あかねさんシリーズ002 男が女de女が男 ![]() 022 マン・リブはありえる! 「あっ、大下さん、やっぱり変態なんだ!」 「そんなことはないよ」 「あるんじゃないの?」 「まあ、趣味のうちにはね……」 「へぇー、SとMのどっちなの?」 「そんなことないって、冗談だよ。すぐにそういう話で、ひやかすのはよくないことだよ。SとかMも文学にかえてしまう遠藤周作はやはり天才だと思うよ」 「文学だと高尚だとでもいいたいんですか。犯罪は犯罪でしよう」 「でも、人間をみつめることは大切なことで、茶化すことはよくないことだと思うよ。それに好きどうしなら、それは犯罪ではないだろう……。趣味だよ、趣味……。差別しないでくれよ! って、そういう趣味も楽しむ余裕もないんだけど……」 「余裕あったら、するんですね……」 「くどいなあー。誰か話題かえてよ!」 小一郎が話し出す。 「今日なんて、ぼくの大学はお金持ちの親がいる生徒が多くって、ぼくは白い目でみられましたよ。マン・リブなんて、女の方が差別されているって……。よく言えると思いましたよ。人数が多ければ、物事の判断なんてなしで、そうだということになるんですよ。ひどい学校ですよ」 「きみが少数派だから、そうなるんだろうなあー。キング牧師が、黒人運動をする前に、カトリックの神父が差別はいけないと説教をしたんだよ。そうしたとき、黒人たちの多くが神父に反対した。なぜなら、白人たちが黒人を責めてくるからだよ。多くの人たちは神父は非常識だと思ったんだよ。ところが、その聴衆の一人にキング牧師がいたんだよ」 「その話、大下さん好きですね」 「好きだとも、日本には、そんな封建的なことを平気で常識といいながら、民主主義といっている輩がいる。大きな間違いだといいたいんだよ。アメリカは大戦前の日本やドイツは封建的だというが、黒人差別をしていたのはアメリカの方がひどかったんだよ」 「そりゃ、そうでしょう。日本には黒人はほとんどいなかったことでしょうからね」 「まあ、それもそうだけど、アメリカでは僕の子供のころでさえも、白人専用のバスの座席があって、白人専用の公園があったりしたんだよ。まあ、今でも差別はあるらしいけど、黒人たちは立ち上がった。素晴らしいじゃないか!」 「そうですよね。われわれ、男性も立ち上がらないといけない」 小一郎たちは大いに盛り上がっていた。 襖一枚向こうでは、茜たちがいて、百合子の愚痴をきいていた。つまらないので、シーンとなっていた。 それで、向こうの部屋の声が聞こえてきたのである。 「何よ、わたしたちのことバカにしてさあー、なめるなよ」 と、祐子が怒っている。
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