旋律はいつもドリン系

高校時代のマンドリンクラブの話です。
若干、ほんとのことをベースのフィクションです。

(26)『やっぱり福田先輩はすごい』by江本。なのじゃ。

2008年12月09日 02時12分12秒 | 3章-ワシと江本の八福(ハチフク)代理戦争
目次
〈1章-はじまりは、こんなもん〉の最初から
〈2章-D線の切れる音〉の最初から
〈3 章-ワシと江本の八福(ハチフク)代理戦争〉の最初から
〈4章-スターウォーズと夏の日の恋〉の最初から

江本は初めて、広島の尾崎先生を見て、意外に思った。

某国立大学マンドリン部のコンサートマスター出身。
クラブの創始者。この地方のマンドリンクラブの指導者的立場。

そんな話を先輩達から聞いていたからだ。
もっと、でっぷり太った年輩の人かと思っていた。

思ったよりずっと痩せてて、若い。広島弁丸出しの普通の先生だ。
威厳はない。

古森先生と指揮を変わった。

中学時代にブラスバンドでトランペットやっていたので、
すぐに古森先生との違いが分った。

弾きやすい。
フレーズのつなぎもスムースだ。
リズムが安定している。

『ハッ』と思った。自分が先生の指揮を批評していることに気付く。
演奏に余裕があるということだ。
八森先輩との居残り練習の成果が出ている。

やはり大阪に行くのは自分だろうと思う。
そして、チハルのギターに意識を向けてみた。

『チハルの音』が聴こえない。
チハルのギターはリズムがぶれる。チハルの音はきたない。チハルは演奏が単調だ。
ただ、楽譜の音符を追っている。そんな弾き方だ。

チハルを見た。

弾いていた。

少し前屈(まえかが)みだが、ちゃんと弾いている。

しかし、聴こえてくるのは自分が知っている音ではなかった。
音に芯がある。どっしりと安定した演奏だった。
ゆっくりした箇所はより落ちついている。
速いフレーズもあわてない。

そんなはずは無い思った。いつから、こんな風に弾いている?
どんな練習をしたら、急に音が変わる?

あせって、ミスタッチがでた。ミスタッチばかりになる。
落ちつこうとしたら、チハルの音が聴こえてくる。よけいにあせる。

どうしたら、そんなふうに急に変われる?何をした?
福田先輩か?福田先輩に教えてもらったのか?

やっぱり福田先輩はすごい。そんな事を考えていた。
余裕だった。もう弾くのを止めていたから。

合奏が終わり、日曜練習も終了した。

あのチハルを短期間で、ここまで変えるなんて。
負けたと思った。少なくとも自分はそう思った。

大阪大会まで時間がない。八森先輩に相談しても、もう無駄だと思う。
3年生は先生やOBと集まって大阪大会について、話し合いをはじめた。

福田先輩とチハルがまた、居残り練習を始めたようだ。
でも、もう気にならない。

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