磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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医学は公害事件で何をしてきたのか

2006年06月19日 | 読書日記など
『医学は公害事件で何をしてきたのか』
    津田敏英/岩波書店2004年

水俣病のひどい現状がありましたね。
その癒着の恐ろしさを、
さらに知っていただきたいと思います。



水俣病は取り締まることができたという。
あれほどの被害者はでなったそうだ。

まず食品衛生法で取り締まるのが常識。
もし、排水を止めたとしても、
汚染食品を食べ続けるのだから、
患者は増え続ける。
食品衛生法で汚染物質を販売させない
こと、食べさせないことが肝要だったという。

「疫学の父」ジョン・スノー(ロンドン麻酔医)し、
コレラ菌が発見される30年前。
コレラの原因が、ある水道水であることを証明。
そして、コレラ対策につながったという。

真の患者かどうかという議論も、
そもそもその議論が非科学的である
というのがよくわかります。

当時の環境庁は、
なかみのない権威を作り出して、
自分たちの立場を守ろうとしていた
ようである。


国立水俣病研究センターがあるそうですが、
あまり役立っていないようです。



水俣病の認定の検査は何と、仕事を休んで、
1週間もかかったという。
そして、合否は何年もたたないと出して
もらえなかったという。

この検査をするのにも巨費(税金)が使われたという。下「」引用。

「中央公害対策審議会環境保健部会水俣病専門委員会の議事録によると、申請患者一人あたり約三○万円もかかっていた。これらの向けんさ費用は税金からの拠出である。おそらく食中毒患者一人を数えあげるコストでは、飛び抜けて史上最高の額であろう。累積申請患者数は軽く一万人を超えるので、低く見積もっても三○億円以上が認定申請のためだけの費用として費やされてきたことになる。食中毒事件で患者の数を数え上げる際にこれだけの費用をかけることはあり得ない。」

何にかかったのでしようね。
患者のプラスにはならないけど、
医師たちのプラスになったのでしょうか?

棄却された患者の診断名も常識外。同。

「棄却になる以上は、医師により実際に存在すると認識されている症状に関して何らかの病名がつけられなればならない。その一例として「広汎性脳障害」というものがある。しかし、水俣病(メチル水銀中毒)自体が、知覚神経中枢を中心に広汎に脳の障害を来すわけであるから、実はこれは水銀の症状をそのまま記述したものにすぎない。このような病名で棄却されているのである。また、「頚椎症」という病名も棄却者によくつけらる病名である。メチル水銀ではなく首の骨の異常によって生じた感覚障害と言っているのである。ところが医師であるものなら誰でも分かるように、両手両足に感覚障害を生じさせるような頚椎症は実際にはまずあり得ない。」

熊本学園大学教授原田正純氏が指摘していたように、
水俣病の発生の前に水俣病の専門家はいなかった。

環境庁が「水俣病の専門家」をつくりだしていく。
患者を見たこともない「専門家会議」。
あきれた学者たちが集まってきます。

こんなことが書かれてあります。同。

「「医学専門家会議」と銘打たれると聞こえが良いが、このメンバーのうち、座長の祖父江逸郎氏、及び、里吉栄二郎氏、豊倉康夫氏の三名は当時、水俣病の患者を診察した経験を持たず、また水俣病に関してほとんど何の予備知識も持たなかったことを公言してはばからない。座長の祖父江氏に至っては、井形氏にすすめられて気が進まないのに座長になったという証言を後に裁判所で行っている(一九九三年一二月一七日東京地方裁判所)。」

委員になるような方たちは真面目と思っていましたが、
偽証までしいたそうです。同。

井形氏に至っては、1998年に大阪高等裁判所において専門医試験を受けて通ったと偽証してまで背伸びをしていた(なお井形氏の偽証はこれだけではない。-略-)。」

ほんといつものことですね。


クリスチャン椿忠雄氏も、
すごい方のようです。同。

「クリスチャンである椿氏は、冒頭に引用したように「神に誓って」とまで言いながら、新潟では、新潟水俣病の斎藤医師と次のような会話を交わしている(『新潟水俣病』斎藤恒著、毎日新聞社)。
 汚染の事実がはっきりして、四肢の感覚障害があれば認定しても良いのではないか、と言う私の質問に対し、椿教授は、「斎藤君、君のいうことはわかる、それは今まで認定されているよりもっとピラミッドの底辺まで認定しろということだろう。しかし、そうなったら昭和電工や国はやって行けるだろうか?」といわれた。
 私は驚いて、「椿先生ともあろう人からそんな言葉を聞くとは思わなかった。それは政治的に医学を歪めることでないですか」と言うと、椿教授は「でもねー」と言って黙ってしまった。

 この会話は、『ジュリスト』という法律雑誌において「神に誓って」とまで主張したことが、本音と異ることを示している。椿氏は、新潟大学医学部教授から東京都老人総合センター院長になるが、その後体調を崩し、水俣病事件の学者の主役は井形氏のみになっていく。」


水俣病の判断条件に関する医学専門家会議のメンバー。
座長 祖父江逸郎
    荒木淑郎 井形昭弘 岡嶋透 里吉栄二郎 椿忠雄 豊倉康夫 三嶋功

国の実態まで書かれていたのに、
他は何もしなかったのか? 同。

「とりわけ、二○○一年(平成一三年)に情報公開法に基づいて開示された平成三年中央公害対策審議会環境保険部会水俣病問題専門委員会議事速記録(以下、水俣病問題専門委員会議事録)には、次のような諸点が生々しく記録されていた。

1 国が主張していたことが誤りであることを国も学者も知っていたこと
2 それをいかに「理論づける」かについて苦慮していたこと
3 学者は常に立場を使い分けていたこと

 なお、この水俣病問題専門委員会議事録では、チッソの状況というものはほとんど議論されていない。平成三年当時のこの委員会では「企業側」の都合はほとんど問題ではなかったことが分かる。」



そして、「重松委員会」というのがつくられたという。同。

「この、通称重松委員会は「水俣病に関する総合的調査手法の開発に関する研究」の研究班のことであり、別名、水俣病問題調査検討会とも呼ばれる。委員会の昭和六○年度のメンバーは、重松逸造氏を委員長として次のようなものだ。
 重松逸造((財)放射線影響研究所)、喜田村正次(神戸学院大学教授)、武内忠男(尚絅大学疾病学教授)、滝澤行雄(秋田大学公衆衛生学教授)、井形昭弘(鹿児島大学第三内科教授)、藤木素士(筑波大学社会医学系教授)、二塚信(熊本大学公衆衛生学助教授)、箕輪真澄(国立公衆衛生院疫学部慢性感染症室長)、大村外志隆(秋田大学公衆衛生学講師)。
 なお、重松委員会は水俣病の調査に関する重要な役割を帯びているはずなのに、実際は、焦点になっている問題についてほとんど調査らしい調査をしていない。」


学術的なことよりも、
官僚から研究費をたくさん
もぎとることの方が
出世につながるようですね。

ですから、彼らの
言いなりになっているようです。
すべての方がそうではなさそうですが……。

癒着をしている学者は、多くの殺人を
犯す共犯者といってもいいのでは
ないでしょうか?

本当なら200~300人で被害者はすんだという学者もいるくらいです。






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