磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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過去の責任と現在の法 ドイツの場合

2007年05月01日 | 読書日記など
『過去の責任と現在の法 ドイツの場合』
   ベルンハルト・シュリンク(著)/
     岩淵達治、他(訳)/岩波書店2005年

ドイツの法学者シュリンク、小説家でもあるという……。ドイツと日本を比較することによって、今まで見えなかったものが見えてきます……。



過去の責任……。
ドイツといえば、ナチス・ドイツと思われることでしょう。

しかし、最初に出てくるのは共産主義体制の克服。下「」引用。

「法治国家と革命の正義
I 刑法による共産主義体制の過去の克服におけるドイツの特殊な歩み
 共産主義体制の過去の克服のために、ドイツほど刑法に全幅の信頼を置いた国はなかった。当時体制を支えるために行われた殺害、拷問、自由剥奪および法の歪曲を刑法によって追求するという政治的要請は旧共産主義国のすべてに見られるとはいえ、他の旧共産主義国ではそれはしばしば小声で言われるにすぎず、ドイツにおけるように声高に要請されることは決してないのである。」


共産主義であろうが、何であろうがこんなことをしてはならないと思う。

これを著者は“勝者の正当化”と表現。
ある一面、そうであると思う。

過去の法では賞賛、現在は罪。下「」引用。

「DDRで重大な不法越境行為が射殺によって阻止された場合、このことは国境法によって正当化されており、処罰されなかったばかりでなく、賞賛され報償金を与えられたのだった。」


ナチスの犯罪に時効はなくしたという。
これは当然のことと思う。
システム犯罪というのは、システムの側にいれば、安全で。
それに批判などをすれば危険となる……。
一般の犯罪とは立場が異なるというものですね。

日本でも、政治との癒着などには時効はなしとすべきだと思います。
国内でも、殺人にたいしては時効なしとすべきの人たちが増えていると伝えるマスコミもあります。

戦後も恐怖したドイツ人。下「」引用。

「ホロコーストと第三帝国が、歴史上唯一無二のことでありながら不安を与え続けているのは、我が国が文化遺産もあり文明化された状態にあるのに、あのような恐ろしいことができたからである。それは次のような比喩的な問いを挑発せずにはおかない。あの当時、文化的・文明的に安全だと信じ込んでその上を歩いていたのに、足下の湖面の氷は実際はあんなにも薄かったとすれば--我々が今日その上で生活している足下の氷はどのくらい安全なものなのだろうか。氷が割れないように我々を守ってくれるのは何なのか。個人の道義(モラール)か。社会・国家の制度か。氷は時間がたつにつれて厚みを増したのか。それとも時の経過が、氷がいかに薄いかを忘れさせただけなのか。」


そして歴史を歪める者たちの恐ろしさ。ビオグラフィーとは歴史観といいかえていいかと思います……。下「」引用。

「ビオグラフィーにおかしいところがあれば、自意識や他の人々との関係もおかしくなる。若い世代がドイツ人であることに誇りをもちたいと願う場合、普通の自意識や他の人々と普通の関係をもつビオグラフィーを欲求するのはおかしいことではない。-略-誇りは、自分が成し遂げるものに対してのみもつことができるのであり、自分がだれであるのかに対してもつものではない。-略-過去を含む現在が未来に続いていくことが歴史なのである。」


日本との落差について訳者が書かれています。下「」引用。

「これまで見てきたようなシュリンク教授の見解・問題意識が、法律家に対してのみならず、本書などを通じて一般的にも反響を得ていることは、本書における教授自身による消極的評価にもかかわらず、ドイツ法治国家の成熟の現れであろう。それについては、ドイツと日本における落差を感じずにはいられない。」


1990年代から日本は「改革」の連続。
橋本内閣や小泉内閣は「改革」という言葉がお好きでしたね。
しかし、これらの「改革」によって庶民の生活は苦しくなる一方。

それについて、訳者はかかれます。下「」引用。

「これらの諸「改革」は、法・制度が果たし得る機能についての考察や、型のある規範論・法理論の裏付けを十分な形で待たないままに遂行された。また、それ以上に問題なことには、それらが統治構造の機能不全をきっかけに行われた「改革」であるにもかかわらず、一般的な時代・状況認識に基づくだけで、過去の切実な形での分析や、失敗についての具体的な原因追究を伴わないままに、場合によっては、「過去の認識」を排して「前向き」に議論するという形で、制度設計がなされたのである(過去への省察を欠く未来志向、気分一新)」

都合のいい論理を展開だけされて、焼け太りされていく方たちもいましたね。

ところが、ドイツでは過去を分析し、確実に現在をよくしていかれたように思う。

いつものことを変えない限り、日本はよくならない……。

システム犯罪には時効なし。
重罪にも時効なし……。
法をかえていただきたい……。







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