黒沢永紀オフィシャルブログ(旧・廃墟徒然草)

産業遺産と建築、廃墟、時空旅行、都市のほころびや不思議な景観、ノスタルジックな街角など、歴史的“感考”地を読み解く

同潤会上野下アパート #03

2010-07-02 05:01:48 | ・同潤会アパート
現存する唯一の同潤会の集合住宅、
上野下アパートをシリーズでお送りしています。
Mapion

上野アパートが、同潤会の解散後、
自主団体によって管理されてきた話は、
前回の記事でも触れましたが、
建物の内部を見ると、それがよくわかります。



2号館の入口にある受付の窓口。
ほんの少し20年代風のデザインが施された木枠の窓が、
今でも奇麗に残っています。
そして中央に写る「受付」のプレートの文字は、
なんと右書き文字です。
(画像をクリックすると拡大します。)



上野下アパートは戦火を逃れたので、
今でも多くの戦前から住んでおられる方や、
そのご家族によって使われているようですが、
三ノ輪とは正反対に、
内部もとても奇麗な状態に管理されています。



玄関の扉も、ほぼ当時のまま奇麗に使われています。
手前の手摺も、丸みを帯びた四角と曲線で構成された、
ささやかな20年代を感じるデザイン。
80年の間には老朽化したこともあったと思いますが、
これもまた行き届いた管理の賜物でしょうか。



共同トイレも、汚いという印象は全くなく、
手入れが行き届きながら使い込まれた味が、
滲み出ています。
おそらく木部が多い事が、
この味をだしているんじゃないでしょうか。



屋上のペントハウスには、
ちょっと不思議な空間があります。
これは三ノ輪アパートにもありましたが、
ペントハウスの半分くらいのスペースに、
石造りの土台があり、その中央に水タンクが乗っています。
石造りの周囲は円形のシンクのような造りになっていて、
ここで水仕事ができるような造りですが、
歯磨粉などが置かれているのを見ると、
洗面所として使われているようです。

風呂無しに共同トイレの生活は、
住むにはとても不便だと思います。
いまでこそ、貴重な遺産として見れますが、
時代によっては、ただ古めかしい、
不便なビルだとしか思えなかった時期もあったと思います。
でもそれをおして、ここまで改造をせずに使い続けたのは、
ひとえに住民の方々のアパートへの愛じゃないでしょうか。

しっかりと使い込まれたこのアパートは、
多くの物が、無用に更新されていく今の日本に、
沢山のことを教えてくれるんではないかと思います。



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2 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
写真拝見いたしました (冬の小鳥)
2012-07-08 22:44:19
写真拝見させて頂きました。上野下アパートが来年取り壊されることになりました。こちらでは内部(共用)撮影が綺麗に撮られておりますが私にはとても無理です。庭まで入ってさっと身を引くのがせい一杯です。ゲリラは厳しいです。江戸川アパートや九段下ビルは取り壊し前の見学&撮影会がありましたが上野下アパートも三ノ輪アパートのように静かに終わるかと思うとせめて共用部分だけでも撮り収めしたいと思っています。良いアドバイスがあれば教えてください。
▼冬の小鳥さんへ (KLO@廃墟徒然草)
2012-07-09 13:08:18
そうですか、とうとう上野下アパートも取り壊しですか…
最後の同潤会が無くなってしまうのは、とても寂しいですね(T.T)

拙ブログでアップしている記事には、無許可で撮影した物件も多いので、
特にアドバイスなど出来る立場でもありませんが、
無許可が気にかかるのあれば、
例えば上野下アパートのように、現役の物件の場合、
何度も通い、住民の方々に何故撮影したいのかを分かって頂くまで説明すれば、
ご理解頂けるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

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