ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第一部ブロック・バスター 044広島のおばあさん 「自由行動か!勇気、どこに原爆ドームはあるのかなあー」 「さあ……」 「あっちさ」 建物の向こうを指さす、勉。 マイクが走りだした。 振り向いて、勇気に話す。 「原爆ドームはむこうだってさ」 「わかった」 勇気も走りだした。 ナンシーは輝代と手をつないで 「私たちも、行こうよ」 と話しながら駆け出した。 「あまり、無理はしないでよ! かんかん照りだから……」 女医の桜田もついてきていた。 この暑さである。熱射病や日射病にならなければ良いがと心配もしていた。 「これが、原爆ドームか」 川のむこうに、原爆ドームはある。 「まったく、若いのだから……」 カメラマンは息を切らせている。 「アメリカのつくった爆弾、それもたった一発で、あんなになりました」 「本当に、残酷ね」 ナンシーは、つぶらな瞳が涙で濡れていた。 「そんなことはない。あれは平和のためだった」 「まだ、言っているのね」 「アメリカの代表じゃなく、一人の人間になりなさいよ」 マイクはむっとしていた。 日傘をさした。白髪のおばあさんがいた。 おばあさんは英語の先生をしていた。 だが、マイクにむかって、日本語で早口で話す。 「アメリカは偉大な国にね……。でも、原爆は偉大じゃないわ……」 悲しい目をしていた、口は真一文字にしっかり閉じられ震えていた。 おばあさんが白いハンカチを持っているのを、マイクは気づいた。 「輝代、あのおばあさん、何を話したの?」 ナンシーは訊(き)いた。 「勇気、あのおばあさん、何を話したの?」 マイクは質問した。勇気が通訳した。 「そうか……」 地面をマイクは見つめた。 「あっちを見てよ」 「先程のおばあさんがしゃがみこんでいるわよ」 「こう暑いのだもの、気分が悪くなったのでしょう」 とナンシー。 「そうだ、桜田先生は?」 勇気は大声をあげた、あたりを見回した。 「ああー、それなら、むこうでジュースを買っているよ。みんなのぶんもあるよ」 後から来た勉は落ち着いた口調だった。
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