
なにせ棗田先輩は俺のギターの先生の一人だからな!」
「えっ?先輩も1年の時、2年生に教わったんですか?」
「いや、最初は3年生に教わったよ。
1年の定期演奏会の後、もう一度、真面目に練習しようと思って、
棗田先輩に色々教わってたんだ」
「どうして、棗田先輩に教わったんですか?その時のトップは八守先輩でしょう」
「あの人いつも居ないもの。ああ…2、3回教わったことがあるかな。
まあ、当たり前のことしか言われなかったけどね。
ふーんそうか、棗田先輩は美人なのか…」
つまり福田先輩は棗田先輩のことを、
やさしいギターの先生としか見ていなかったということらしい。
「そんなことよりチハル、練習だ!
もう時間がないぞ。これから俺の言う事をよく聞けよ!」
「はいっ!」もう少し話を聞きたかったが、しようがない。
ワシは『これから俺の言う事をよく聞け』の続きを待った。
「……」
しかし福田先輩は、いつまで経ってもその先を話さない。
その顔はまるで何か大事なことを思い出しているかのようにも見えた。
「……」
「先輩。先輩?どうしたんですか?」
「はっ!ああ…」
びっくりしたように、ワシの顔を見た福田先輩は、
急にトイレに行くと言って席を立った。
「八守先輩もよく分からんけど、
あの先輩もなに考えてるんだか、さっぱり分からんのじゃ」
『さっぱり分からん方が幸せな事もある』という事にワシが気付くのは、
もう少し後になってからのことだ。
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〈3 章-ワシと江本の八福(ハチフク)代理戦争〉の最初から
〈4章-スターウォーズと夏の日の恋〉の最初から
「八守先輩と棗田先輩。昔、付合ってたからな」
「はっ?」ワシは…目が点。
突然の言葉にワシの思考は一瞬停止した。
停止した思考が戻ると同時に驚きと怒りが込み上げて来た。
そんな馬鹿な。ワシには天使のよう棗田先輩と、
何を考えてるんだか分からない八守先輩が恋人だったなんて、信じられない。
きっと棗田先輩は八守先輩にダマされたんだ。そうに違いない。
いや。もしかしたら頼り無い八守先輩に同情したんだ。
ワシの中で、大阪もギターも江本の事も全部ふっとんでしまった。
「そ、それは、ほんまですか?」
「あー。俺が1年の頃は、まだ付合ってたよ」
ワシの気持ちとは逆にこの人はまた、のんびりとした口調で言う。
「信じられない。絶対に似合わないでしょう。あの2人は」
「いや~、そうでもなかったなあ。お似合いだと思ってたんだが…
八守先輩はもてるからな…」
ワシには、この言葉は許せない。たとえ福田先輩であっても。
「棗田先輩だってモテルでしょう!」
「えっ、そうか?」
なんで、驚くんだ!バカやろう!!
「そうですよ!」
「なんで?」
…この人は、いったい何を見てるのじゃ。
「棗田先輩みたいに、美人でやさしい人は、
女子がたくさんいるこの学校でも、そうはいないでしょう?」
「うん。確かにやさしい。が…美人?」
だめだこの人は。一生ギターを抱えて生きていけ!
「ところで、なんで2人は別れたんですか?」
「だから、八守先輩はもてるんだって」
「つまり、浮気したと」
「棗田先輩、クラブ辞めるかもしれないと心配したんだ。
辞めずにいてくれて良かったよ。
なにせ棗田先輩は俺のギターの先生の一人だからな!」
「えっ?先輩も1年の時、2年生に教わったんですか?」
「いや、最初は3年生に教わったよ。
1年の定期演奏会の後、もう一度、真面目に練習しようと思って、
棗田先輩に色々教わってたんだ」
「どうして、棗田先輩に教わったんですか?その時のトップは八守先輩でしょう」
「あの人いつも居ないもの。ああ…2、3回教わったことがあるかな。
まあ、当たり前のことしか言われなかったけどね。
ふーんそうか、棗田先輩は美人なのか…」
つまり福田先輩は棗田先輩のことを、
やさしいギターの先生としか見ていなかったということらしい。
「そんなことよりチハル、練習だ!
もう時間がないぞ。これから俺の言う事をよく聞けよ!」
「はいっ!」もう少し話を聞きたかったが、しようがない。
ワシは『これから俺の言う事をよく聞け』の続きを待った。
「……」
しかし福田先輩は、いつまで経ってもその先を話さない。
その顔はまるで何か大事なことを思い出しているかのようにも見えた。
「……」
「先輩。先輩?どうしたんですか?」
「はっ!ああ…」
びっくりしたように、ワシの顔を見た福田先輩は、
急にトイレに行くと言って席を立った。
「八守先輩もよく分からんけど、
あの先輩もなに考えてるんだか、さっぱり分からんのじゃ」
『さっぱり分からん方が幸せな事もある』という事にワシが気付くのは、
もう少し後になってからのことだ。
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