迷宮映画館

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機械じかけのピアノのための未完成の戯曲

2010年03月27日 | ロシア映画シリーズ
かのニキータ・ミハルコフの出世作となった、この作品は、学生のときに、(・・・なんとわたくし目、第二外国語に取っていたのがロシア語だったわけで、あの妙な暗号のようなアルファベットも読めないこともありません・・・・)ロシア語の先生が、「見てくださいねえ」と言われたのがなぜか頭にこびりついてて、いつだったかTVで放映されていたのを見た。それが20数年前。

その時は、やけにドタバタなような、静かなような、なんか良くわかんないロシア貴族の他愛のないドラマ・・・という印象を抱いた。中身はあまり覚えてない。

というような遠い彼方の記憶がよぎりながらの鑑賞。

話はとっても単純で、それはあたしの記憶と合致していたが、ある落ちぶれ貴族のお宅に集まった人たちの人間模様だ。

女主人のアンナは未亡人。継子のセルゲイは、結婚したばかりで妻にべたぼれでありながら、マザコンでもあるというちょっと浮いた存在。

その友人の医者のニコライや、友人のミハイルが妻を伴って、休暇のある日、屋敷に集った。他愛のない話に興じ、お茶を飲み、酒を酌み交わし、最後の貴族の良き日を味わうようにどんちゃん騒ぎをしていた。

セルゲイの妻・ソフィアを見て、驚愕したのがミハイル。かつて、学生のとき、二人は恋人同士だった。志高く、夢見る未来を信じていた二人だったが、ミハイルはソフィアに裏切られ、失意の日々を送ってしまう。

大学も中退し、今はしがない小学校の教師。そんな自分を歯がゆいと思いながらも、今の生活に縛られている。しかし、ソフィアを見て、かつての思いが再燃してしまう。

よみがえった自分の想いをソフィアにぶつけるが、今の生活を捨てることが誰に出来ようか。想いの行き所を失ってしまったミハイルは、川に身を投げる。しかし・・・・・。

ということで、チェーホフの死後見つかった未完成の短編「プラトーノフ」を中心に、他にもいくつかの短編を組み合わせて、ミハルコフが一つの物語として作り上げたのが、この作品だと。うーん、題名の意味がよーくわかったような気がする。

物語はどうといったこともない、金もなく、夢も持てない、暇を持て余した貴族のドタバタなのだが、その虚しさこそがあの時代を表し、彼らの見えない未来を見せているような気がする。

過去を思い出したミハイルが「わたしはもう35歳になってしまった。35歳になったのに、何もなしていない。天才と言われた人は35歳の前に、既にその才能を発揮している・・・」と、自分を嘆くのだが、何も出来ない、何も成していない、何をしたらいいのか見つけられない・・・という歯がゆいだれしもがいだく思いが、この映画の言わんとするとこなのだろうか。

いつものように、中村先生の解説があったが、登場人物に感情移入するわけでもなく、淡々と一歩引くようにそれぞれを描く。誰かを肯定するわけでもなく、否定しているわけでもない。なんとも漠としたこの世界に、どう生きて行ったらいいのかわからない人を苦悩で描くのではなく、どこか嘲笑しながら、ユーモアを込めて描いている・・・・そんな感じで、見るのがいいのでは、と。

中村先生的には、ミハルコフは嫌いなんだそうで・・・。でも、やっぱあたしは好きですわ。


「機械じかけのピアノのための未完成の戯曲」

原作 アントン・チェーホフ 「プラトーノフ」他
監督 ニキータ・ミハルコフ
出演 アントニーナ・シュラーノワ ユーリー・ボガトィリョフ エレーナ・ソロヴェイ アレクサンドル・カリャーギン エヴゲーニヤ・グルーシェンコ ニコライ・パストゥーホフ オレーグ・タバコフ ニキータ・ミハルコフ アナトーリー・ロマーシン セルゲイ・ニコネンコ 


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