磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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027“マスク女”

2006年04月14日 | Ra.
ラヂオアクティヴィティ[Ra.]
第一部ブロック・バスター

二、怪物はどちら?

027“マスク女”



「“マスク女”昭和二十四年一月の初め、
広島の民間の外科医のところに、
たくましい体つきの父親に背負われた、
一人の男の子がやってきた。
父親がその子を診察台に降ろすと、
火傷で焼かれた跡が足にあった」

輝代の目が白く輝いた。
勇気と行者はその光で目が痛く感じたほどである。
そして、どうしたことか、体がだるくなった。
しかし、心地よい気分であった。

外科医か、これも怖そうであると勇気は思った。

輝代は話を続けた。

勇気が瞼をとじ、目をこすってあけると、そこは時代遅れの日本であった。

「その跡はケロイドというのよ。
外科医はその子の両足が原爆熱傷後のケロイドなのを一見してわかる。
外科医はカルテに向かって受傷時の状況を書きはじめた」
輝代の声は聞こえた。

だが、先ほどまでいた。船上ではない。
「どこで被爆しましたか」
やさしそうな医者が声をあげた。

「被爆なんてしていませんよ」
勇気は応えた。行者もその応える勇気の声がきこえた。

しかし、二人の目の前にあらわれる風景は、街の医院。
それも古くさい感じのする医院なのである。

「松川です。広島駅の近くの……」
そう声をあげたのは、中年の日本人であった。
まずしい感じの服装をしている。

でも、その当時の日本人なら、こんな人が多いだろうと勇気は思った。
その人たちは勇気たちのことなど、まったく意識していなかった。

外科医は被爆地点、約一、五〇〇メートルと書きつけた。
被爆した地点を書き込んでいる。
このことは重要であることを勇気は知っている。
だが、行者はただ言葉が通りすぎていくだけだった。

しかし、行者は日本語を理解しているような顔つきである。
「どんな状況でした?」
医者は患者に問診している。

父親らしき人物は慎重に話す。
「家内が背負っていまして……おい、お前が説明しろ」

外科医は気がつかなかったが、後ろに顔をマスクで隠した母親が立っていた。

「どうぞ!」

医者は微笑みとともに話した。
母親は、説明するために大きなガーゼのマスクを取った。
さすがの外科医もアッと声を出すところだった。

行者と勇気は大きな声をあげた。
でも医者も患者らもそれらに何の関心も示さなかった。

その叫び声の原因は、まだ三十歳前であるはずの母親の顔が、
完全に破壊されていたからである。

「気持ちが悪い」
「化け物だあー」
マイクと勇気の声はまわりの人たちには聞こえないようだったし、その存在さえ、四人は感じていないかのようであった。

その母親の顔は、両側の眉毛は一本も残らず失われて、
墨汁でうっすらと描かれているのだが、
ピカピカ光る瘢痕組織のため、墨も一部がはげていた。

「本当にこれが顔だろうか。どういうことだ。
ちっともわからない。これ夢」

「夢かなあー。行者」
「夢だろうよ、勇気」
勇気は行者の頬をつねった。

「痛い!」
「シッ!」
勇気は冷静に忠告した。

「うん」
痛さを堪える行者。

その母親は、両側の上眼瞼とも瘢痕による引きつれのため外にめくれて兎眼症になっている。

これは非常に目が痛い。

まばたきが出来ないということが、どういうことか、理解できるだろうか。
ためしに五分だけでいいから、一度もまばたきしないでいてください。
涙があふれくるでしょう……。

まばたきできないために結膜は充血し、涙があふれている。








閑話休題

イランの濃縮よりも数段、
危険な技術であり、
恐ろしい物質も作ってしまう施設が、
3月31日に、六ケ所村で運転を
はじめたようですが、
まだ2週間もたっていないのに、
もう事故だそうです。

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ありがとうございます。






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