アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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軽視できない河村市長の暴言と「日本保守党」

2024年05月02日 | 日本の政治と政党
 

 河村たかし名古屋市長は4月22日の記者会見で、ウクライナやパレスチナに触れながらこう述べました。

「祖国のために命を捨てるというのは、相当高度な道徳的行為であるということは間違いない。…国というものに対して、自分の命を捧げるというのは、大変な勇気のあることだし。みんなで『サンキューベリーマッチ』と言わなきゃ」
「(学校でも「祖国のために命を捨てるのは相当高度な道徳的行為だ」ということを考えるべきと思うかとの記者の質問に)やっぱり一定は考えないといけないでしょう。…自分たちの国の若者の血は流さないけど、アメリカ人の若者の血は流してもよいと。そういう考え方はものすごい不幸を導くんじゃないですか。日本に」(4月22日付朝日新聞デジタル)

 この発言には市民団体などから批判が噴出しましたが、河村氏は30日の会見で発言を撤回しないばかりか、「祖国のために死んでいったことは一つの道徳的行為だった」「なぜ国のために命を捨てないといけないのかを議論することが必要」などと繰り返しました(30日付朝日新聞デジタル)

 これは河村氏が持論を繰り返しただけ、と軽視することはできません。なぜなら、河村氏は「日本保守党」の共同代表でもあるからです。

 「日本保守党」は安倍晋三氏と親交があった作家の百田尚樹氏が昨年9月に立ち上げた政党。百田氏は「南京大虐殺はなかった」が持論のほか、自民党の勉強会(15年6月)で「沖縄の新聞はつぶさなければいけない」と暴言を吐いたことでも知られています。

 百田氏は同党の「結党宣言」でこう主張しています。

「日本ほど素晴らしい国はないと私は断言します。神話とともに成立し、以来およそ二千年、万世一系の天皇を中心に、一つの国として続いた例は世界のどこにもありません。…その日本の海が、山野が、いま脅かされようとしています。…野放図な移民政策やLGBT理解増進法にみられる祖国への無理解によって、日本の文化や国柄、ナショナル・アイデンティティが内側から壊されかかっています」

 綱領には、「日本国を守るに相応の国防力の保持、必要な強化、それを達するための日本国憲法改正を含む法整備を図る」と明記しています。

 その「日本保守党」が初めて国政選挙に候補者を立てたのが先の衆院東京15区の補欠選挙でした。結果は、同党の飯山陽候補は約24000票(得票率約14%)を獲得。小池百合子都知事が推した乙武氏を上回って第4位でした(写真左は左から河村氏、飯山氏、百田氏。写真右は「日本保守党」の公式サイト)。

 選挙戦の街頭演説で百田氏はこう述べました。

「40年以上、自民党を応援してきた。自民が保守政党だったからだ。ところが、安倍晋三氏が亡くなった後、自民は何かがおかしくなった」(4月29日付朝日新聞デジタル)

 選挙最終日に東京15区の様子を見に行ったという評論家の辻田真佐憲氏はこう感想を述べています。

「あくまで自分が見た範囲ですが、日本保守党の演説の盛り上がりはほかを圧倒するものがありました」(同、朝日新聞デジタル)。

 同党の公式アカウントのフォロワー数は33万人(自民党は25万人)、党費(一般党員は年6千円、特別党員は年2万円)を払っている党員は6万5千人を超えているといいます。

 事務総長の有本香氏は、「次の衆院選では、各地で独自候補の擁立を検討している」(同、朝日新聞デジタル)と述べています。

 河村氏が繰り返し「道徳的」と強調する「祖国のために命を捨てる」という「祖国」、百田氏が「祖国への無理解」という「祖国」が、「天皇の国」を意味していることは明らかです。侵略戦争・植民地支配の歴史を消し去る皇国史観の復活・鼓舞です。

 自治体の長である河村氏の「国のための死」発言は、沖縄戦で「天皇の官吏」として住民を戦争に巻き込んだ県知事・島田叡を想起させます。

 「日本保守党」が次の総選挙でどれほど候補者を立て、どれくらい得票するかは未知数です。しかし確かなことは、百田氏や河村氏が振りまく皇国史観に基づく政治批判が、これまでの自民党支持層はじめ保守層の受け皿となり、一定の、いやかなりの支持を得る可能性があることです。

 それは自民党政権が推進している日米軍事同盟の下での戦争国家化をさらに推進するものであり、そこに自民別動隊としての彼らの役割があります。それはけっして軽視することができません。
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