ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第二部・国境なき恐怖 151青い目のサムライ 「サムライ!ならば、せっしゃが、なりましょう」 「マイクは、単純だなあー」 「まあ、観光目的で今はいるのだから、それでもいいじゃないの」 京都にはビル群もあるが、古い京都の町屋も残っている。その町屋の一つに変身舞妓のお店がある。 「いらっしゃいませ」 と、三つ指をついて、出迎えられる。 「まさに、時代劇の世界だ。拙者は、マイクでござる」 「男はんと、女子はんは分かれてくれはりますか」 「わかったでござる。かたじけない」 女将はわらって出ていく。 着付けをする人たちが入ってくる。 ここも準備というよりも、まるで儀式のように入ってくる。 こういうことを洗練されているといってもいいだろう。 「どのおべべがお似合いでっしゃろなあー」 「顔の造りが派手な人は大きなガラが似合うって聞いたことがあるわ」 と夏八木。 「ナンシーなんて、この着物が似合いそうね」 「私、それにしたい」 「夏八木はんも、どないです。芸妓はんに変身しはってわ」 「それも、よろしおすねえ」と応え、笑う夏八木。 マイクも鬘をつけてもらって、着物と袴をつけているので、すっかり時代劇に出てくる役者のようである。 勇気は新撰組の格好をしている。 「人殺しはきらいだけど、こういう仮装行列は好きだなあー」 「仮装行列、これから、どこを行進する予定だ?」 「これから、祇園さんにでも行って、写真をとるそうでっせ」 「えっ、このまま、外に出るの?撮影のためだけと思っていたよ」 「撮影のためでしょう。外で撮影するのよ」 と、メイクをしながら笑っていた。 「新撰組がこの京都にいたころ、京都はぶっそうだったのでしょう」 「幕末のころですか。そう話には聞きますねえ。あまりに治安が悪いので、武士の階級でもない人たちを集めて、治安を守ろうとしたのが、新撰組とききます」 「今の世界も治安が悪いなあー。困ったものだ。でも、アメリカは他国の人を本当に幸せにしているかどうかは疑問だな」 と、マイク。あの船上での出来事を思い出している。 「してまへんやろなあー。新撰組も人殺しに躍起になってはって、京都では嫌われ者やったと聞きます」 「勇気にはぴったりだなあー」 「新撰組のことは壬生郎と京都の人は言って、バカにしていました。京都の文化に対する理解もできてはりまへんでした。舞妓さんや芸妓さんまで斬ったということを言う人もいはるくらいです。そんなん斬っても仕方がありまへんやん」 イミテーションの刀と刀をあわせているマイクと勇気。 「子どもじゃないだろう!」と勉が注意した。 「かんにんどすえ!」 京都弁で謝る二人。でも、それ、女性言葉なのになあーと勉は思う。 昔の言葉には、女性と男性のつかう言葉がちがった。 今でも、日本ではそのような言葉が残る。 男女差別という人たちもいる。 先進諸国では、このような女性男性という言葉をなくしていこうという人たちが多くなっているそうだ。 もう夜中になっている。外も涼しくなってきている。通りに打ち水をしている人たちもいる。 八坂神社にでかけた。
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