頑固爺の言いたい放題

森羅万象なんでもござれ、面白い話題を拾ってレポートします。

株式投資指南サイトの信頼度

2015-02-11 16:25:15 | メモ帳

第一幕

ネット上に株式投資を指南するサイトが多数ある。5万円前後(3万円や7万円もある)の情報料を支払うと、急騰間違いなしという触れ込みの仕手株情報が1銘柄だけメールで送られてくる。仕手株情報はともかく、企業の投資家向け情報(IR情報)を主体とする無料情報もあり、これが結構参考になるので、私は毎日いくつかのサイトに目を通している。

昨年11月のこと、なんとなく信頼感をもった【急騰FOCUS】に5万円を支払って、仕手株情報を買うことにした。5万円なら時々損切り処分している程度の金額だし、もしも急騰したら簡単に回収できるはずである(そこが彼らの付け目だろうが)。

翌日送られてきた情報は、東亜石油(東京2部上場、昭和シェル石油の子会社)。その根拠として、羽田空港に近い場所に精製所がある不動産価値を挙げている。羽田空港に近い場所であっても、その土地を売却しないと利益にはならないのではないか。原油の値下がりで元売りは大損するはずだが、その子会社には損がでないのか。疑問はあったが、5万円を支払ってしまったからには、その情報を使わないのでは丸損だ。そもそも仕手株とは理由もなく高騰する株のことであると、自分に言い聞かせて東亜石油株を168円で2千株仕込んだ。

ところがその株価がビクとも動かない。数週間待って【急騰FOCUS】に問い合わせると 、「原油価格下落はガソリン需要の増大をもたらすから、業績は好転する。もう少し待ってほしい」という返事。「オイオイ、仕手株とはそんな長期の話じゃないだろうが」と思ったが、最終的には自己責任だからどうしようもない。

年が明けて再度問い合わせると、「今年に入り不甲斐ない動きが続いてしまっております。申し訳ございません。しかしながら、情報元の話ではここから反発し、昨年来高値更新を狙う動きになると自信を見せておりました。(中略)ここから挽回の動きを狙って参りますので改めてご期待の程何卒宜しくお願い致します」という回答。この時点で、この仕手株情報は不発であることが確実になった。

2月10日現在の株価は152円だから、含み損が32,000円。5万円の情報料と合わせて82,000円の損失だ。これから上がるのかも知れないが、3ヵ月も低迷すれば、最初の仕手株情報はハズレと判断せざるをえない。【急騰FOCUS】にしてみれば、「10に一つぐらいのハズレはあるよ」と言いたいだろうが、私としては最初の一つでやられたのだから、ハズレ率100%だ。

「ご迷惑をかけたので、次の情報を無料で提供します」という案内でもあればまだ可愛げがあるが(そういうサイトもある)、そんな申し出はない。

第二幕

【急騰FOCUS】の仕手株情報は信頼できないことがわかったが、その≪厳選一押し≫情報は企業のIR情報が主体であり、かなり参考になる。

2月9日のこと、その≪厳選一押し銘柄≫に兼松エレクトロニクス (KEL) が登場した。私の知人が以前、同社の社長だったこともあり、親近感がある。それに配当利回りがいいことから、かねてより私は同社の株を買うチャンスを窺っていた。だから、情報の内容次第では、すぐさまKELを買うつもりだった。

(8096) 兼松エレクトロニクス

同社が4日にTOB(株式公開買い付け)を実施し、完全子会社化を目指すと発表した事が買い材料。TOB価格が前日終値を25%上回る1株2100円、買付期間は5日から3月19日迄。今後の上昇に期待が持てる銘柄として推奨します。

 一見、自社株買い(往々にして株価を押し上げる)の情報のように見える。しかし、文脈に違和感があるので、KELのサイトを開けてみると、TOBの対象となっているのは日本オフィス・システム(NOS) であることが分った。KELはすでにNOSの株式の54%を所有しているが、100%の子会社にするため、「残る948,000株を2100円で買います」というTOBなのである。NOSの株式はジャスダックに上場されており、KELの発表があった翌日に、1,680円から2,080円に急騰している(2月10日現在2,095円)。

TOBを材料にするなら、買う銘柄はKELではなく、NOSである。しかし、【急騰FOCUS】が情報発信する前に、NOSの勝負は終わっていたから話しにならない。

同サイトにこの信じ難い誤りをメールで指摘すると、「重大なミスであり、お詫びします」という回答があり、翌日次の情報をネットに発信した。

4日に同社は日本オフィス・システム株式会社のTOBを発表。元々の子会社ではあるが、完全子会社化することで効率化を図る。今後のIT事業の急拡大が期待されることから、今後の上昇に期待がもてる銘柄として推奨します。

