全世界に飛んでもない衝撃を与え、強烈なインパクトを残し、アメリカの絶対的な敵を焼き付けた9.11。この事件の前から、オサマ・ビン・ラディンという人物のやばさは、世界の警察・アメリカは十二分に把握していたはずだが、まさか・・・・いくらなんでも、日常の世界に飛行機が飛んでくるとは思ってもいなかったはず。
この映画の前に「声をかくす人」を見たが、リンカーンの暗殺と、同時テロは非常に似ているような気がした。晴天の霹靂のとんでもない衝撃の事件。アメリカの存亡を脅かすおそれがある!と思われるくらいの大きな出来事だ。絶対に、われらが祖国を脅かす存在を許してはおけない。そこにあるのは、正義とか、法の支配とか、理性にたがわない行動・・・・ではなく、敵に対する憎悪と、殲滅。メンツをつぶされたアメリカが、それを許すはずがない。
いや、許さなくてもいいが、それこそ超法規的な方法で、何をおいても溜飲を下げなければならない。そしてメアリ・サラットは絞首刑になり、オサマは銃撃された。一緒にすべきもんではないのかもしれないが、そんなふうに見えてしまった。そして残るのは空しさのみ。はたして溜飲は下がったか?
そんなことを思い浮かべながら見ていた。
オサマの居所を捜索していたCIAは、天才的な感覚を持ち、際立った情報収集能力を持つマヤを抜擢する。秘密の場所で行われる拷問。ちょっとでもオサマの情報とリンクするものであれば、徹底的搾り取ろうとする。最近、拷問というとよく見る方法、顔にタオルをかけて水を掛けるというとんでもないやり方だが、演技する方もやばい・・と思いながら臨んでいたんではないかと想像する。
それこそわらの山から針を探すような捜索が続く。どうしても見つからない。いくら拷問をしても口を割るものもいない。わずかな、ほんのわずかな可能から接触を試みた同僚は、自爆テロに巻き込まれ、犠牲となってしまう。
ここで何かが変わる。マヤを駆り立てたのは執念以外の何ものでもない。オサマとつながる謎に包まれた自分を探し当て、じわじわと、そして確実にオサマに近づいていく。そして見つけたある一軒の家。パキスタンのアボッターバード。世界中が思っていた山の中の洞窟なんかじゃない。きっとオサマは仙人のような暮らしをし、徹底的に禁欲の暮らしをしているのではないか。いや、そうであってもらいたい。いつも銃を手にし、戦闘的で、戦う気満々でなければ困る。
マヤは、99%ここにいる自信があると主張する。多分、こんな街の中にいられては、アメリカのお偉いさんたちが描くシナリオとは違っていたのだろう。いくらマヤの言うことが正しくても、行動を起こせない。どこもつくづく男の論理、男の社会なんだなあ。しかし、腹をくくったアメリカは、この隠れ家に攻め入ることを決定。シールズが闇の乗じて、隠れ家に飛ぶ。そして見つけたオサマ。間違いない。彼こそが、アメリカを恐怖に陥れ、10年もの間隠れ続け、世界中のテロリストに命令を下してきた男。
世紀のミッションを成し遂げ、パキスタン政府が行動を起こす前に、きれいに引き上げてこないならない。墜落してしまったヘリを爆破し、証拠を集め、基地に帰り着くまでが任務だ。死体袋に詰まったオサマを確認するマヤ。そこにあったのは達成感などではない。空しさか、虚無感か、彼女の目は虚空を見つめる。
力が入る後半に、思わず乗り出して見ていた気がする。途中、若干の中だるみがあって、ちょっとだけ気が緩んだのだが、そこもミッションが進まず、中だるみしていたのとリンクしていたと思う、勝手だけど。すべてが事実なわけはないし、CIAが事実をこと細かくあらわにするとも思えない。なにより大事だったのは、アメリカの威信を保つこと。しかし、そのあとに残ったのはなんなんだろうと、悩まずにはいられない。
◎◎◎◎
「ゼロ・ダーク・サーティ」
監督 キャスリン・ビグロー
出演 ジェシカ・チャステイン ジェイソン・クラーク ジョエル・エドガートン ジェニファー・イーリー
この映画の前に「声をかくす人」を見たが、リンカーンの暗殺と、同時テロは非常に似ているような気がした。晴天の霹靂のとんでもない衝撃の事件。アメリカの存亡を脅かすおそれがある!と思われるくらいの大きな出来事だ。絶対に、われらが祖国を脅かす存在を許してはおけない。そこにあるのは、正義とか、法の支配とか、理性にたがわない行動・・・・ではなく、敵に対する憎悪と、殲滅。メンツをつぶされたアメリカが、それを許すはずがない。
いや、許さなくてもいいが、それこそ超法規的な方法で、何をおいても溜飲を下げなければならない。そしてメアリ・サラットは絞首刑になり、オサマは銃撃された。一緒にすべきもんではないのかもしれないが、そんなふうに見えてしまった。そして残るのは空しさのみ。はたして溜飲は下がったか?
