アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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「報道自由度70位」にみるメディアの責任

2024年05月06日 | 政権とメディア
  

 5日付各紙の報道によれば、国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」が3日発表した2024年世界各国の「報道自由度ランキング」で、日本は対象180カ国・地域中70位でした(昨年より2つ後退)。「先進7カ国(G 7)」では最下位(G7の6位は全体55位のアメリカ)。

 「国境なき記者団」のサイト(日本語訳)で詳しく見ると、政治指標73位、経済指標44位、立法指標80位、ソーシャル指標113位となっており、政治・法律・社会的指標で特に劣っています。総評としてこう書かれています。

「日本は議会制民主主義国家であり、報道の自由と多元主義の原則は一般的に尊重されています。しかし、伝統的・ビジネス上の利害関係、政治的圧力、ジェンダーの不平等などにより、ジャーナリストが監視役としての役割を完全に果たすことができないことが多い」

 その「政治的背景」について、こう指摘されています。

「2012年、ナショナリスト右派が権力を握って以来、ジャーナリストたちは、彼らに対する不信感、さらには敵意の風潮について不満を漏らしてきた。既成の報道機関のみが記者会見や高官に接近できる「記者クラブ」制度は、記者を自己検閲に駆り立て、フリーランスや外国人記者に対するあからさまな差別となっている」

 2012年に政権を握った「ナショナリスト右派」とは言うまでもなく安倍晋三政権(第2次)のことですが、安倍氏による報道機関への圧力・規制は第1次安倍政権(2006年9月)から本格化しました。

 専修大学の山田健太教授(言論法)は、この20年の「思想表現の自由にかかわる法制度」の経過を概観してこう指摘しています。

「始まりは、安倍晋三政権下の緊急事態法制と秘密保護法制の整備からだ。…有事法制は16年にバージョンアップされ…これらとほぼ同時の13年に制定されたのが、秘密保護法制としての特定秘密保護法だ」(2月9日付琉球新報「メディア時評」)。

 安倍氏を筆頭にした歴代自民党政権の反民主性があらためて厳しく問われなければなりません。

 しかし同時に、「報道自由度70位」という実態の責任はけっして自民党政権だけにあるのではありません。メディア自身の責任も重大です。とりわけ「国境なき記者団」も指摘している「記者クラブ」の弊害は、指摘されて長い年月が経過しています。

 例えば、元共同通信記者・編集主幹を務めた原寿雄氏は、「ニュース源と癒着しやすい記者クラブの位置づけを大胆に変革することを急がねばならない」としてこう指摘していました。

記者クラブの最大の罪は、閉鎖性による情報独占だけではない。日本社会が論議すべき議題設定のイニシアチブを、官庁や政党、経済界などのニュース源が握り、世論誘導にメディアが動員されながらも、ジャーナリストの側がそのことに無自覚な点である」(『ジャーナリズムの可能性』岩波新書2009年)

 日本の「記者クラブ」は、産経新聞や読売新聞などの影響もあり、国家権力の圧力・規制に対して団結して抵抗して自主性を守るより、記者が記者に圧力をかけ自己規制し合う弊害の方が顕著です。

 この「記者クラブ」を解体もしくは抜本的改革する第一義的責任は記者・メディア自身にあります。私たち読者・視聴者・市民はその改革を応援し、ともに「報道自由度」をあげていかねばなりません。

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