ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第二部・国境なき恐怖 137京都観光 「『京都の魚屋は魚屋ではダメ』という諺がありましたよね」 「商売も創意工夫が大切という京都の教えです」 「魚屋が魚屋で、どうしてダメなのよ」 「魚屋が魚屋やっているだけでは、京都の人はあきてしまいます」 「飽きるって、そんなの魚屋さんは魚を売っていたらいいじゃないの」 「じゃ、魚屋さんから萬屋(よろずや)さんになっただけじゃないか」 「そういう意味じゃないと思うけど。老舗というのは、今のチェーン店のように、いい加減な人たちとは違う。だから今日、お忙しいところを、わざわざ、十五代目さん来てもらったのさ」 「老舗と今のチェーン店とは違うの、どうちがうの」 李は興味津々である。 「それは、京都の老舗は文化をささえているのさ」 「文化?」 「そうだよ、京都の老舗は単に商売をして、儲けているのではなく、文化を支えている。だからこそ、十五代目さんを呼んだわけです」 「文化でっか……、そりゃ、もうご近所つきあいも大変です」 一人ではなく、多くの人によって、文化は支えられている。 その歴史が京都にはある。京都出身者で、庶民という言葉を好きな人は少なくはない。 大衆のように、根無し草ではなく、自分たちが文化を支えているという自負心があるのが庶民と思っている。 バスガイドさんが来た。 「そろそろバスに乗ろう」 「わあーい、京都見物だ。うれしいなあー」 「楽しみにしてもらえてありがとうさんです」 「おー、こらこら、勇気、遊びだけじゃい。勉強もしてくれよ」 「勉って勉強、勉強だから、勉かよ」 「そんなことはないけどさ……」 バスに乗り込む。 勇気はバスの最前席から立ち上がった。 「これは、十五代目さんがとったAVです」 「祇園祭をとったものです。私ら祇園に住んでいますので、いろいろ大変ですよ」 「祇園祭を支えるのも老舗の人たちの仕事の一つです。大文字焼きも京都の人たちの働きがあって、成立している。ディズニー・ランドのように営利企業がやっているアトラクションではなく、文化だよ」 「ディズニー・ランドさんはディズニー・ランドさんで、それは素敵なことでしょう」 話しがあっちこっちに飛ぶし、気をつかわないといけないし十五代目さんは大変そうである。 「祇園祭のビデオを見てください」 京都といえば多くの人は、まず思い浮かべるのは、清水の舞台。 それから、南禅寺の桜門がうつしだされた。 「ここで。絶景かな、絶景かな!石川五右衛門がここで言ったとか……」 「それはどうかなあー。石川五右衛門という人物はいたらしいけれど、伝わっていることは多くは歌舞伎などの本によってだからね」 勇気も少しは京都のことを調べた。 「でも、当時は南禅寺の山門は焼けて存在していなかったそうだよ。やはり歌舞伎の人が勝手に書いたものらしいわよ」 歴史が得意の季が話した。 「勝手にじゃなくって、創作だよ。石川五右衛門の性格をじつによく表現していると私は思うよ」 と、勉は話した。
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