迷宮映画館

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靖国

2008年07月08日 | や行 映画
8月15日。大概、高校野球の真っ最中。そうだなあ、3回戦くらいまで行って、第二試合の4回裏あたりがそのポイント。正午になって、黙とうをささげる。終戦記念の日のあるヒトこま。

そのあっつい日に、靖国神社では、こんなことが行われていたんだと改めて思い返したのが見て一番の感想だった。ニュースで取り上げられるのは、首相の参拝が、行われたか、否か。そして、もし首相が参拝でもしたならば、映像に現れるのはそこ。「靖国を参拝する国会議員の会」なんていうのもあって、それも写る。

なので、古式騒然と、軍服姿で、「アッチ、アッチ・・」と言いながら行進したり、いきなり食事ラッパが鳴り響いたりするとはたまげた。これは8月15日、のんびり家で高校野球なんぞ見てないで、靖国に見物に行っても面白いと思ってしまったのだ、不謹慎にも。

そう、この映画の上映が取りざたされ、上映しないだの、どっから圧力がきただの、さまざま宣伝になったのだが、いくら日本通だといっても、中国人の監督が『靖国』を撮ると聞いて、靖国を賛美する映画を撮るとは、誰も思わないはずだ。

映画は撮る人の自由だ。金出す人が一番の権利を持つのかもしれないが、右でも左でも真ん中でもなんら構わない。見る人は、右だから!左だから!と怒る人もいるかもしれないが、それを欲している人もいれば、唾棄したい人もいる。

やな人は見なきゃいいのだ。わざわざ金出して映画を見に行くという行為を自らして、文句をいう。それも自由だ。映し出された映像が、間違っている、誇張だ、欺瞞だ、でもいいと思う。それは撮ってる人の主観が入るから。

じゃあ、映画は一体誰が評価を下すのか。それは見た人。なので、映画は見なきゃわかんない・・・。という小面倒くさいことをぐだぐだ述べたが、結論、「映画はジユウだあ!!!」ということだ。

さて、話題の当映画だが、ところどころ苦笑を押しとどめなければならない。そこが監督の狙いなら、あたりだが、仮装行列がごときものを見せられ、こちらとしては笑うしかない。

他にもいまだ戦地から戻ってきてない人や、小野田サンも登場。と思えば、こっちにはとんと的外れなアメリカ人がおり、「魂を返せ!」と怒号する、韓国や台湾の遺族たちがいる。

片や、カメラは90歳になる刀匠の仕事ぶりを映す。鋼から一本の日本刀を打ち出すまでの芸術とも言うべき仕事が丹念に映し出される。そして、そのセットに百人切りの新聞記事。



見終わって、率直な感想を言うと、面白くなかったわけではないが、何を見せたかったのか、何を表したかったかのかがよくわからない。靖国に反対ならば、もっと声高に反対の意志を唱え、日本にいる中国人という視点から、鋭く存在意義の矛盾点を突いてもいいのでは。

全部をあまねく見せようとし、奇妙奇天烈な旧態然とした日本人を映すんなら、ほとんど大多数いる普通の日本人も見せるべきだと思う。映像的にはさっぱりつまらないと思うが。

全編通して感じたのが、人の話を聞かない人のなんと多いことか、ということだった。まず、己の主張を通すことは大事だが、この映像に出てくる人の中に、きちんと他人と対話をしている人がいかに少ないか。二人の老婦の会話ですらもそうだ。

刀匠と監督の会話など、その一番の典型ではないかと思った。刀匠に関しては、言葉などより、その仕事ぶりの方が、よっぽど雄弁だが、その一歩通行の主張は見ていて、決して気持ちのいいものではない。実は、映画の主眼はそこで、人は人の話を聞かない。それを見せたかったのかも知れない。だからこうなってしまった・・・。ということなのか。でも、監督も人の話に耳を傾けていたようには思えなかった。

普通の上映の流れだったら、小さなスクリーンで、さらっと終わってしまいそうな映画なのだが、あれだけ騒ぎになったということが、いかに映画にとって有難いことで、金をかけずに宣伝できたか。これってすごいこと。

判定不能

『靖国』

監督 リー・イン


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
上映するか?どうかが・・・・。 (mezzotint)
2008-07-14 21:20:48
sakuraiさん
こちらにもありがとうございましたm(__)m
やはり、上映するかどうか?という大揺れ状態は
かなり観客の心を揺さぶらしたのでしょうね。
私の知り合いも、何故?これほどまで騒ぐのか?
と観てがっかりしたらしいです。確かに騒ぐほど
凄い作品ではなかったと思います。まあ「靖国」を
知らない私にとっては、行かなくてもこんなところ
だということが少しでも知ることが出来てよかった
かなって感じですね。人々の色々な想いがあること
も分かったので・・・・。
>mezzotintさま (sakurai)
2008-07-15 15:40:09
私は、今度東京に行ったら、ぜひ行きたいと思います。
8月15日には、さすがに行く気力はなさそうですが、一度はやはり行ってみないと。
と思わせたのは、成功でしょうか。
映画はがっかりモンでしたが、こういう問題を強く印象付けた功績は大きいと思います。
映画の力ですわ。
判定不能(笑) (kimion20002000)
2008-12-25 23:07:56
TBありがとう。
おっしゃることは分かります。
でも、僕は、まあ上映騒ぎはどうでもよくて、この監督の(在日19年の)意図するもの、説明を排したもの、ごろんと投げ出したものはわかるような気がします。
本当は、南京虐殺などの記録写真のカットバックはないほうがよかったのに、と思いますけどね。
>kimion20002000さま (sakurai)
2008-12-27 08:29:54
ははは。
気持はわからなくもないですが、その表し方には、首をかしげました。
ぜひ来年の夏あたりは、「靖国」に行ってみようかななどと思ってしまいました。

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