ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第二部・国境なき恐怖 111屋形船で夕涼み 「本日は屋形船で夕涼みだ。勇気、乗ったことあるかい」 「ない、はじめてだよ。楽しみにしているよ。テレビカメラもついて来るのでしょう」 「あるみたいだなあー。夜景はきれいだろうなあー。僕は京都で生まれたから、京都を観光しなくって、今ごろ見ておけばよかったなあーと思うことがよくあるよ。でも、他の地方の人よりは、もちろんよく知っているよ」 「自分たちの足下を見ておくのは大切なことだよね」 マイクたちはバスから降りた。 「川沿いはいくぶんか涼しいねえ」 「ヒートアイランドっていっても、場所によって違うさ」 「川は涼しい。川は水があって、水蒸気となり、水蒸気となるとき、温度を下げてくれるからだよ。植物も同じだよね、植物には水分があるから、水蒸気となって、その時温度をさげてくれるよね」 「おい、勇気、勉強したなあー。昔は平屋だてばかりだったから、東京のあっちこっちで夕涼みが楽しめたそうだよ。自然の力で涼めたのさ。その方が豊かな感じがしないか?」 「冷房はただ温度を低くするから、涼しいのとは違うっていう人もいるよね。涼しいっていいよね」 屋形船の船頭さんや、従業員の人が出迎えてくれる。 「昔の東京は夕涼みがどこでも名物みたいなものだったらしいけど、この頃は熱帯夜の連続で、何時になっても外は暑いし、涼しい風が吹くこともないなあー。僕が住んでいるところではそうさ。最近の私の真夏の思い出だなあー」 「川や水路を埋め立てたしまったことも、ヒートアイランドの原因だってさ」 勇気は船が動き出したのも気付かないほど集中して話している。 「このヒートアイランドを解決するためには、河川と水辺空間の再生が肝心なことだよねえー」 と博士が横から口をはさんできた。 「そうだよね。かつて東京は水豊かな都市だった。一九○九年には、東京都区部に流れていた中小河川の総延長は八百六十キロメートルであったというよ」 「勇気もずいぶん、勉強しただろう」 と我が事のことのように喜ぶ勉。 「水が豊かということは、都市として発達する条件でもあるよね」 「それが歴史よね」と季。 「各都市や集落を中心として水路網が張り巡らせていた。これらは明治から大正時代まで都市機能、つまり農業・生活排水・物流などの役立っていたのさ。人々にとっては生活に欠かせない存在であり、ライフラインとしての機能だけではなく、人々の憩いの場、コミュニケーションの場としても存在していたのさ」 「広島での灯籠流しは素敵だったわね」 「ええ、そうね」
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