そんなことを思い浮かべながら見ていた。
オサマの居所を捜索していたCIAは、天才的な感覚を持ち、際立った情報収集能力を持つマヤを抜擢する。秘密の場所で行われる拷問。ちょっとでもオサマの情報とリンクするものであれば、徹底的搾り取ろうとする。最近、拷問というとよく見る方法、顔にタオルをかけて水を掛けるというとんでもないやり方だが、演技する方もやばい・・と思いながら臨んでいたんではないかと想像する。
それこそわらの山から針を探すような捜索が続く。どうしても見つからない。いくら拷問をしても口を割るものもいない。わずかな、ほんのわずかな可能から接触を試みた同僚は、自爆テロに巻き込まれ、犠牲となってしまう。
ここで何かが変わる。マヤを駆り立てたのは執念以外の何ものでもない。オサマとつながる謎に包まれた自分を探し当て、じわじわと、そして確実にオサマに近づいていく。そして見つけたある一軒の家。パキスタンのアボッターバード。世界中が思っていた山の中の洞窟なんかじゃない。きっとオサマは仙人のような暮らしをし、徹底的に禁欲の暮らしをしているのではないか。いや、そうであってもらいたい。いつも銃を手にし、戦闘的で、戦う気満々でなければ困る。
マヤは、99%ここにいる自信があると主張する。多分、こんな街の中にいられては、アメリカのお偉いさんたちが描くシナリオとは違っていたのだろう。いくらマヤの言うことが正しくても、行動を起こせない。どこもつくづく男の論理、男の社会なんだなあ。しかし、腹をくくったアメリカは、この隠れ家に攻め入ることを決定。シールズが闇の乗じて、隠れ家に飛ぶ。そして見つけたオサマ。間違いない。彼こそが、アメリカを恐怖に陥れ、10年もの間隠れ続け、世界中のテロリストに命令を下してきた男。
世紀のミッションを成し遂げ、パキスタン政府が行動を起こす前に、きれいに引き上げてこないならない。墜落してしまったヘリを爆破し、証拠を集め、基地に帰り着くまでが任務だ。死体袋に詰まったオサマを確認するマヤ。そこにあったのは達成感などではない。空しさか、虚無感か、彼女の目は虚空を見つめる。
力が入る後半に、思わず乗り出して見ていた気がする。途中、若干の中だるみがあって、ちょっとだけ気が緩んだのだが、そこもミッションが進まず、中だるみしていたのとリンクしていたと思う、勝手だけど。すべてが事実なわけはないし、CIAが事実をこと細かくあらわにするとも思えない。なにより大事だったのは、アメリカの威信を保つこと。しかし、そのあとに残ったのはなんなんだろうと、悩まずにはいられない。
◎◎◎◎
「ゼロ・ダーク・サーティ」
監督 キャスリン・ビグロー
出演 ジェシカ・チャステイン ジェイソン・クラーク ジョエル・エドガートン ジェニファー・イーリー
彼女の人生がこれから少しでも良くなればいいです。
それにしても面白かった。
もちろん全てが事実ではなくても、こういう流れだったのね。すごい引き込まれ方をしました。
充実の2時間半。映画の力を感じました。
これは真っ赤なウソという告発してる人の文章も読んだけど、どこまでが真実でどこまでが作りものか・・・私たちにはワカラナイよね~。
ただ言えるのは、最後には虚しさしか残らないってことかなぁ~。
ビンラディンの子供たちがその後、どうなったかすご~~~く気になるんですけど・・・
普通考えるよね?また報復・・・
争いって止められる術はないんでしょうか?
そうそう、いくら夜中とはいえ、あんな大きな音が聞こえたら近隣住民みんなパニクるよね。
パキスタン警察?来るの遅すぎ~って思った。
マヤの実際なんて、絶対に公表なんかできないでしょうからね。
あんな役をしただけでも、テロの対象になりそうですよ。
確かに面白かったし、ひきつけられましたが、何か胸の奥底に違和感がしがみついてます。
軍の秘密作戦をぺらぺら言うことはないと思いますよ。
そんな秘密をばらすようじゃ、軍人として、CIAとしてやばいでしょうからね。
なんていうのを考えると、かなりの度合いでフィクション色は強いだろうな。
でも、そんなことは関係なく、結構淡々と、冷静に作戦は遂行したんだろうなあと思いました。
いくらテロリストの親玉とはいえ、ああやって、攻め込んで、子供の目の前で殺していくということを生み出した事実はやばいことですよね。
映画はすごかったけど、中身には同調できないという思いが、徐々に強くなってきてます。
時事問題は恥ずかしながら疎い方なのですが
宗教的な見地からどうしても
このイスラム対キリスト教の終わりなき報復合戦は
暗澹とした気持ちながら息を詰めて見守っていますね。
この監督の作品好きなんですよ。
脳の作りが男性なんじゃないかな・・・・
威信を守るため、容赦がないアメリカというのにも恐さを感じますよね。
アメリカも威信を守るためというよりも、社会のシステムを破壊される恐さもあったのかも。
これも恐怖が恐怖を産む連鎖のひとつなのでしょうか。
腰が重くてすいません。
途中のいらいらの展開は、作戦の進行そのものを表しているのかなあ~、などと思いながら見ておりました。
これは時事というより、永遠につづく終わりなき不毛な戦い・・・という感じでしょうね。
人間のすることと言ったら・・です。
とんと変わりないどころか、こういった宗教対立に関しては、絶対に退化してますよね。
私もビグロー監督、好きです。
「ハート・ブルー」が大好きでした。
恐怖が国を団結させてきた!という歴史が厳然としてありますからね。
根っこの弱さも感じなくもないです。
寄せ集めの国の哀しさかも。
sakuraiさんも途中で寝ちゃいそうになりましたか(^^)
僕もです(^^;)
『ゼロ・ダーク・サーティ』はラストの虚しさこそが
ビグロー監督の伝えたかった事だと思っています。
憎しみの連鎖はどこかで誰かが断ち切らないといけないのですよね。
そして、むなしさだけが残る最後と。。。
なんともやりきれない世界です。