黒沢永紀オフィシャルブログ(旧・廃墟徒然草)

産業遺産と建築、廃墟、時空旅行、都市のほころびや不思議な景観、ノスタルジックな街角など、歴史的“感考”地を読み解く

消滅する街~新宿ノーザンウエスト~ #47

2007-10-10 15:41:24 | ・新宿ノーザンウエスト
昨日アップした北新宿2丁目。
このエリアが江戸時代にサバービアとして発展した話は以前しましたが、
実は更に遡って縄文時代からすでに集落が形成されていた場所でもあったそうです。
夏の初め、ちょっと訪れた新宿歴史博物館で行われていた企画展、
『柏木・角筈の遺跡展』で、最近の再開発に乗じた発掘調査が報告されていました。
ちなみに柏木・角筈という地名は、幾度も記事内でアップして来たように、
淀橋とともにこの一帯の旧地名です。


柏木・角筈発掘調査航空写真 新宿歴史博物館展示より引用

かつてアップして来た北新宿2丁目のほぼ全景。
Aがリンク記事の一番上の画像の建物。
その右の大通りが青梅街道です。
赤線で囲われた部分が調査が行われた地域なので、
Aの建物の裏に広がっていた広大な更地は、
実は発掘現場だったんだと改めて知りました。

江戸時代、既に街として発展していたこの現場からは沢山の住居跡がみつかり、
また街道に沿って連なる短冊状の地割が見つかった他、
井戸、地下室、池跡、鍛冶場跡などが発掘されているようです。

館内に展示されていた『柏木角筈一目屏風』には、
近世のこの一帯の様子が、克明に記されています。


柏木角筈一目屏風 左半分 新宿歴史博物館蔵より

この屏風絵が制作されたのは大正末から昭和にかけて。
説明では明治初期の様子と書いてあります。
以前の成子富士の記事で触れたように、
画像右上にある成子富士が築造されるのは大正九年なので、
この屏風にある富士塚の山は、
富士塚になる前の天神山ということになります。

画像中央には昨日の記事でも取り上げた咳止地蔵、
右下には新宿ノーザンウエスト~ #42で取り上げた神田上水の助水堀、
などが描かれています。
左下の淀橋水車は助水堀の水を分水して、
現在の北新宿2丁目の北側に広がる水田用水の分岐点だったそうですが、
幕末に幕命で火薬を製造した末に、嘉永七年 (1854) に大爆発。
当時の瓦版が早稲田大学の演劇博物館にのこっています。


淀橋水車小屋爆発を報じる瓦版 早稲田大学嚥下区博物館所蔵より


そして方角的には南側になる柏木角筈一目屏風の右半分。


柏木角筈一目屏風 右半分 新宿歴史博物館蔵より

ほぼ中央のもやがかかったように描かれているあたりが、
西新宿の高層ビルが建ち並ぶあたりでしょうか。
右下に何度か取り上げて来た淀橋庚申堂があります。
また庚申塚の上の方に「梅屋敷銀世界」という文字がみえますが、
これは江戸の名所にも挙げられた梅園で、
名物「梅漬」が人気をよんだようです。
明治四十四年 (1911) 東京瓦斯の所有になり、
現在パークハイアットが建つ場所です。

こうして見てみると、
新宿ノーザンウエストの再開発は昨日今日に始まったものではなく、
いにしえの時代からリセットを繰り返して来た土地だということがわかります。
それだけこのエリアは、人が集まり、
そして新しい人々が手を加えて変化して行く地場をもった土地なのだと思います。

◆ 消滅する街~新宿ノーザンウエスト~ ◆
> NEXT > TOP
 
◎西新宿副都心に残る最後の昭和に興味のある方は、併せてご覧下さい。
冬野は今。 / 新宿ノーザンウエスト
えいはち@十二社の写真館 / 西新宿



最新の画像もっと見る

4 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
見逃すところでした (えいはち)
2007-10-10 17:15:48
そうそう、『柏木・角筈の遺跡展』、14日まででしたよね。
今週末行って来ます。ついでに荒木町探検とか考えてます。
▼えいはちさんへ (廃墟徒然草)
2007-10-10 18:48:08
あまりパッとした展示ではありませんが、
やはり新宿ノーザンウエストを知るには、
行っといて損のない展示だと思います。
オォっ、荒木町も行かれるんですね!
また写真館が楽しみです。
コレは凄い! (冬野灰馬)
2007-10-10 19:33:53
お久しぶりです。仕事が一段落したので、また新宿詣でに励もうかなぁと思っています。
最近の夜景も楽しませてもらってましたよ!

>そうそう、『柏木・角筈の遺跡展』、14日まででしたよね。

これは見逃せないですね。僕も週末に行こうっと。
▼冬野灰馬さんへ (廃墟徒然草)
2007-10-11 04:52:12
おひさしぶりです!
お仕事が一段落されたそうですね。いいなぁ~
最近は新宿も具無沙汰です。
猫広場の建設地も随分進んでいるんでしょうね、きっと。
柏木・角筈展は是非是非。

post a comment