では、兼松エレクトロニクス(KEL) の株価はどう動いたか。2月4日の1,810円から、翌日に1,787円に値下がりし、その後も一進一退、10日現在1,775円。つまり、株式市場はKELの発表を好感するどころか、嫌気している感がある。

【急騰FOCUS】はその動きを知っていながら頬かぶりし、「今後の上昇」に話をすり替えてミステークを糊塗したのである。お粗末な株式投資指南サイトもあったものだ。

数多のサイトが毎日熱心に有料情報への参加を勧誘してくるから、それなりに商売になっているのだろう。だから、すべてのサイトが信頼できないとは言わない。また【急騰FOCUS】が発信する情報が常にハズレだとは言わない。なかには有益なものもあるだろう。しかし、私に関するかぎり、情報のハズレ率が高すぎる。同サイトのメールは断ることにした。

 

 

 

 


神武天皇は実在した?

2010-08-23 15:49:21 | メモ帳

「神武天皇以下第9代までの天皇は、日本書紀による虚構である」が、多くの学者や研究家の通説である。

その理由として真っ先に挙げられるのが9人の天皇の超人的寿命。百才以上の長寿天皇がゾロゾロいるのはありえないというわけだ。序文に掲げた歌の文句にあるように、神武天皇が即位したのが紀元2600年(660BC)であることとつじつまを合わせるために、異常に長寿の天皇を捏造せざるをえなかったというのが通説である。

もっとも、古代においては、春と秋の収穫期ごとに1年経ったと数えたという説もあり、これに従えば超人的長寿は半分になるから納得がいく。

そのほか、東征という事績が記されている神武はともかく、9代までの他の天皇(欠史8代)の事跡がまったく紀に記されてないのは不自然だということも虚構説の根拠となっている注1

 「神武以下第9代までの天皇は虚構である」とはいっても、天皇族が九州から大和に移ってきたことには史実としての信憑性があるから、「東征は第10代の崇神天皇の事跡であるが、初代天皇の即位時期を古くするため、事績を二人に分割し、初代を神武とした」(関裕二注2)という見解がある。この説は言うまでもなく、第2代から第9代までの天皇は実在しなかったことを前提にしている。

一方、嘘を書くにしても、そんな子どもだましの嘘を書くのは解せない。やはり9人の天皇は実在したのではないか、という説を唱える学者もいる。 相見英咲(注3)は、欠史9代の天皇は実在したと考え、次のような見解を唱える。

「天皇族はホホデミ(火火出見尊)という通称がある神武天皇の時に(220年前後)に九州から大和にやってきて、邪馬台国に仕えた。ミマツヒコという実名があった第5代の考昭天皇は任那に派遣された長官であり、オオヤマトネコヒコという実名があった第7代の孝霊天皇と第8代の孝元天皇は北九州に派遣された長官だった」

つまり、相見説によれば、神武から第9代の開化までは、実在はしたが、国王ではなかったのである。

「邪馬台国は卑弥呼の死後(250年ごろ)勢力が衰え、4世紀に入ってから天皇族が邪馬台国を滅ぼして新しい倭王(日本国王)になった。それが第10代の崇神天皇(318年崩御)だ」

「倭王となった時、天皇族は神武以来一貫して倭国を支配していたという形に整えるために、邪馬台国と欠史8代に関する資料を抹殺した。そのために、後年日本書紀を編纂する際、邪馬台国と欠史8代の時代になにが起きたかまったくわからなかった」

 相見の見解は面白いし、筋が通っている。しかし、相見説は邪馬台国の所在地が大和であることを大前提としており、邪馬台国北九州説も有力であることから、現段階では一つの見方とせざるをえない。

さらに、同氏の見解は欠史8代の天皇たちの実名だけを頼りに組み立てた想像にすぎないことも弱点である。(注4)

学説のどれが正しいかを多数決で決めることはナンセンスだが、神武天皇実在説はまだ例外的存在である。

その例外の一人が鳥越憲三郎(注5)である。同氏は神武に始まる9代の天皇の陵墓の場所に法則性が認められることを根拠に、神武と欠史8代の天皇は実在したと主張した。

(注1)神武以下9代までは虚構であるという根拠はほかにもいくつかあるが、専門的なので省略する。

(注2)関裕二:1959年生、在野の古代史研究家、古代史に関する著作がもっとも多いのはこの人。

(注3)相見英咲:1950年生、大阪市立大大学院国史学卒業、著書「倭国の謎 知られざる古代日本国」講談社選書 2003年発行

(注4)○○天皇という謚号は日本書紀が編纂された後に淡海三船という学者が考えたものであって、それまでは実名で呼ばれていた。

(注5)鳥越憲三郎:1914-2007 元大阪教育大名誉教授、古代史、著書「古代中国と倭族」(中公新書 2000年)、「古代朝鮮と倭族」(中公新書 1992年)、「神々と天皇の間」(朝日新聞社 1970年)